日頃からライティングや営業の仕事に就いている方なら、決定回避の法則という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
決定回避の法則を理解すると、作成した文章の反応率が上がったり、
また、マーケティングスキルが向上するなどの効果を実感できるでしょう。
そこで、当記事では以下のことについて解説いたします。
- そもそも決定回避の法則とは?
- 身の回りにある決定回避の法則の実例
- 法則をコピーライティングに活用する方法
- 法則を活用する上での注意点
決定回避の法則を知って、自分のライティングに活かしたい
マーケティング力を身につけて、営業成績を伸ばしたい
このようにお悩みの方に役立つ内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
決定回避の法則とは?
決定回避の法則とは、“人は選択肢が増えるほどその中から1つを選ぶことを避けてしまう”という心理的作用のことをいいます。
決定回避の法則は、アメリカの行動経済学者エルダー・シャフィール博士により提唱されました。
あなたも、ドラッグストアやディスカウントストアに立ち寄り、欲しい物を探した際、あまりの品揃えの多さに決めきれず「また今度でいいかな」と買わずに帰ってきた経験はありませんか?
商品の選択肢が多すぎると、人の脳は「比較・検討」することにストレスを感じ、その結果選ぶのをやめてしまうのです。
以下に、心理学やマーケティング業界で有名な、決定回避の法則が働いた実験結果をご紹介します。
決定回避の法則の実証実験(別名/ジャム理論)
決定回避の法則は、別名「ジャム理論」とも呼ばれます。
「ジャム理論」は、コロンビア大学教授で『選択の科学』の著者でもある、シーナ・アイエンガーによるジャムの実験が語源となっています。
実験はスーパーでジャムを使って行われ、24種類と6種類のジャムを別の日に販売するという形で行われました。
実験の結果は、種類の少ない6種類のジャムを販売した日の方が購入率が高かったという結果が出ています。
数 | 試食後の購入率 |
---|---|
24種類 | 3% |
6種類 | 30% |
上記の表のように、24種類のジャムよりも6種類のジャムの方が購入率に10倍もの差があったのです。
このようにジャム実験の結果は、選択肢が多すぎると人は1つを選べなくなってしまい、心理的に決定回避の法則が働くことを示しています。
逆に選択肢が少ない方が、人は選びやすくなるということですね。
決定回避の法則が作用している実例 5選
普段の生活の中で、選択肢が多くて決めるのが面倒に感じている事はありませんか?
じつは、決定回避の法則が作用している例は身の回りにもたくさんあります。
以下に、普段私たちが体験している決定回避の法則の実例をまとめてみました。
実例① 生命保険の見直し
生命保険は、加入して数年経つと見直しをしなければいけませんよね。
しかし、保険の見直しは面倒でつい検討するのを先送りにしてしまいがちです。
結婚、出産、退職などライフスタイルが変化するたびに必要な保険の見直しですが、保険会社も保険の種類もあまりに多く、数個に絞るだけでひと苦労。
そのうえ、多くの人は保険の内容にも詳しくないため、自分に合っている商品を選ぶのにストレスを感じてしまい、結果、決めきれずに日にちばかりが経ってしまうことはよくあります。
実例② 金融商品の購入
少しでも資産を増やしたいと、株や投資信託などの金融商品に興味を持ったことはありませんか?
しかし、銀行や証券会社で担当者の説明を聞いても内容がよく理解できず、多くの金融商品の中からどれか一つを決めることはなかなかできません。
結局その場では決めきれず、パンフレットはたくさんもらってきたけれど、そのままになっている人も多いでしょう。
実例③ オススメが多いWebサイト
昨今、商品やサービスのおススメを紹介するサイトをよく見かけますね。
筆者も、欲しい物を探していておススメをまとめたサイトを見てみることがあります。
しかし、そのサイトに「おススメ」が10個も20個も表示されていたらどうでしょう?
結局どれがおススメなのか分からず、購入を見送ってしまいますよね。
実例④ 携帯会社の料金プラン
携帯会社の料金プランも、複雑で分かりづらいサービスの1つです。
数種類の料金プランに加えて、さらに各種オプションやサービス、携帯電話を分割払いにした際の料金など…
決めることが多すぎて、選ぶのに煩わしさを感じている人は多いでしょう。
実例⑤ メニューが多いレストラン
レストランに入ってメニューを見ると、ラーメン、うどん、定食などたくさんのメニューが並んでいたら…
決めるのに迷ってしまい、注文するまでに時間がかかりますよね。
そんなときに「日替わり定食」「本日のおすすめ」などがあれば、メニューの品数が多くても決める負担は少なくなります。
しかし、多くの種類が載っているメニュー表しかなければ、決めるだけでもストレスを感じてしまうでしょう。
決定回避の法則をコピーライティングに活用する3つの方法
前セクションでは決定回避の法則が作用して「決められない」例をご紹介しました。
しかし、人には決定回避の法則という心理作用があることを理解すれば、法則を有効に活用できるでしょう。
そこで本セクションでは、決定回避の法則をコピーライティングに活用する方法を事例とともにご紹介します。
読む人の“選ぶ負担”を軽減し、商品やサービスの購入率や集客率をアップさせるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
具体例① ニーズに合わせて選択肢を絞る
商品やサービスのラインアップがいくつもある場合は、読み手のニーズに合わせて選択肢を絞りましょう。
選択肢を絞ることで、読み手は自分に合ったものを選びやすくなるため、申込みに繋がる可能性が高まります。
反対に商品やサ-ビスをアレもコレもと紹介すると、読み手は何を基準に選べば良いのか分からず、結局決められずにその場を離れてしまうでしょう。
それでは、読み手のニーズに合わせ選択肢を絞って提案する例を3つご紹介します。
提案例1:商品を絞って提案する
生命保険の見直しを例に見てみましょう。
たくさんある保険商品の中から、読み手のニーズに合わせ「生命保険」に絞って以下のように3個、提案します。
- 終身保険(終身保障)
- 定期保険(〇〇歳まで保障)
- 収入保障保険(〇〇歳から毎月一定の収入を保障)
すると、生命保険の見直しを検討中の方は、提示された3種類の中から選ぶだけのため希望のサービスを決めやすくなり、申込みに繋がる確率は高まるでしょう。
提案例2:アンケートに答えてもらう
化粧品のようにラインアップが多い商品の場合は、アンケートに答えてもらう形で選択肢を絞っていくこともおすすめです。
たとえば以下のようなアンケートを作成します。
引用:フィールメージュリヴァイティア
読み手はアンケートに答えていくだけで、自分に合った商品に絞り込むことができ選びやすくなるため、購入率はUPするでしょう。
提案例3:カテゴリーごとに分類する
ご紹介したように、取り扱っている商品やサービスが多い場合、全部を紹介すると決定回避の法則が働き、読み手は決断を先送りしがちです。
そのため、読み手のニーズに合った商品だけに絞って提案したり、アンケートの作成、またカテゴリー分けをするなど、選びやすい環境を作りましょう。
具体例② “選択に最適な数”を提案する
選択肢を絞る際は、“最適な数”を提案することも大切なコツです。
マーケティング業界で“最適な数”として有名なものに、心理学の1つである「マジカルナンバー」と「松竹梅の法則」があります。
それぞれ、詳しく解説していきますね。
マジカルナンバー
人には“一度に覚えられる最適な数がある”といわれており、マジカルナンバーと呼ばれています。
マジカルナンバーは5~9個(7±2)、その後の研究では3~5個(4±1)と発表されました。
そのため、提案する際の選択肢の数はマジカルナンバーを意識すると良いといわれています。
以下にマジカルナンバーをキャッチコピーに活かした例をご紹介します。
例1:家電の紹介サイト
家電関連のサイトの中で炊飯器を紹介する記事を書く。
キャッチコピー:「ご飯が美味しく炊けるおすすめ炊飯器 7選 」
例2:健康関連のサイト
健康関連のサイトの中でお役立ちコラムを書く。
キャッチコピー:「寝ても疲れが取れないあなたへ。疲れを取る3つの方法」
上記のように選択肢を絞りマジカルナンバーを取り入れると、読み手は情報を受け取りやすく、欲しい物を選びやすくなるでしょう。
先にご紹介しましたが、マジカルナンバーには「7±2」と「4±1」の2種類があります。
マジカルナンバーの使い分け方に決まりはありませんが、一般的には以下のように活用するといいでしょう。
- 多く提示したいもの
- 日用品など選ぶのにあまり負担を感じないもの
- より記憶してほしいもの
- 内容が複雑で、専門的な知識が必要なもの
提案数を絞る際にマジカルナンバーを取り入れると、ストレスなく読み手の記憶に残り、選びやすい環境を作ることができます。
松竹梅の法則
松竹梅の法則の選択肢は3択のため「比較・判断」がしやすく、決定回避の法則に取り入れることで、たいへん効果を発揮します。
松竹梅の法則とは、3つの異なる選択肢がある場合、多くの人は真ん中のものを選ぶ傾向にあるという心理効果のことをいいます。
たとえば、以下のように3段階の価格のお弁当が並んでいる場合、
- (松)8.000円のお弁当
- (竹)4.000円のお弁当
- (梅)2.000円のお弁当
多くの人は、心理的に真ん中の「竹」を選びやすいのです。
その理由は、以下のような心理が働くからです。
「値段は高いほうが安いものよりも品質が良くて美味しいだろうな」
「でもいちばん高いものを選んで失敗したらイヤ」
「真ん中の商品の価格なら、一番安いものに少しだけプラスすればいい」
ちなみに、松竹梅の選ばれる比率は、
松:20% | 竹:50% | 梅:30% |
といわれています。
そのため、松竹梅の法則をマーケティングに活かすためには、真ん中の「竹」にこちらが売りたいと考えている商品やサービスを置くのが定説です。
以下に松竹梅の法則を実際に活かした例を見てみましょう。
例1:
ファーストフードのフライドポテトやドリンクのサイズは「S」「M」「L」
例2:
お寿司屋さんのメニューは「松」「竹」「梅
例3:
多くの携帯会社の料金プランは3択
身の回りを注意して見てみると、松竹梅の法則は様々なシーンに使われていますね。
上記に3つの例をご紹介しましたが、どのお店も“真ん中の商品を売りたい”という意図を持って価格を設定しています。
また、松竹梅の法則を使った際、読み手が物事を判断する基準は「選ぶか選ばないか」という迷いではなく、「どれを選ぼうか」になるといわれています。
そのため、決定回避の法則を活用する際に松竹梅の法則を取り入れることで、さらに効果を期待できるでしょう。
具体例③ 「口コミ」をプラスする
商品やサービスの選択肢を絞り、さらに「口コミ」などをプラスすることで、読者が購入や申込みに繋がる可能性は高くなります。
それでは、決定回避の法則と口コミの関係性についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
「口コミ」や「レビュー」を載せる
商品やサービスを探す際、口コミやレビューは必ずといっていいほど参考にしますよね。
第三者の口コミは、当事者が発信する内容よりも信頼性が高まり、購入や申込みに繋がりやすくなります。
この心理効果のことをウィンザー効果といいます。
なにかの情報に対し、当事者よりも第三者が発信した情報のほうが信頼されやすいという心理効果。
たとえば、製品の魅力を自社が発信するよりも、何も利害性がないユーザーが発信する良い口コミやレビューのほうが信頼性が増し、購入に繋がりやすくなるのです。
このことから、ウィンザー効果の別名を口コミ効果と呼ぶこともあります。
それでは、決定回避の法則とウィンザー効果を合わせてライティングに活用する際の具体的な方法を見てみましょう。
例1:Webサイト
Webサイトに掲載する記事の中で、ターゲット※に紹介する商品やサービスを絞ったら、必ず「体験者の声」「口コミ」「インタビュー記事」を掲載する。
※ターゲット…想定される顧客のこと
例1:SNS
TwitterやInstagramを活用し、紹介する商品やサービスのアンケート結果やレビューを公開する。
上記のように、決定回避の法則を活用するとニーズに合わせた商品やサービスの絞り込みができ、さらにウィンザー効果で信頼性を高められるという相乗効果が生まれ、購入に結びつきやすくなります。
決定回避の法則を活用する上での注意点
ここでは決定回避の法則を活用する上での注意点を3つ、具体例とともにご紹介します。
決定回避の法則を活用すると、読む人の負担を減らすことができるため、こちらの望む行動を取ってもらいやすくなります。
しかし、決定回避の法則を間違って使うとかえって、売上が上がらない…また来客数が伸びない…などの機会損失を招くことになってしまうため、ぜひ参考にしてください。
注意点① 選択肢が1つ、または2つの場合はNG
決定回避の心理が働かない(選びやすくする)ためには“選択肢を減らす”ことが大事です。
しかし、だからといって、商品・サービスの選択肢が1個または2個しかないのはNGですので気をつけましょう。
1つがダメな理由
1個がダメな理由は、人は物事を他と比べることで判断するからです。
商品・サービスが1個しかない場合、それが良いものかどうかを人は判断できません。
そのため、「他にもっと良いものがあるかもしれない」と思い、他を探す可能性が高まります。
2つがダメな理由
ある商品価格の選択肢が2個の場合、人は価格の安い方を選びがちです。
たとえば、8.000円と5.000円の2つの商品のうちどちらかを選ぶ際、多くの人が5.000円の方を選ぶ傾向にあります。
その理由は、人は安い方によりお得感を感じるからです。
2種類の価格設定の場合、安い方を選ぶ人の割合は7割といわれています。
上記のように、選択肢を1個または2個に絞ると逆効果になり、売り上げに繋げることができなくなってしまいます。
注意点② 活用するシーンを考える
決定回避の法則は購入率を上げる、また来客数を増やすなどに有効ですが、使うシーンを間違えると、かえって逆効果になる場合もあります。
それは、“多くの種類があるため選ぶことそのものが楽しい”というシーンです。
以下の例を見てみましょう。
選ぶのが楽しみなシーン
例1:レストランのバイキング
例2:焼肉食べ放題
上記のような場合、たくさん並んでいる料理やメニューを目の前にするだけでワクワクする人は多いでしょう。
逆に、お客さまが選びやすいようにとバイキングや食べ放題のメニューを少なくしてしまったら、来客数は減ってしまいます。
決定回避の法則は、使うシーンを考えることがとても重要です。
“選ぶ”という行為が顧客の負担になる場合のみ、決定回避の法則を取り入れるようにしましょう。
注意点③ 集客数にも注意を払う
決定回避の法則は「成約率」を上げるために有効な法則です。
しかし、売り上げを上げるためには「成約率」だけではなく「集客数」にも注意を払う必要があります。
たとえば、1個500円の商品を販売する場合の例を見てみましょう。
以下の表をご覧ください。
集客数 | 成約率 | 売上金額(1個500円) |
---|---|---|
100人 | 50% | 50人x500円 = 25.000円 |
1,000人 | 10% | 100人x500円 = 50.000円 |
上記の場合、「集客数」100人に比べて1.000人の「成約率」は5分の1ですが、売上金額は2倍になります。
このように、売り上げを伸ばすためには「成約率」だけではなく「集客数」も大事な要素です。
決定回避の法則を活用する際は、「成約率」だけに気を取られないよう気をつけましょう。
決定回避の法則に宿る人の心理を知り、意思決定を促そう
今回の記事では、決定回避の法則についての基本的な知識や実例、法則をコピーライティングに活用する方法、注意点についてお伝えしました。
人はたくさんの情報の中から1つを選択することにストレスを感じるものです。
決定回避の法則を知っておくと、読み手にできるだけストレスを抱かせない、選びやすい状況を作ることができます。
さらに、決定回避の法則を活用するコツや行動心理学をライティングにプラスすれば、より成果に繋がる文章を書けるようになるでしょう。
今回お伝えした内容が、あなたのライティングや営業に活かせるヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。