この記事を書いたライター
avatar
k@zu.kジャンル不問の専業ライター

本記事では「つまずく」と「つまづく」について、表記ごとの意味の違いやシーンに応じた使い分け方を例文つきで解説していきます。

使い分けのコツを学びたい方、日本語の知識をより深めたい方はぜひ参考にしてください。

「ず」と「づ」は、さまざまな言葉の表記上で多くの方が迷ってしまうポイントです。

たった1文字の違いを知ることで、より高度な文章テクニックも身につけられるでしょう。

「つまずく」と「つまづく」どっちが正しいの?

まずは以下の文章を例に見ていきます。

・道を歩いていたら、小さな石につまずいた。

・道を歩いていたら、小さな石につまづいた。

流し読みだと気付かない「つまずく」と「つまづく」の違いですが、はたして正しい表記はどちらなのでしょうか?

結論:「つまずく」「つまづく」はどちらも正しい!

結論として「つまずく」と「つまづく」は、どちらの表記も正しく、言葉の意味も同じです。

どちらも正解なら、好きなように使っても問題ないように感じます…。

ただし、状況に応じて「つまずく」と「つまづく」を使い分けるのが一般的とされているため、両者がどのような理由で使い分けられるのかを知っておかなければなりません。

また、2つの大きな違いとして「つまずく」は【現代仮名遣い】であること。
一方の「つまづく」は【歴史的仮名遣い】であることが挙げられます。

「つまずく」と「つまづく」の具体的な違いについて、もう少し詳しくみていきましょう。

「つまずく」は現代仮名遣い

現代仮名遣いの「つまずく」は、さまざまなシーンで一般的に広く使われている表現です。

文化庁の現代仮名遣いでも「つまずく」と記載されており、現代では基本的に「つまずく」が正しい表記といわれています。

次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。

例 せかいじゅう(世界中)

  いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆) さかずき(杯) 

  ときわず ほおずき みみずく

  うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく

  あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく

  うでずく くろずくめ ひとりずつ ゆうずう(融通)

引用:国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 現代仮名遣い | 本文 第2(表記の慣習による特例) 

私たちが目にする記事や雑誌などで、最も多く見かけるのも「つまずく」です。

「つまずく」は、文章に書く場合でも、こちらの意図を正確に相手へと伝えることができます。

言われてみれば…、違和感なく読めます!

「つまづく」は歴史的仮名遣い

歴史的仮名遣いの「つまづく」は、古文や古典などの歴史的な書き方をする文章で使われます。

「つまずく」とは表記の違いだけで、意味もイントネーションも一緒です。

さらに「ず」を「づ」と表記することは、現代仮名遣いの表記の慣習による特例(文化庁)でも認められています。

意味も一緒なら、読者も違いが分からないのでは…?

しかし、現代ではあまり使用されていない表記のため、違和感を覚える読者も多いようです。

従って、ビジネスや日常の文章などでは一般的に使われている「つまずく」と表記するのが望ましいといえるでしょう。

漢字だとどう表記する?

「つまづく」と「つまずく」を漢字で表記すると、どちらも「躓く」と書きます。

社内報などの厳格な文章では、漢字で「躓く」と表記することでより引き締まった印象を相手に与えることができるでしょう。

ただし、漢字の「躓」は常用漢字ではないため、公用文で使用することはできません。

…躓(つまず・く、チ、シツ)
堅めのシーンでも、無理に「躓く」と漢字表記しなくても大丈夫です!

公的な文書やWeb記事など、多くの方が目にする文章では現代仮名遣いの「つまずく」を使うようにしましょう。

常用漢字とは?

…日本で日常的に使用することが推奨されている漢字。
一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安。

常用漢字は2024年時点で2,136種類、学校で習う『教育漢字』や戸籍に記載できる『人名用漢字』も含まれます。

参考:文化庁「常用漢字表

「つまずく」と「つまづく」の意味は2つある!

「つまづく」と「つまずく」は、どちらも正しい表記で言葉の意味も同じであることが分かりました。

ここからは「つまずく」と「つまづく」が持つ、2つの意味を解説します。

正しい日本語の使い方ができるように、それぞれ詳しくみていきましょう。

意味①

歩いていて、誤って足先を物に突き当ててよろける。
引用:weblio.jp 「躓く(つまずく

1つめは、一般的な「つまずく」を表現した意味です。

私たちが普段使っている「つまずく」は、ほとんどがこちらの意味を指すのではないでしょうか。

例:段差に気付かず、つまずいてこけそうになった。

上記の例文のように、何かに足先をぶつけてバランスを崩すようなシーンを思い起こさせます。

私はよく、何もないところでつまずきます…。

意味②

物事の中途で、思わぬ障害につき当たって失敗する。

2つめは「つまずく」の比喩表現です。

例:事業計画を立てたが、開始してすぐにつまずいた。

何らかのトラブルやミスによって思い通りに事が進行しない状態を指しており、特にビジネスシーンでよく使われています。

新プロジェクトの経験談やインタビューなど、ビジネス記事で多く見かける印象です!

挫折したとき、困難な状況にあるときなどの表現に当てはめて使いましょう。

【豆知識】「つまずく・つまづく」の語源は?

「つまずく」「つまづく」の語源は【爪突く】です。

【爪突く】とは、足の爪(つま先)を障害物にぶつけてよろける様子を表します。

語源が『爪・突く』であることから「つまづく」と表記しそうですが、現代仮名遣いでは「つまずく」を用いるのが一般的です。

…爪(つめ・つま)

オーソドックスな読みは『つめ』ですが、爪楊枝(つまようじ)・爪先(つまさき)・爪弾き(つまはじき)などは『つま』と読みますね!

「つまずく」と「つまづく」の使い分け|例文つき

現代仮名遣いの「つまずく」と歴史的仮名遣いの「つまづく」ですが、実際にはどのような使い方をされているのでしょうか?

ここでは「つまずく」と「つまづく」のシチュエーションごとの使い分けを、例文付きでご紹介します。

文章に書いて指し示す際は、ぜひ参考にしてください。

一般的な文章の場合

日常会話やブログなどの一般的な文章では「つまずく」を使用します。

Web記事でも「つまづく」と表記したらダメなんでしょうか…?

「つまづく」も決して間違いではありませんが、誤表記と指摘される恐れもあるため、現代的な文章では「つまずく」を使ったほうが無難といえるでしょう。

例文①:スマホを見ながら歩いていたら、段差に気付かずつまずいた。

例文②:登山中、木の根元に足を引っかけてつまずき、転倒した。

例文③:日頃の運動不足が原因で、すぐにつまずいてしまう。

ビジネス文章の場合

漢字表記の「躓く」を使ってしまいそうですが、ビジネス文章でも基本的には「つまずく」です。

漢字表記のほうがカッコいいような気がします…。

「躓く」は相手が読めない可能性もあるため、なるべく避けておきましょう。

以下は、ビジネスシーンで「つまずく」を使用した例文です。

例文①:物価高騰や他社の参入などの障壁に何度もつまずきましたが、無事に年間売上目標を達成しました。

例文②:何度もつまずいてきたけど、ようやく軌道に乗った。

例文③:納品までにつまずいた点をメンバーと共有し、次回のプロジェクト開始までに修正・改善すること。

古風な文章の場合

俳句や昔の小説のような古風な文章を書く場合、歴史的仮名遣いの「つまづく」を使うことで、より味わい深い仕上がりとなります

クラシックな小説やエッセイを書きたいときにピッタリ!

以下のような、ひと昔前を想定したシーンでは「つまづく」の表記が最適です。

例文①:小さき石にてつまづきころげる私を見て、みな笑ふ。

例文②:戦後の厳しき時代につまづくことなどもなく、前を向き、まつすぐと歩いた。

例文③:凩(こがらし)や ひたとつまづく もどり馬

「つまずく」と「つまづく」を使ううえでの3つの注意点

「つまずく」と「つまづく」を使ううえで注意すべき3つのポイントを解説します。

文章を書くうえで、とても重要なものばかりです。

しっかりと理解し、身につけておきましょう。

場面に応じた使い分けをする

公的文書やビジネスシーンなど、現代の標準的な表記を求められる場面では「つまずく」を使うように心掛けてください。

先に述べたとおり、文化庁の現代仮名遣いでも「つまずく」と表記されており、一般的な文章の多くは「つまずく」が使われています。

「つまづく」と表記しても言葉の意味は変わりませんが、誤解なく万人に分かりやすい文章とするためにも「つまずく」と表記しましょう。

2つの言葉の意味、どちらも「つまずく」を使えば問題ありません!

一方で、古典的な文章や古風な雰囲気を出したい場面では「つまづく」を使います。

歴史的仮名遣いの「づ」は、古き時代を感じさせるのにもピッタリの表記です。

積極的に取り入れましょう。

あえて「つまづく」を使い、おしゃれに仕上げましょう!

このように、場面に応じて「つまずく」と「つまづく」を選択することがとても重要です。

文章を書く媒体や時代背景を意識して、上手に使い分けるようにしましょう。

表記揺れに気をつける

文中に「つまずく」と「つまづく」の両方を使うことのないよう、表記揺れには十分注意してください。

表記揺れとは?

…同じ意味を表す言葉なのに、複数の表記が混在している状態を指します。

表記ゆれ、表記揺らぎとも称します。

ひとつの文章の中に「つまずく」と「つまづく」が混在すると、読者に混乱を招く恐れもあり、読んでいてもストレスのもとです。

基本的には現代仮名遣いの「つまずく」を使うことが多いと思いますが、スマホやPCの予測変換機能によって、意図せず「つまづく」と表記してしまうことも考えられます。

ほかにも『英数字の半角と全角』や『一人称(僕と私)』などの表記揺れには特に注意です!

文章を書き終えた後は入念な見直しを必ず行って、表記揺れを防ぎましょう。

なるべく漢字を開いて使う

「躓く」と表記せず、なるべく漢字を開いて使うようにします。

『漢字を開く』とは?

…文章の中の漢字をひらがなやカタカナに置き換えて表記するテクニック。

漢字を開くことで読みやすい文章になるだけでなく、読者の感情や印象を操ったり文章全体のバランスをととのえたりできます。

例・その→そのとき  

 ・是非お願いします。→ぜひお願いいたします。

反対に、ひらがなを漢字に変換して表記することを『漢字を閉じる』といいます。

例・あさって→明後日

 ・いなずまはしる。→稲妻が走る。

「躓く」は常用漢字ではないため、学校でも習いません。

漢字を読めなかった読者はストレスを感じ、さらには文章や記事自体に関心が無くなって離脱してしまうでしょう。

Web用語の離脱…

サイトを訪問していたユーザーが、そのサイトから離れてしまうことです。

私も難しい漢字が多すぎると、読むのが面倒になってよく離脱してしまいます…。

漢字表記を使う場合は「躓く(つまずく)」とふりがなを添えるなど、読者がスムーズに読めるための気配りを忘れないようにしてください。

まとめ:「つまずく」と「つまづく」は場面に応じた使い分けをしよう!

「つまずく」と「つまづく」は、どちらも正しい表記で意味も同じです。

ただし、場面に応じた使い分けがとても重要なワードであり、選択を間違えてしまうと読者に不快感を与えてしまいます。

もし表記に迷ってしまったら、現代仮名遣いの「つまずく」を使っておけば間違いはありません。

古風な文章を書きたい場合は「つまづく」を、厳格なイメージを持たせたいときは漢字表記の「躓く(つまずく)」を使うと覚えておくとよいでしょう。

日本語とは、たった1文字で文章全体の印象を大きく変えられるほど奥深く、難解な言語です。

現代仮名遣いの「つまずく」と、歴史的仮名遣いの「つまづく」を上手に使い分け、正しい日本語で文章を書けるようにしておきましょう。

「つまずく つまづく」に関するよくある質問

「つまずく」と「つまづく」や仮名遣いについて、よく見受けられる質問をまとめてみました。

同じような悩みや疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

「つまずく」と「けつまずく」の違いは?

両者に大きな違いはありません。

「けつまずく」を漢字で表記すると「蹴躓く」となり、意味も『足先を物にぶつけてよろめく様子』です。

例文①:よそ見して歩いていたら、段差に(け)つまずいた。

例文②:彼は小石に(け)つまづき、舌打ちをした。

ビジネスや公的文書で使われる比喩表現に「けつまずく」を用いることはあまりなく、あくまでも物理的な「つまずく」の同義語であるといえるでしょう。

「つまづく」が主流だったのはいつまで?

昭和21年(1946年)に『現代かなづかい』が公布されるより以前は、歴史的仮名遣いの「つまづく」が公的な表記とされていたようです。

同じタイミングで、以下のようなものも改正されました。

歴史的仮名遣い(~昭和21年)現代かなづかい

その後、改訂版の『現代仮名遣い』が昭和61年(1986年)に告示され、現在の表記が主流となっています。

古風な文章を書く際は、現代仮名遣いの公布前後で使い分けるのもおすすめです。

「つまずく」「つまづく」と似たような意味の言葉を教えてください

「つまずく」「つまづく」の類義語には、以下のようなものがあります。

・こける ・仕損じる ・間違える ・行き詰まる ・誤る  

・失敗   ・失策   ・頓挫

文章の流れや雰囲気に合わせて、最適な言葉を当てはめるようにしましょう。

どんな言葉も「づ」を「ず」に置き換えて大丈夫?

Web記事や日常的なブログなど、現代の文章を書く場合は「づ」を「ず」に置き換える、現代仮名遣いの「つまずく」が一般的と解説してきました。

一方では「ず」に置き換えるべきではない言葉も多数存在します。

以下は、その一例です。

手作り(てづくり)機械を使わず、自分の手で作り上げること。
続き(つづき)つながり、つぎにあるもの。
綴る(つづる)つなぎあわせる。とじあわせる。
気付く(きづく)自分で心に感じ取る。
基づく・基く(もとづく)そこにおおもとがある。基礎を置く。

これらの「づ」を「ず」に置き換えてしまうと、言葉の意味が分からなくなってしまったり、他の意味になったりしてしまいます。

日常会話では気になりませんが、文章にする際は日本語として間違っていないか確認しましょう。

Web記事に「段差につまづく」と表記されていました

世の中には現代仮名遣いの「つまずく」を、あえて「つまづく」と表記している記事も存在します。

特に、足先を物にぶつけてよろめく様子は「つまづく」で表記し、思わぬ障害に突き当たった比喩表現は「つまずく」と、意味によって使い分けている記事が多いようです。

数多く文章を作成していると、2つの意味や表記を記載しなければならないこともあるでしょう。

そのような場合は、物理的なものは「つまづく」で表記し、比喩表現は「つまずく」で使い分けるのもテクニックのひとつです。

1つの言葉の意味に対して「つまずく」と「つまづく」を混在させなければ、大きな問題はありません。

似たような状況に直面した際は、言葉の意味に合わせて両者を使い分けましょう。

この記事を書いたライター
読書にゲーム、動画視聴から釣り、スポーツ(主に野球)や旅行記事まで!大きな引き出しを武器に多方面・各分野で執筆中! SEO・取材記事・インタビュー記事と幅広くこなしています。お気軽にご相談ください!
avatar
k@zu.kジャンル不問の専業ライター