もしあなたが文章を書く中で、
「あまりちゃんと読んでもらえていないな…」
「なぜか読み手にうまく伝わらない…」
「そういう意味じゃなかったんだけどな…」
と感じた経験があるならば、その文章の中に『二重否定』が使われていないか確認してみましょう。
『二重否定』は世の中に非常にあふれている言い回しです。
だからこそ皆さんも、きっと目にしたことがあるはず。
しかし、むやみやたらに使っていいものではなく、そこには一定の法則のようなものがあります。
もしここで使い方を間違えると、読みにくい文章になったり、執筆者の意図と反して受け取られる危険性もあわせもっているのです。
そこで本記事では『二重否定』の特徴や使い方、避けるべきシーンまでまとめてみました。
コピーライター・Webライターに限らず、あなたも文章を作成する場面があれば、ぜひご参考ください。
二重否定とは?
二重否定とは「否定の言葉を二重に重ねた文章のこと」をさします。
一般的にあまりよくない表現方法として捉えられていますが、意外と日常でも気づかずに使われていることが多くあるのです。
そこで、以下に二重否定で使われることの多い例を挙げてみました!
【例1】
涙を流さずにはいられない
意味:どうしても涙が流れてしまう
【例2】
その日は都合がつかないわけではない
意味:都合がつく
このように否定の言葉を二重に重ねることで、例1のように肯定的な意味を強化すること、そして例2のように肯定を遠回しに言い表すことが可能となります。
つまり『二重否定』は、否定×否定で強い肯定を表現できるだけではなく、あいまいな肯定を表現する時にも使われるのです。
二重否定は使ったほうがいい?使わないほうが良い?
基本的には使わないことをお勧めします。
なぜならば、そもそも「二重否定」自体があまりいい意味で捉えられておらず『読み手次第で解釈が変わることもあるから』です。
『二重否定』を多用して相手が違う解釈をした場合、両者は多かれ少なかれストレスを感じます。
そこで訂正するとなっても手間が増えますし、読み手も「それならもっとはっきり言ってよ」と感じることもあるでしょう。
認識のすり合わせができればまだしも、一方的に書く文章では、そのすり合わせもできず認識がすれ違ってしまったまま…なんてことも起こりえます。
しかし、これが詩や小説であれば、含みを持たせた文章は”読み手に考える隙(すき)”を与えるので、好まれる場合もあるのです。
「それじゃあ二重否定は使ってもいいんじゃない?」
「いいですよ!」と言いたいところではありますが、そうは言っても多用することでやはり意味がぼやけて分かりづらくなる表現でもあるため、簡潔に読み手へ意図を伝えることが必要な文章においては、基本的に使わないほうがいいでしょう。
二重否定はどんな場面で使われている?
『二重否定』は、以下のような場面で使われることが多くあります。
- キャッチコピー
- 歌詞
- 詩
- 小説
例えば「いつやるか…今でしょ!!」で有名な林修先生が講師を勤めていた『東進ハイスクール』のキャッチコピー。
『伸びない人は、いない。』
これはつまり『人は必ず伸びる。』という意味ですが、含みを持たせる狙いもあり二重否定を使っています。
さらに歌詞や詩、小説などのあえて白黒はっきりさせない言い回しをする場面でも使われるのが特徴です。
登場人物の心の葛藤や感情の機微の表現が豊かになり、そのストーリーに対する臨場感も高まります。
また、シンガーソングライターの槇原敬之さんが歌う曲「もう恋なんてしない」の歌詞。
『もう恋なんてしないなんて 言わないよ絶対』
この歌詞の二重否定を直訳すると「また恋をする」と肯定を強めた表現となりますが、前後の歌詞を聴くとまだ今の恋を吹っ切れていない心情や、振り切ろうとあえて宣言している様子なども推察できます。
つまり、あえて白黒はっきりさせない表現をすることで、聴き手が自分の現状に合わせて自由に解釈する余白を作っているのです。
よくウェブ上では、「歌詞の意味を考察してみた」などのワードで検索すると記事が沢山ヒットしますが、それくらい歌詞や詩、小説などでは色んな解釈ができる言い回しが好まれています。
このように、用途が変われば意外にもよく見かける言い回しが多いのも、この『二重否定』の特徴です。
二重否定が使われる場面
二重否定は様々な場面で使われていますが、ここでは大きく3つの場面でどのように活用されているか解説していきます。
何度もお伝えしていきますが、基本的に二重否定は使用を控えたほうがいい言い回しです。
それでも二重否定を使いたい場合は、ぜひこの3パターンにあてはめて活用してみてください。
肯定表現として使われる場面
『二重否定』が肯定表現としての意味で使われる場合には『否定×否定』で強い肯定を表現することができます。
【例1】
彼がいなければ、このプロジェクトは成功していなかった
▶彼がいたからこのプロジェクトは成功した
【例2】
成長なくして成功なし
▶成功するためには成長が必要である
【例3】
涙なくして語れないない
▶語ると涙が出てくる
【例4】
あの人と自分の差を、比べずにはいられない
▶あの人と自分の差をどうしても比べてしまう
【例5】
彼が掃除をしないはずがない
▶彼は掃除をするはずだ
このように、強い確信を持って発言する場合や、言葉では言い表せないほどの感情を文章で表現したい場合に二重否定は使用できます。
この表現方法を活用することで、読み手に強い印象を残すこともできるでしょう。
否定的な言葉を優しく伝える場面
こちらも同じく『否定×否定の型』ですが、強い肯定ではなく弱い否定を表現する場面での使い方になります。
否定的な言葉をやさしく伝える場面とは、具体的に言うと
- 言いにくいことを相手に伝えたいとき
- 角が立たない言い回しで伝えたいとき など…
相手の言動に対してやんわりと否定する場合にもよく使われています。
【例1】
彼のやり方は間違っていないとは言い切れない
▶彼のやり方は間違っている可能性がある
【例2】
彼の言動は誤解されないとは言い切れない
▶彼の言動は誤解される可能性がある
【例3】
あの運転だと事故にあわないとは言い切れない
▶あの運転だときっと事故にあう可能性がある
このようにストレートに言うと角が立ちそうな内容を二重否定で表現することで、相手に受け取ってもらいやすくしています。
また、自分の意見が白黒つかないとき、自分でもその事柄についてよく分かっておらず断言できないときにも使う表現方法です。
確かに相手にやんわり伝えることはできるでしょうが、こちらの意図がうまく伝わらない可能性も高いでしょう。
もし相手に明確な意思を伝えたり、緊急性を伝えたい場合には避けたほうがいい表現の一つです。
含みをもたせて伝える場面
こちらも『否定×否定』の表現ではありますが、強い肯定の意味とは異なります。
こちらの二重否定は「言葉の意味とは別の意味を持たせた表現」をする際に使われているため、つまりは”発言する言葉の裏に別の意味を持たせる役割”を果たしているのです。
【例1】
その案に乗らないこともない
▶条件次第でその案に乗る
【例2】
ピクニックは嫌いじゃない
▶ピクニックが好き
【例3】
料理ができないわけじゃない
▶料理ができる
(含みの意味:料理は出来るがあまり自信がない)
【例4】
英語が話せないわけじゃない
▶英語で話すことができる
(含みの意味:英語で話せるがあまり自信がない)
【例5】
彼のことは嫌いなわけじゃない。
▶嫌いではないが、思うところがある
これらの表現を用いるうえで押さえておくべきこととして、読み手次第で解釈が変わる点を理解してください!
これらの表現は「結局どっち?」と読み手(聞き手)を悩ませてしまいかねない返答です。
この一言で相手の真意を推し量ることは難しいことから、その前後の文章が判断材料となってくるでしょう。
どちらにしても、これらの表現は相手の解釈にゆだねることになるため、一番誤解を生みやすい表現方法とも言えます。
二重否定を避けるべき理由【3選】
『二重否定』は好まれる表現ではありません。
理由としては、読み手(聞き手)側が理解するために時間がかかるだけではなく、誤解を生みやすい表現だからです。
ここでは「二重否定を避けるべき理由」として具体的に3つご紹介していきます!
冗長表現になる
『二重否定』を使用すると、冗長表現になり文章が読みづらくなります。
要するに、肯定文1回で文章を書けば済むものを『否定×否定』で書くことによって、単純に文章量が増えるということです。
例えば、
「今おなかがすいてないこともない。」
と言われるよりも、
「おなかすいた。」
と言われたほうが文字数も少なくすっきりとして見えますし、意図も明確です。
『二重否定』での表現が増えると、一瞬「どっちの意味?」と思考が停止するなんてことも…。
そのため、読み手(にとってより端的で、ストレスなく読みやすい文章を書きたい場合は、冗長表現の原因になる『二重否定』を避けましょう。
意味が伝わりにくい
二重否定は意図を持って扱わなければ「結局何が言いたいの?」という内容になりかねません。
例えば、
「今日はカレーを作ろうと思うんだけど、カレーは好き?」
という問いに対して
「嫌いではない」
と言われたらどうでしょうか?
「好きなのか?」
「嫌いなのか?」
…はっきりとは分からないですよね。
つまり『二重否定』は、相手に本来の意味・意図が伝わりづらい表現方法であることを理解する必要があります。
読み手に誤解を与える可能性がある
二重否定はあいまいな言い回しになるので、その解釈が相手にゆだねられる側面が往々にしてあります。
そのため、使用することで意図せず読み手に誤解を与えるなんてことも…。
例えば「台風の影響で、明日学校が休みにならないこともない」という表現。
これでは読み手が都合のいいように解釈ができてしまいます。
「明日は休みだ!」と早とちりする人もいるでしょう。
そのため、まだはっきりしない内容であれば、
「台風の影響で明日休校の可能性が出てきました。明日9時に最終アナウンスを流します。」
と言ってもらえたほうがすっきりします。
このように、読み手が頭を悩ませないと読めない文章は好まれません。
例外として、歌詞や詩に使う場合には、その「あいまいさや相手によって解釈が変わる」という点が好まれる場合もあります。
ポイント
・二重否定のメリット:自由に解釈ができる
・二重否定のデメリット:誤解を与える
二重否定を文章で使う際のポイント
今まで「二重否定は避けたほうがいい」とお伝えしてきましたが、例外として使えるものもあります。
本セクションでは、そんな二重表現を用いるうえでのポイントをお伝えしていきますので、ぜひご参考ください!
文中に何度も使わない
文中に何度も二重否定を使うことで、その文章で伝えたい意図がどんどんぼやけていきます。
以下の例文をご覧ください
お店の前を通ると、入らずにはいられないほどのラーメンの良い香りが漂ってきた。
店内は決して汚いというわけではない。
早速ラーメンを注文して食べたところ…不味くなかった。
お店の前を通ると、ラーメンのいい香りが漂ってきたため、思わず入店。
店内はこざっぱりしているようだ。
早速ラーメンを注文して食べたところ…美味しかった。
両者を比べてみると、”二重表現を乱用した文章がいかに理解しづらくなっているか”がお分かりいただけるかと思います。
あいまいな表現は増えれば増えるほど、読み手にストレスを与えます。
また、伝えたい意図とは異なる解釈をされることも出てくるでしょう。
そのため、何度もお伝えするように、前提として『二重否定』は使わないことをおすすめしています。
意味が”伝わりやすい文章”で使用する
二重否定は、その性質上どうしても誤解を生みやすい言い回しになります。
そのため意味が伝わりやすい文章の場合のみに使用することで、誤解を避けることが重要です。
例えば、
「このもつ煮込みは実においしい。箸を止めることができない。」
「大ヒットした映画に出ている俳優で、知らない人はいない。」
この2つの文章に含まれる二重否定には、その前の文章に「おいしい」「大ヒット」という肯定的な単語が含まれています。
つまり、二重否定を使っていたとしても、読み手にとって、この文章が肯定的な意味で用いられていると理解しやすくなっているのがポイントです。
文章を書く場合はぜひ、二重否定そのものだけを意識するのではなく、その前後の文章で誤解がないように相手に伝わっているかを意識してみてください。
まとめ:「二重否定」は使うシーンが限定されるため基本は使用しない!
今回は、意外と意識していない『二重否定』についてご紹介しました。
具体的な例をあげることで、イメージもわきやすくなり、二重否定が使われている文章に対して違和感を覚えるようになってしまうかもしれません…。笑
ただ『二重否定』は避けるべきとお伝えしましたが、文章の用途によっては二重否定も表現方法の1つとして候補に入れることは問題ない、ということを押さえておいてください!
本記事が文章を作成するうえでの一つの参考となれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
仕事では長年の営業経験を活かし、現在は様々な角度から記事を執筆中。
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