
「以外」と「意外」は、読みは同じ “いがい” である「同音異義語」どうしです。
あなたは、このふたつを書き分けできているでしょうか?
どちらも日常生活で、わりとよく使う言葉です。
そのため多くの方々が、話し言葉としては自然と使いこなせていることが予想されます。
しかし、もし自信をもって書き分けができていないとするなら…
本記事が、きっとお役に立てます。
言葉の意味はもちろん、これらの熟語を構成している漢字がもつ意味、例文による用法の説明、言い換えの例、関連Q&Aなど、情報を盛り込みました。
読み終わったあなたはきっと「以外・意外」の使い分けがしっかりとできるようになります。
どうぞ最後までお付き合いください。

基本をおさえよう!「以外・意外」の意味の違い

本セクションでは「以外」と「意外」の意味を確認しましょう。
これらの熟語を構成している漢字自体がもつ意味にも触れてみます。
そして、使うときに押さえておきたいポイントについても解説しましょう。
「以外」の意味

- ある範囲の外側
- 〜を除く他のもの。そのほか。
上記の意味を2つ見ていただくことで分かる通り「以外」には『ある範囲の外側』や『以外の対象を除くそのほか』という意味を指す語句です。
例文を交えて理解を深めていきましょう
・アジア以外の地域
例文では、アジア(複数の国家で構成される地域)を基準にし、全世界からアジアだけを除いた他のすべての地域を表現しています。
・日本以外の国々
例文では、日本(ひとつだけの国)を基準にし、全世界から日本だけを除いた他のすべての国家を表現しています。
ちなみに「以」という時には『範囲・方向なその起点をあらわす言葉』という意味があり「以+外=起点(基準)よりも外側」と、字の組み合わせからも読み解くことができるのです!
上記2つの例文を見ていただくと分かる通り「以外」の範囲には“基準自体は含めない”ため、使用する際は注意が必要です。
「意外」の意味

- 考えていた状態と実際とが非常に違っていること
- 思いのほか。
一方の「意外」には『考えていた状態と実際とが非常に違っていること』や『思いのほか』という意味を指す語句です。
こちらも例文を見て違いを知っていきましょう!
・あのアンコ型の力士、意外に素早い
※アンコ型:相撲において丸く太った・お腹が突き出た力士の体型
例文では、見た目にそぐわない動きを目にしたことで“想像していたよりも”素早いことに驚いているようすを表しています。
・日が照っているわりには、意外に寒い。
こちらは「日差しがあるために暖かいと想像していたのに、寒かった。」という“考えていた状態と実際とが異なる”ようすを表しています。
こちらも字の組み合わせから読み解くと「意」という字には『こころ・おもい・気持ち』などの意味が含まれており「意+外=気持ち(思い)の外側」であることが分かります。
これら例文を踏まえておさえておくべき基準として“意外だ”と思ったその人の気持ちであることに注目してください。
基準となる人の気持は人それぞれ。
すなわち人の考えによって良し悪しの判断が変わるのです。
そのうえで、改めて「例文③」を確認してみましょう。

・あのアンコ型の力士、意外に素早い
※アンコ型:相撲において丸く太った・お腹が突き出た力士の体型
先ほどは「体重がある=動きが遅い」という多くの人が想像しそうな状態を基準にしたために、素早さをメリットととらえて「よかった例」としました。
しかし “力士というものは堂々とした体格で地に足をつけ、力で相手をねじ伏せるべきだ” と考えている人がいたならどうでしょう?
その人は “アンコ型なのに素早い力士” を見て、想像と違って残念だと思うかもしれません。
そのため『意外』という言葉には読み手・書き手それぞれの心情次第では良し悪しが変わる…
少し複雑な特徴をもつ語句でもあるのです。
「以外・意外」の使い方をチェック!

ここでは、あるシチュエーションを題材にして「以外」と「意外」の使いわけを見てみましょう。
自分が風邪をひいたかもしれない場面を想像してください。
風邪をひいたと感じたのでかかりつけの内科に行ってみたが、臨時休診の立て札。
意外なことに、主治医自身も風邪をひいてしまったらしい。
風邪をひいたと感じたが、かかりつけの内科が休診であったため、そこ以外の病院を探さねばならなかった。
意外を使った例文は、いつもの病院で受診できると想像していたがそうならなかった場面。
以外を使った例文は、いつもの病院とは別の病院を選ばなければならなかった場面です。
そのため…
- 意外:考えていた状態と実際とが非常に違っているとき
- 以外:基準(起点)よりも外側を示すとき
という使い分けをすることが、これら2つの「いがい」の理解を深めるうえで重要なのです。
「以外・意外」を使った例文
「以外」と「意外」それぞれの例文をお示しします。
いくつかの例文を確かめるだけでも、使い方のパターンや決まりごとが見えてくるので、一緒に確認してみましょう!
「以外」を使った例文
「以外」は「ある基準の外側」という意味であるため「基準」がなければ使うことができません。
「以外」の例文① 2月以外の月はすべて、30日間以上だ。

【解説】
「2月」を基準として『以外』を用い、その他の11個の月について語っています。
「以外」の例文② 地球には、月以外の衛星はない。

【解説】
「月」を基準にして「以外」を用い、文末を否定形にしています。
「月以外はない=月だけだ」という意味です。
「以外」の例文③ 犬と猫以外のペットフードは、当店では扱いがございません。

【解説】
「犬」と「猫」を基準とした複数の言葉を列挙して、それらの外側(他の動物)をまとめる場合もあります。
「意外」を使った例文
「意外」は、良い場合にも悪い場合にも使う言葉です。
この善悪の判断は“意外だ”と思う人が前もって考えていた事柄によって決まります。
「意外」の例文① あまりにも意外な展開に、私は言葉を失った。

【解説】
“あまりにも意外な” だけでは想像以上だったのか以下だったのか、判断がつきませんね。
感動により言葉を失ったならうらやましいですが、もしあっけにとられて失ったなら
…残念なことです。
「意外」の例文② 顔写真から受けた印象と違い、彼女は意外に背が高い。

【解説】
彼女の身長を知らないときに見た顔写真の印象から想像していた背丈より、実際は高いという事実を述べているだけです。この場合は想像していた背丈は実際よりも低かったと読み解けます。
「意外」の例文③ 紹介されて期待していたが、このお菓子は意外と美味しくなかった。

明らかに期待はずれで、よくない状態といえるでしょう。
「以外」の言い換え表現【3選】

「以外」には、いくつかの類義語があります。
「以外」を使った文と、それを類義語で言い換えた文のペアを3パターンお示ししましょう。
あなたは、言い換える前と後、どちらが好みでしょうか?
〜のほか
以外:あなたには、読書以外に趣味はありますか?
〜のほか:あなたには、読書のほかに趣味はありますか?
(〜とは)別に
以外:私は、パソコン以外にタブレット端末も所有している。
(〜とは)別に:私は、パソコンとは別にタブレット端末も所有している。
(〜を)除いて
以外:今日は、沖縄地方以外は全国的に雨模様だ。
(〜を)除いて:今日は、沖縄地方を除いて全国的に雨模様だ。
「ほか」「別」「除く」これらはすべて「外れている」という意味をもつ言葉ですね。
以外という言葉は便利ですが、比較的硬い表現です。
そのせいか、言い換えた表現のほうが少し柔らかい印象になりますね。
「意外」の言い換え表現【3選】

「意外」の類義語には、どういうものがあるでしょうか?
以下に示す3種類の言い換え表現の基本的な意味は同じですが、意外だと思う強さに違いがあります。
後から出てくるものほど、意外さが強い表現です。
案外
意外:来月発売予定のニューモデルは、意外と低価格だ。
案外:あなたには、読書のほかに趣味はありますか?
「案外」の意味は「意外」とは少し違います。
「案外」は漠然とした想像や、常識と思われている範囲から外れた様子に使う表現です。
よって “案外〜だ” と感じた人は、事前に自身の考えを強く持っていたわけではない状況です。
そのため「案外」を用いれば「意外」と同等か、それよりも軽い驚きの程度であることを表現できます。
思いの外(ほか)
意外:前評判が良かったわりには、意外に客が集まらなかった。
思いの外(ほか):前評判が良かったわりには、思いのほか客が集まらなかった。
思いもよらない
意外:まさか、彼と両想いだったなんて、意外だった。
思いもよらない:まさか、彼と両想いだったなんて、思いもよらなかった。
もともとの自身の思いや考えがない、すなわち「基準」がないはずですから「意外」の度合いを強くした表現といえるかどうか、難しいところです。
とはいえ、近い意味であることは間違いなく、類義語にあたります。
ただし、このシチュエーションで「意外だった」という表現を使ったのでは、風情がないですね。
冷静すぎます…笑
この場面の「思いもよらなかったこと」とは「私のことを好きだという彼の気持ち」だと考えられます。
まとめ:もう迷わない!「以外」と「意外」の意味を正しく理解しよう

「以外」と「意外」について例文を交えながらご紹介してきましたが、知識の整理になりましたでしょうか?
読みは同じでも、意味はまったく違います。
また「意外」については、類義語によって「意外さ」の強さに違いがあるのも面白いところですね。
本記事をお読みくださったあなたにも、これらの語句の違いを再認識し、理解していただけたなら、こんなに嬉しいことはありません。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。

「以外・意外」に関するよくある質問

日本語には同音で違う表記の言葉がいろいろありますが、その中の一組「以外」と「意外」。
このセクションでは、関連する質問にお答えします。
ぜひ、ご確認ください。
よくある質問①「以外」と「意外」の類義語はありますか?
はい、複数存在します。例は以下をご確認ください!
・〜のほか
・別に
・(〜を)除いて
・範囲外
・その他 など…
・案外
・思いのほか
・思いがけない
・思いもよらない
・予期しない など…
よくある質問②「意外に」と「意外と」の違いはなんですか?
両者に明確な違いはなく、意味は同じです。
「意外に」は文章で使われることが多く「意外と」は会話で主に使われるという説があります。
「意外と」のほうがやや崩れた語感であるようですが、どちらも間違いではありません。
よくある質問③「以外」と「以内」の違いを教えてください。
この二語は対義語です。以下、図で簡単に解説します!

緑の四角の枠の中いっぱいが「全体」であるとして…
- 境界およびその内部が「以内」
- 境界を含まずに、その外部が「以外」
このように区分されます。
よくある質問④「以外」に似た言葉で「以上」「以下」がありますが、どういう意味ですか?
「以外・以内」の組み合わせに似ている名称の「以上・以下」。
「以上」と「以下」は反対のことを表現しているのですが、単純には対義語と言えない関係なのです。

- 以上:数量・程度などが、ある基準を含んで、それより上であること。
- 以下:数量・程度などが、ある基準を含んで、それより下であること。
テストの点数を例にすると、
・70点以上:70点を最小として含めたうえで、それより高い点数
・70点以下:70点を最大として含めたうえで、それより低い点数
「以上」にも「以下」にも基準点が含まれることに、よく注意してください。
よくある質問⑤「予想外」という言葉がありますが、どういう意味ですか?
「意外」は“考えていた状態と実際とが、非常に違っていること”です。
「予想外」は“予想していた状態と実際とが、非常に違っていること”です。
ほとんど違いはないですが「予想する」と「考える」を比較すると、「予想」の方があらかじめ意識的に考えている様子がうかがえますね。
その分、より基準が明確になっていると読み取ることができます。
よくある質問⑥「私以外」と言う場合に「私」は含まれますか?含まれませんか?
「以外」は、その直前にくっつく「基準となる言葉」を含みません。
このことから「私以外」といえば「私を除いた、ほかのすべての人たち」という意味になり、「私」を含みません。
よくある質問⑦「意外性のある」という表現を見ました。「意外性」と「意外」は、どう違いますか?
「意外性」は、意外である状態を示す名詞です。
「意外さ」と言い換えることもできます。
一方「意外」も名詞の一種でもあるのですが「意外な」「意外に」といった活用をする形容動詞としての使い方が主です。
なお、「意外のある」という言い方はしません。
