コピーライターやWebライターの中には、文章を書くことに抵抗がない方、つまり日本語が得意な方が多くいらっしゃると思います。
そんな方でも“漢字の送り仮名”について一瞬でも悩んだ経験はありませんか?
「送り仮名どっちだったっけ?漢字は自信あるのに… 」
「クライアントに送り仮名のミスを指摘されてしまった…」
こんな経験があるかもしれません。
現在はパソコンで文章を作成することが当たり前となり、深く考えず送り仮名を付けてしまうことも増えました。
ところが、いざ手書きになると「これで正しかったっけ?」と迷ってしまうのが、“漢字の送り仮名”ではないでしょうか。
もしかしたら間違った送り仮名を使い、知らず知らずのうちに読み手に不快感を与えているかもしれません。
今回は、現役ライターの筆者が
- 送り仮名の正しい付け方
- 迷った時のチェックポイント
- 送り仮名の使い分け
上記の3つをポイントに、正しい送り仮名の付け方を楽しく解説していきます!
この記事が少しでも、文章を書くすべての人の支えになれば嬉しいです。

送り仮名って?

送り仮名とは、漢字に付ける仮名(ひらがな)のことです。
送り仮名は、誤読をふせぎ読みやすい文章にするという目的で漢字に付けられます。
- 「書く」→「く」
- 「立ち止まる」→「ち」と「まる」
- 「例え」→「え」
上記の場合、赤線で表記されたひらがなの部分が送り仮名となります。
【要注意!】間違えやすい送り仮名|一覧付き

間違った送り仮名は、それだけで読みづらい文章になってしまいます。
読みづらい文章は、読み手が離脱してしまう危険があるため効果的とは言えません。
このセクションでは、ライターの仕事はもちろん、日常でもつい見落としがちな間違えやすい送り仮名を紹介していきます!
⭕ 幼い
❌ 幼ない
⭕ 断る
❌ 断わる
⭕ 脅かす
❌ 脅す
⭕ 短い
❌ 短かい
いかがですか?
あたまに浮かんだ送り仮名は正しかったでしょうか。
ふだん何気なく使っている言葉なのに、改めて問われると自信がなくなってくるものです。
ただ日本語の漢字は種類が多く、すべての送り仮名を完璧に把握することはなかなか難しいはず。
下記の一覧を参考にしながら、少しづつ覚えていきましょう。
【間違えやすい送り仮名一覧】
| 仮名 | ⭕ | ❌ |
| あらわす | 表す | 表わす |
| うけたまわる | 承る | 承わる |
| たしかめる | 確かめる | 確める |
| おぎなう | 補う | 補なう |
| こころみる | 試みる | 試る |
| むくいる | 報いる | 報る |
| むらがる | 群がる | 群らがる |
| むずかしい | 難しい | 難かしい |
| いちじるしい | 著しい | 著い |
| はなはだしい | 甚だしい | 甚しい |
| あきらか | 明らか | 明きらか |
| すこやか | 健やか | 健か |
| こたえ | 答え | 答 |
何問わかる?送り仮名クイズ

では、ここでクイズです。
下記の日本語を漢字で表記する際、正しい送り仮名はどちらでしょうか?
【第一問】行う?行なう?

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正解:行う
漢字のなかで最も間違いが多い送り仮名です。
パソコンで「おこなう」と打つと「行う」と「行なう」のどちらも変換候補にあがります。
そのため、どちらも正しいと勘違いしてしまいますが、文化庁が定める『送り仮名の付け方』のガイドラインによれば「行う」が原則と記されているので注意が必要です。
ただし「行なう」も許容1として認められています。
1許容…原則の形ではないが慣用(使い慣れている)であると認められているもの。
実際に、この『送り仮名の付け方』というガイドラインが改定された1973年以前は「行なう」を原則とし、学校などで教育されてきました。
「おこなう」の変換候補が「行う」と「行なう」の2通り出てくるのは、そういった時代背景をかんがみた結果であると思われます。
とはいえ、現在は「行う」が原則と定められているので、そちらで統一しましょう。
【第二問】失う?失なう?

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正解:失う
「行う」と同じく現在の原則では「失う」ですが、昔は「失なう」と教えられていた時代があるため「失なう」も許容とされています。
こちらもパソコンで打つと候補変換が2通り出てくるため戸惑いますが、現在では「失う」を選択しましょう。
【第三問】改める?改る?

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正解:改める
こちらでもよく間違いを見かけます。
「あらためる」と文字数が多いため、どこで区切ればいいか分からなくなるのでしょう。
「あらためる」には「あらたまる」という表現もあるので「あらた-める」となります。
「改る」や「改ためる」といった間違いに注意しましょう。
【第四問】晴やか?晴れやか?

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正解:晴れやか
天気予報では「晴れ」「晴」とどちらもよく見かけます。
やはりこれも、昔の流れから「晴」は許容として認められています。
ですが、現在では「晴れ」が原則ですので「は-れやか」→「晴れやか」が正解です。
【第四問】祭?祭り?

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正解:祭り
「まつり」も同様です。
昔習っていた「祭」も慣用として使われていたため許容範囲内です。
しかし、文化庁によって改定された現在の新仮名遣いは、名詞にも送り仮名を付ける方向性が見受けられます。
ほかにも、こちらの例が挙げられます。
- 「とい」…「問」→「問い」
- 「かおり」…「香」→「香り」
よって「祭」も間違いではないのですが、現在は「祭り」と定められています。
さて、何問正解できましたか?
今まで当たり前だと思っていた送り仮名は、現在の常識としては使われない『昔の送り仮名』だったのかもしれません。
間違いではないにしろ、コピーライターやWebライターとしては時代に合わせた正しい送り仮名を使用することが大切です。
送り仮名に迷ったときの3つのチェックポイント

ここまで多くの送り仮名をご紹介してきましたが、使い慣れたつもりでも「あれ?どっちだったっけ?」「これで合ってるのかな?」と送り仮名に迷う場面があるでしょう。
このセクションでは、送り仮名に迷ったときにチェックする3つのポイントについて解説していきます。
【チェック1】命令形に活用させる

言葉を命令形に活用させたときに変化する語尾の部分が送り仮名です。
言葉を活用させ、かたちが変化する語尾のことを活用語尾といいます。
送り仮名に迷ったら、言葉を命令形に活用させ活用語尾を探ってみましょう。
例えば「あつかう」という動詞で言えば、命令形に活用させるとこのように変化します。
「あつかう」
↓ 命令形に活用
「あつかえ」
このように「う」が「え」に変化する様子が見て取れます。
ということは「あつかう」の活用語尾は「う」であり、よって送り仮名は「扱-う」であることが分かります。
送り仮名に迷ったときは、命令形に活用させ語尾の変化を確認してみましょう。
【チェック2】自動詞を他動詞に変化させる

自動詞から他動詞に変化させ活用語尾を見てみましょう。
自動詞と他動詞の違いは、
【自動詞】…動作の対象を必要としない動詞
【他動詞】…動作の対象を必要とする動詞
となります。
動作を起こすのが自身かそれ以外かでかたちは変わってきます。
簡単に見分ける方法は、言葉の前に「~を」が付くかどうかです。
【自動詞】
・わたしは助かる。ー「わたし」自身の動作
↓ 他動詞に活用
【他動詞】
・わたしが息子を助ける。ー「~を」がつく
このように自動詞から他動詞に活用させると「かる」と「ける」が活用語尾であることが分かります。
結果「助かる」が正しい送り仮名となります。
ただし、気を付けなければいけないのが、すべての動詞に自動詞と他動詞があるわけではないということです。
- 【自動詞】しかないもの-「ある」「走る」など
- 【他動詞】しかないもの-「話す」「ほめる」など
また、自動詞・他動詞がまったく同じかたちのものも存在するので注意しましょう。
【自動詞・他動詞が同じかたちのもの】
| 仮名 | 【自動詞】 | 【他動詞】 |
| 決定する | 試合が決定する | 試合を決定する |
| 開く | ドアが開く | ドアを開く |
| 吹く | 風が吹く | 笛を吹く |
【チェック3】文化庁のガイドラインを参照する

送り仮名には、文化庁が告示している『送り仮名の付け方』というガイドラインが存在しています。
こちらのガイドラインは、社会生活のなかで日本語の文章を書き表すときの明確な「送り仮名の付け方のよりどころ」として改定を重ねながら現在も広く使われています。
送り仮名の原則から慣用として認められている例外や許容など、分かりやすく提示されています。
これまでのチェックに当てはまらない言葉は、文化庁のガイドラインを調べてみてください。

まとめ:正しい送り仮名を使用して読みやすい文章を徹底しよう!

ライティングにとりかかる際、どうしても記事の内容や構成に集中してしまいがちです。
送り仮名で思わぬ凡ミスをしてしまうと、せっかくいい文章を書いても読んでもらえない危険があります。
完成した文章はかならずセルフチェックしてください!
ただし、正しい送り仮名の付け方には原則があるものの、例外もとても多いです。
「この漢字の送り仮名どっちだったっけ…」と悩んだときはぜひこの記事をご参考ください。
すべての送り仮名を完璧に覚えることは難しいので、迷ったらその都度チェックする癖を身に付け、読みやすい文章づくりを徹底しましょう!
「送り仮名」に関するよくある質問

このセクションでは「送り仮名」に関して一度は気になったことがあるであろう悩みにお答えしていきます。
コピーライターやWebライターの執筆活動の参考としてご活用ください。
よくある質問①ビジネス文書でよく間違える送り仮名は?
ビジネス文書でよく間違いを見かける送り仮名といえば、二つ以上の単語で形成される「複合の語」に多く見られます。
例えば、
うちあわせ
⭕️ 打ち合わせ
❌️ 打ち合せ・打合せ
みつもり
⭕️ 見積もり
❌️ 見積り・見積
うりあげ
⭕️ 売り上げ
❌️ 売上げ・売上
などが挙げられます。
どれも慣用的に使われているため誤りではありませんが、原則として正しいとされる表記を選ぶようにしましょう。
よくある質問②パソコンで漢字を打つと変換候補が2通り。どっちを選べばいいの?
一番最初に出てくる変換候補を選んでください。
例えば「うしなう」と打つとこのように候補がでます。

この場合、一番最初に出てくる「失う」は原則として使われているもので、
二番目に出てくる「失なう」は許容として認められているものということになります。
あくまで原則がメイン、許容はサブのような捉え方がいいでしょう。
よくある質問③正しい送り仮名を使わなければ記事は採用されないですか?
正しい送り仮名を完璧に使わないと記事が採用されないとは言い切れません。
それは、ライティングの文章の流れやトンマナ2を考えて言葉を並べると、
原則よりも許容の送り仮名のほうが伝わりやすい場合があるかもしれないからです。
2トンマナ…トーン(tone)&マナー(manner)の略称。デザインやスタイル、文章などに一貫性を持たせること。
ただし、原則を理解したうえで許容を使うことをおすすめします。
送り仮名の表記が統一されているかのチェックも忘れないように。
もし、クライアントから指摘があった際は、柔軟に対応できるように心がけましょう。

