「られます」は「られる」の敬語表現｜使い分け方から言い換え方法を解説

日本語の難しさの1つとも言える「られます」や「られる」。

丁寧に伝えようとしたつもりでもかえって読みづらい文章や誤解を招くこともあり、自分では気づかずに相手に分かりにくい言葉遣いをしている時があります。

ビジネスシーンでもそうですが、特に仕事上での表現で間違えたくはないですよね。

そこで本記事では「られます」「られる」を正しく扱えるよう、以下の事柄について解説していきます。

間違えると恥ずかしい思いをする表現の1つです。
ここで改めて理解して、正しい日本語を習得しましょう！

「られます」は「られる」の敬語表現

「られる」の敬語表現は「られます」です。
助動詞の「られる」を「～ます」の敬語表現にするかたちとなります。

実際に例文で見ていきましょう。

声を掛けられる　→　声を掛けられます 料理が作られる　→　料理が作られます 講師が来られた　→　講師が来られました

3つめの例文は「～られた・～られました」となり過去形ですが、「られる→られます」と同様に敬語に変換できます。

「られる」の意味や文法を徹底解説｜4つのパターン

「られる」は文法上、以下の活用表のとおり接続する言葉で変形（活用）します。
中高の現代国語の授業で見た記憶のある方、いらっしゃるのではないでしょうか？笑

基本形	未然形	連用形	終止形	連体形	仮定形	命令形
られる	られ	られ	られる	られる	られれ	られろ （られよ）

ちなみに、ここでいう「られる」は、上一段活用・下一段活用・カ行変格活用の“動詞の未然形”、サ行変格活用の“動詞の未然形”「せ」、使役^※の助動詞の未然形に付属する助動詞です。

^※使役（しえき）｜他に何らかの動作を行わせることを表す言い方

上一段活用（イ段で活用）の動詞	見る・落ちる・閉じる など
下一段活用（エ段で活用）の動詞	出る・寝る・食べる など
カ行変格活用の動詞	「来る」のみで特殊な活用
サ行変格活用の動詞	「する」のみで特殊な活用
使役の助動詞	せる・させる

簡単に言うと「られる」は【動詞の未然形】に付属させて使用する助動詞です。

動詞の未然形とは“そうなっていない状態（未来・推量・否定）”という意味であり、動詞に「ない・う・よう」がつく形となります。

例えば「起き（ない）」「書こ（う）」「集め（よう）」などが動詞の未然形です。

【動詞の未然形→助動詞「られる」に変換】の例

着る：着（ない）　→着られる 蹴る：蹴ら（ない）→蹴られる 来る：来（ない）　→来られる

日頃は文法なんて意識せずに「られる」を使っていると思いますが、かみ砕くと文法上の細かなルールがあるのですね。

また「られる」には受け身・自発・可能・尊敬の4つの表現パターンがあります。

それぞれどのような使い方をするのか、具体例と共に見ていきましょう。

受け身表現パターン

受け身表現は、他からの動作を受ける表現です。

プールで遊んでいたら、妹に水を掛けられた。 嫌だったのに、新しい服をむりやり着せられた。

受け身なため、他の影響で起きた動作の文章で使います。

ただし、動詞には受け身表現にできるもの・できないものがあります。

【受け身表現が不可能な動詞】の例

① 能力を表す動詞：できる・動詞の可能形 ② 自発の動詞：見える・聞こえる ③ 受け身の意味を持つ動詞：教わる・見つかる ④ 無意志動詞の中で、他に影響を与えない状態の動詞：ある・要る

受け身表現にできない動詞に無理矢理「られる」をつけようとすると、おかしな日本語になるため自然と気づけるかと思います。

例えば『先生から古文を教わられる』とは言いませんよね。

言っていて違和感があれば、その動詞では「られる」が使えないということです。

自発表現パターン

自発表現とは、自然に動作が起こるときの表現です。

あの子の身が案じられる。 食べてみると甘いと感じられた。

受け身表現に対して、自発表現は内からの動作です。

自発表現は【自発の動詞】に「られる」がつきます。
例えば「見える・聞こえる・案じる・感じる」などが自発の動詞です。

自発の動詞の内【動詞の未然形（＝動詞に“ない・う・よう”がつく形）】となるものに「られる」をつけます。

なお、他の3つの表現に比べて自発表現に活用できる動詞が少ないです。

可能表現パターン

可能表現では、できる・可能であることを表現します。

誰の助けもなく浴衣が着られる。 給食をぜんぶ食べられた。

なお、動詞には可能動詞（行ける・読める等）というものがありますが、可能動詞は【動詞＋られる】の形にならないため可能表現にはなりません。

動詞の内【動詞＋られる（＝可能表現）】になるものの見分け方は、勧誘の表現で【動詞＋よう】の形となる動詞に限ります。

【「られる」の可能表現＝勧誘の表現（動詞＋よう）】の例

来る：来（よう）→来られる 始める：始め（よう）→始められる 食べる：食べ（よう）→食べられる

尊敬表現パターン

尊敬表現は、軽い尊敬の意を表すときに用います。

取引先の社長が来られる。 患者さんが診察室に入られた。

なお、尊敬表現は可能表現と混合しやすいため注意が必要です。

尊敬と可能の違いを、同じ語句を使用した例文で見てみましょう。

①	午後に先生が来られる。 意味：いらっしゃる【尊敬表現】
②	明日は予定通り来られるそうだよ。 意味：来ることができる【可能表現】

同じ語句でも、使い方次第で尊敬表現か可能表現かが異なってきます。

ですが…例文②『明日は予定通り来られるそうだよ。』は、尊敬表現（特定の人物が来るの意）にも捉えることができませんか？

可能表現と尊敬表現は文脈からでも混合しがちな場合がありますが、以下の方法で見分けることができます。

【尊敬or可能の見分け方】

尊敬表現：主語が目上の人 可能表現：主語が目上の人以外＋～することが可能

先ほどの例文も上記の見分け方に則っています。

①	午後に先生が来られる。 →主語が目上の人（先生）【尊敬表現】
②	明日は予定通り来られるそうだよ。 →主語が目上の人以外＋来ることができる と言っている【可能表現】

会話であれば、場合によっては聞いた時のニュアンスで意味を咄嗟に判断できるかと思います。

書き言葉なら、目上の人が主なのかで判断しましょう。

「られます」を用いた例文

ここで「られる」の敬語表現にあたる「られます」の例文をご紹介します。

「られます」は「られる」の4つの表現【受け身】【自発】【可能】【尊敬】を敬語にしたバージョンです。

さっそく例文で見ていきましょう。

例文①山頂から夕日が見られます

山頂から夕日が見られます【可能表現】

文章の意味：山頂から夕陽を見ることができる 見られます：「見られる」の敬語表現で『～することができる』を表す

「見る」は動詞の未然形「見（ない）」になるため、可能表現「見られる」に活用することができます。

例文②校長先生が廊下を歩いてこられます

校長先生が廊下を歩いてこられます【尊敬表現】

文章の意味：校長先生が廊下を歩いてくる こられます：「こられる」の敬語表現

主語に目上の人（校長先生）がいることと、動詞の未然形「来（ない）」が合わさっているため尊敬表現だと分かりますね。

例文③先生によってプリントが配られます

先生によってプリントが配られます【受け身表現】

文章の意味：先生がプリントを配布する 配られます：「配られる」の敬語表現

「配られる」は、動詞の未然形「配ら（ない）」にでき、また【受け身表現にできない動詞】ではないため、受け身表現に活用します。

例文④彼は嘘をついていないと感じられます

彼は嘘をついていないと感じられます【自発表現】

文章の意味：彼は嘘をついていないと感じている 感じられます：「感じられる」の敬語表現

「感じる」は【自発の動詞（内から自然に起こる動作を表す）】であり、動詞の未然形「感じ（ない）」に活用するため自発表現となります。

例文⑤明日はサーカスを観られます

明日はサーカスを観られます【可能表現】

文章の意味：明日サーカスを観ることができる 観られます：「観られる」の敬語表現で『～することができる』を表す

「観る」は動詞の未然形「観（ない）」になるため、可能表現「観られる」に活用することができます。

例文⑥先生に良い点数をつけられました

先生に良い点数をつけられました【受け身表現】

文章の意味：良い点数をつけてもらえた つけられます：「つけられる」の敬語表現

「つけられる」は、動詞の未然形「つけ（ない）」にでき、また【受け身表現にできない動詞】ではないため、受け身表現に活用します。

「られます」を他の表現に言い換えてみよう！

「られます」は使いすぎると聞きにくさや読みづらさを感じる場合があります。

そんな時は「られます」は使用せずに、他の表現に変えます。

日本語は世界でも難易度が高い言語と言われていますが、様々な表現方法があるため相手が分かりやすい文句に言い換えることが可能です。

受け身表現は能動態に変換する

能動態^※の文章は一般的であり、日本ではよく見る形式です。

^※能動態｜主語が明確で、述語には“主語に対しての動作や作用した動詞を置く”形式のこと

【受け身】この収納グッズは人気商品として売られます。 　↓ 【能動態】この収納グッズ（主語）は人気商品として売り（動詞）ます。

比べると、能動態の方がスッキリした印象になりましたね。

自発表現は「です、ます」で言い切る

「です・ます調」と「られます」はいずれも敬語表現です。

【自発】新車に傷がついて残念に感じられます。 　↓ 【です、ます】新車に傷がついて残念です。

例文はそれぞれ残念な気持ちが表れてはいますが、ニュアンスとしては『残念に感じられます』の方が柔らかい印象で『残念です』の方が強い意志を感じますね。

です・ます調はやや強みのある言葉づかいですが、言い切りの形であるためよりハッキリと相手に伝えることができます。場合により使い分けると良いでしょう。

可能表現は「することができます」と表現する

可能表現での「られます」は、より丁寧に伝えようとすると使いたくなりますが、時として読みづらさが出てしまいます。

言い方に迷う時は、同類の表現「～することができます」に置き換えると良いでしょう。

【可能】川で魚を見られます。 　↓ 【～することができます】川で魚を見ることができます。

例文からも分かるように、「～することができます」の方がすんなりと意味が伝わってきますし、尊敬表現との誤解の防止にも繋がります。

尊敬表現は「お〜になる」を使用する

尊敬表現は、時として可能表現と間違われることがあります。

【尊敬】教授が家を出られます。 　↓ 【お～になる】教授が家をお出になる。

例文の前者では、“先生が家を出る”との尊敬表現を敬語にしたもので、もし【尊敬表現＝主語が目上の人】になることを理解していれば迷うことはありません。

しかし、読み手の全員が尊敬表現の大原則を理解しいるわけではありません。

そのため、後者の「お～になる」で表したほうが相手にやさしい文章となります。

「られます」の抑えておくべき3つの注意点

「られます」を使用する時、起きがちな注意点がいくつかあります。

• 「ら抜き言葉」にしない
• 複数の解釈になるときは使用しない
• 多用しない

特に、文章は話し言葉とは違って後に残るものです。

もし、あなたがライティングの仕事をしているのなら尚更、間違いがないよう注意しなくてはなりません。

ら抜き言葉に気をつける

ら抜き言葉とは「られます」の「ら」を取ってしまう言い方のことです。

【ら抜き言葉】このビンの蓋を開けれますか？ 　↓ 【可能】このビンの蓋を開けられますか？

昨今ではら抜き言葉は一部で定着化してきていますが、日本語として誤り・誤りじゃないと意見が分かれメディアの議題になることがしばしあります。

特に親しい間柄での会話の中では、つい使うシーンがあるかと思います。

ですが、ビジネスシーンや不特定多数の人が見るような文章では、正しい日本語が好ましいため「ら」は抜かないよう注意しましょう！

複数の解釈になるときは使用を避ける

「られます」は、1つの使い方で複数の解釈になってしまう場合があります。

展覧会では有名な画家の絵を見られます。

解釈①：見ることができる 解釈②：（特定の人物が）見る

解釈①は「られます」の可能表現で、解釈②は「られます」の尊敬表現です。

例文の場合【尊敬表現＝主語が目上の人】に該当しないため「～することができます」である可能表現（解釈①）となります。

では、例えば以下のように手前に文章があるとどうでしょうか。

明日の午前中、社長は弊社主催の展覧会のオープニングセレモニーに出席予定です。 展覧会では有名な画家の絵を見られます。

上記の場合、直前の文章で目上の人（社長）が登場しています。

そのため、読み手は『社長はオープニングセレモニーの後に、絵の鑑賞をされるのだな』と捉える場合もあるのです。

書いた当人としては“展覧会で有名な絵を見ることができる”と書いたつもりでも、受け手は誤った解釈をしてしまう可能性が出てきます。

このように、複数の解釈が起きてしまう時には、相手に誤解を与えないよう「られます」使いは避けましょう。

ではどうすればいいのかと言うと、以下のような言い換えが可能です。

【可能】展覧会では有名な画家の絵を見ることができます。

もし、社長の行動に関してならば、以下のように書き換えが可能です。

【尊敬】展覧会では有名な画家の絵をご覧になります。

誤った解釈をされないよう伝える側が注意をして、分かりづらい言葉遣いにならないよう気をつけましょう。

多用すると曖昧な表現になる

「られます」を多用すると曖昧な表現になることがあるため、無意味に使うのはやめましょう。

△　明日の天気は豪雨だと考えられます。 　　↓ ○　明日の天気は豪雨です。

例のような文言の場合、わざわざ「られます」表記にしなくともいいですね。不要な時には明確で分かりやすい表現に置き換えましょう。

なお「られます」を必要な箇所のみに使うことは、稚拙な文章にならないというメリットがあります。

必要最低限で正しく使えば読みやすい文章なるため、多用しすぎない程度に使うと良いでしょう。

「られます」をわかりやすく言い換えてみよう！言い換えクイズ

さて、ここでは今までのおさらいも含めてクイズを5問出題します。

「られます」をどの程度理解できたかを確認してみましょう！

クイズ①可能表現の言い換え

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クイズ②受け身表現の言い換え

クイズ③尊敬表現の言い換え

クイズ④自発表現の言い換え

クイズ⑤受け身表現の言い換え

クイズ⑥尊敬表現の言い換え

すべて“答えられました”か？

基礎が分かれば自然と身につきますので、まだ消化しきれていない人はもう一度おさらいしてみてください。

まとめ：「られます」の意味をしっかり理解して誰にでも伝わる文章を作ろう

今回は「られます」は「られる」の敬語表現であることと、文法や種類やそれぞれの使い方についてお伝えしました。

基本的な使い方や特に起こりがちな注意点は、本記事でマスターできたかと思います。

また、注意点はら抜き言葉にしない・多用すると曖昧な表現になる・複数の解釈になる場合は他の表現に変えるなどです。

特に、ビジネスシーンでの会話や文章、ライター業に従事している人であれば記事書きなどで誤った使い方をしないよう心掛けましょう！

「られます　られる」に関するよくある質問

最後に「られます・られる」に関するよくある質問をご紹介します。

まだ消化しきれていないことや疑問があれば、まずはこちらで確認してください。

よくある質問①「来られます」「いらっしゃいます」は同じ意味ですか？

「来られます」と「いらっしゃいます」は、いずれも同じ意味を持つ「来る」の尊敬語です。

尊敬語のため、相手を立てたり敬う際に使います。

ただし、使い方で若干の差があり「来られます」の方が敬語の度合いが弱いとされています。

意味は同じでも、対象となる相手やシーンに応じて使い分けをしましょう。

よくある質問②ら抜き言葉でも意味は通じるので、わざわざ「ら」をつけなくてもいいですか？

ら抜き言葉はビジネスシーンでの会話やメール、文章に起こす時には注意が必要です。

昨今ではら抜き言葉が定着してきている傾向もみられますが、本来は「ら」を抜いての「られます・られる」を使うのは誤りです。

【ら抜き言葉】今日は予定通り来れる？ →【可能】今日は予定通り来られる？

親しい中での会話であれば、気にせずにら抜き言葉でお喋りをする場合もあるかもしれません。

しかし、誤った表現で言ったり書いたりすることは稚拙な印象を植え付けますので、特に仕事や不特定多数が閲覧するようなブログやSNSでは避けるようにしましょう。

もしかすると”揚げ足取り”のようなコメントが付いてしまう可能性もあります…

よくある質問③「られます」を多用するとくどくなる時はどうすればいいですか？

「られます」を他の表現にすれば、相手にスムーズに伝えられる場合があります。

多用することで相手が理解しづらくなりますので、無理に使おうとはせず必要最低限の使用が好ましいです。

他の表現にするには、以下の4つのルールがあります。

①受け身表現は能動態に変換する

【受け身】僕は仕事仲間の一員として認められました。 →【能動態】僕は仕事仲間の一員になりました。

②自発表現は「です、ます」で言い切る

【自発】犯人はあの人であると考えられます。 →【です、ます】犯人はあの人です。

③可能表現は「することができます」と表現する

【可能】エサと酸素があれば、メダカたちも生きられます。 →【～することができます】エサと酸素があれば、メダカたちも生きることができます。

④尊敬表現は「お〜になる」を使用する

【尊敬】最後のお客様が帰られます。 →【お～になる】最後のお客様がお帰りになります。

「られます」表記は続けて使用することは避け、上記のように他の言い方に変換して伝えてみてください。