本記事では「二重表現」の種類と使わないための対策についてご紹介します。
「二重表現」は会話の中で知らず知らずのうちに使っていることが多く、注意しないと間違った表現をそのまま文章に書いてしまいます。
書いた本人は何ら不思議に思わなくても、読者には違和感を与えてしまうかもしれません。
書き手がうまく書けた文章だと思ったとしても、二重表現があることで、読者からは「読みづらい」「わかりづらい」という評価で終わってしまう可能性があります。
そのため、コピーライターの方だけでなく、仕事や学業の文章作成で困っている方にも役に立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
二重表現とは
二重表現とは、ひとつの単語だけで意味がわかる語句に対し、同じ意味の言葉を重ねて使っている表現で「重言(じゅうげん、じゅうごん)」や「重ね言葉」とも言われます。
言葉の意味を強調したいときや、言葉にリズムを与えたいときに使われることが多い表現です。
・過半数を超える
・違和感を感じる
会話で実際に使ったり、テレビなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
話し言葉であれば、ある程度意味がわかるため許容範囲の場合が多くありますが、文章においては「誤用」とみなされている表現になります。
文法として明確に誤りと設定されている訳ではありませんが、下記のような理由で忌み嫌われています。
- 同じような言葉が続いて意味がわからない
- 表現がしつこい、うるさい、長い、回りくどい
- 見た目がよくない
- 文字数稼ぎでごまかそうとしている
特にビジネスシーンでは、文章に限らず会話でも使っていると恥をかくことがあります。
正しい日本語を使えない方は、信頼にも繋がりますので、できれば使用は控えるべき表現だと覚えておいてください。
二重表現の種類について
ここからは、二重表現が起きてしまう場面を種類別に3つほどご紹介します。
例文をもとに、どこが二重表現に掛かっているか考えながら見ていきましょう。
同じ語句を使った二重表現
会話だと気づきにくいですが、文章にすると同じ語句を使っている表現があります。
例文を見てみましょう。
・頭痛が痛い
・あらかじめ予約する
・後で後悔する
・馬から落馬する
・返事を返す
会話ではスッと通じるかもしれませんが、文章にするとどうでしょう。
違和感がありませんか。
同じ語句が続いているので見た目が悪いだけでなく、回りくどい表現をしている感じがします。
語句が同じということは、同じ意味を重ねて使っている場合がほとんどです。
これは基本的に使用を控えるべき二重表現になりますので、ぜひ覚えておいてください。
同じ意味の言葉を用いた二重表現
間違えて使われることが多いのが、同じ意味の言葉を用いた二重表現です。
これは、シンプルに言葉の意味を理解していないから起きてしまうケースで、大きく次の3つに分けられます。
・捺印を押す
・被害を被る
・まず最初
・満面の笑顔
・元旦の朝
・思いがけないハプニング
同じ意味の言葉を用いた二重表現を避けるには、一つひとつの言葉の意味を理解し、覚えるほかに方法はありません。日常的に会話や文章で使っていると思った方は、これから知識を取り入れていきましょう。
カタカナ英語で二重表現になっている言葉の有名どころは「チャイティー」。
「チャイ」とはそもそもヒンディー語で「お茶」という意味です。
そして「ティー」は英語で「お茶」の意味ですので、チャイとティーはまったく同じ意味、日本語で「お茶お茶」と言っている訳です。
明確に冗長的な表現
二重表現ではないものの、冗長表現で読者に読みにくさを感じさせる言葉があります。
その中でも「〜することができる」は使う人が断トツの冗長表現です。
誰でも一度は使った経験があるのではないでしょうか。
会話で使用することが比較的多いため、文章でも違和感なく使用しているケースが多いです。
「〜することが」は文章が冗長になるため、読み進めるのにダルくなってしまい読者は離脱します。途中で離脱した読者が戻ってくることは期待できません。
内容に無関係な言葉や表現を入れたり、丁寧に説明しようとしたりして文章が長くなっている状態を指します。
一文一文が長くなることで、意図が伝わりにくくなったり、意味がわかりづらくなってしまいます。
そのようにならないためにも、必要ない=ムダな表現や文章は削除しましょう。
特にブログやnote、ビジネス文書は文字数の縛りが緩いため、ムダな表現を削る必要性が薄くなります。そのような場合、冗長表現が増えてしまうことがありますので注意してください。
長い文章はデメリットしかありませんので、簡潔でわかりやすい文章を心がけてください。「〜することができる」は「〜できる」に言い換えられるので、文章を書くときは常に意識しましょう。
・使用することができる
・運転することができる
・調理することができる
・推測することができる
・連絡することができる
使われることが多い二重表現【一覧表】
前のセクションで、二重表現の種類については例文を通してご理解いただけたかと思います。
ここまで読んで「他にどのような二重表現があるのか」気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで代表的な二重表現を50個ピックアップしました。
「適切な表現例」と「どこが二重表現に掛かっているか」の説明付きです。
文章作成で困ったときに活用していただければ幸いです。
頭痛が痛い
『痛』が重複している『~痛』=~が痛いという意味を持つ
あらかじめ予約する
あらかじめ(予め)=まえもってという意味を持つ
予約=まえもって約束するという意味を持つ
後で後悔する
『後』が重複している
馬から落馬する
『馬』が重複している
返事を返す
『返』が重複している
捺印を押す
捺印=印鑑を押すという意味を持つ
被害を被る
『被』が重複している
満天の星空
天=『空』と同じ意味を持つ
満面の笑顔
面=『顔』と同じ意味を持つ
元旦の朝
元旦=元日の朝という意味を持つ
今朝の朝刊
『朝』が重複している
はっきりと明言する
明言する=はっきりと言うという意味を持つ
思いがけないハプニング
ハプニング=『思いがけない』という意味の英語
昼食のランチ
ランチ=『昼食』という意味の英語
旅行に行く
『行』が重複している
防犯対策
防犯/犯罪対策
過半数を超える
過半数=半数を超えるという意味を持つ
永久に不滅
『不』が動作や状態を打ち消す意味を持つ
不滅=滅びることがない、つまり永久に滅びないという意味
製造メーカー
メーカー=『製造業者』という意味の英語
車に乗車(降車)する
『車』が重複している
犯罪を犯す
犯罪=罪を犯すという意味を持つ
日本に来日する
来日=日本に来るという意味を持つ
アメリカへ渡米する
米=『アメリカ』という意味の略語
違和感を感じる
『感』が重複している
『○○感』=○○を感じるという意味を持つ
料理を作る
料理=ごはんを作るという意味を持つ
挙式を挙げる
『挙』が重複している
最も最適
『最』が重複している
まったく皆無
皆=『まったく』と同じ意味を持つ
尽力を尽くす
『尽』が重複している
およそ~程度
およそ=『程度』と同じ意味を持つ
マイナス~円引き
マイナス=『引く/減らす』という意味の英語
プラス~%増量
プラス=『追加/増える』という意味の英語
限定~点限り
限定=『限り』と同じ意味を持つ
炎天下のもと(中)
下=『もと』と同じ意味を持つ
炎天のもとだから「炎天下」なので『中』と付けるのはおかしい
期待して待つ
期待=『待つ』と同じ意味を持つ
『待』が重複している
まず最初
ます=『最初』と同じ意味を持つ
今の現状は
現状=『今』と同じ意味を持つ
内定が決まる
内定=決まるという意味を持つ
色が変色する
『色』が重複している
お金を入金する
『金』が重複している
収入が入る
『入』が重複している
連日暑い日が続く
連日=日が続くという意味を持つ
伝言を伝える
『伝』が重複している
伝言=伝えるという意味を持つ
雪辱を晴らす
雪辱=『晴らす』と同じ意味を持つ
途中で中断する
中断=途中という意味を持つ
射程距離
射程=距離という意味を持つ
お身体、ご自愛ください
自愛=自分の身体を大切にしてくださいという意味を持つ
断トツ一位
断然トップの略語
途中で中断する
中断=途中という意味を持つ
いまだに未解決
未=いまだ(未だ)と同じ意味を持つ
『未』が重複している
最後の切り札
切り札=最後という意味を持つ
「知らないうちに使っていた」「これも二重表現なの?」という言葉が、いくつかあったのではないでしょうか。
恥ずかしながら、筆者も過去によく間違って使っていた表現がたくさんあります。油断してしまうと、今でもつい使ってしまいそうになるので、改めて心がけようと思います。
今回挙げたのは、あくまで一例です。
この一覧に記載されている以外にも二重表現は多く存在します。
「どこが二重表現に掛かっているのか」を参考にして、普段使用している言葉が二重表現でないかチェックしてみるのもおススメです。
二重表現を使わないための対策
これまでのセクションでもお伝えしましたが、二重表現は冗長的な言い回しであるため使用は控えるべきです。
文章を書くことが生業のライターはもちろん、仕事で文章を書く機会があるビジネスマン、論文・レポートを書く学生にも同じことが言えます。
もちろん、つい間違えて使ってしまうこともあるでしょうが、表現の修正は「いきなり直る」ものではありません。普段から意識をして実践していくことが重要です。
ここからは、二重表現を文中で使わないようにするための対策法を3つご紹介します
- 同じ字が近くにある場合は注意する
- 語彙力を鍛える
- 声に出して読み直す
同じ字が近くにある場合は注意する
使われることが多い二重表現【一覧】を見て気づいた方もいるのではないでしょうか。
以下のように同じ漢字が近くにある場合は、二重表現になっている可能性が高いです。
- 「頭痛が痛い」は『痛』の文字
- 「後で後悔する」は『後』の文字
もともと『頭痛』は「頭が痛い」
『後悔』は「後で悔いる」を一つの単語にした熟語です。
二重表現を避けるためにも、似た感じを重ねて使用していないか確認を怠らないようにしましょう。
語彙力を鍛える
正しい言葉の意味を知らないと、二重表現には気づけません。
しかし、こればかりは自らの語彙力を鍛えることが一番の対策となります。
そのため、言葉の引き出しを増やすためにも、インプット(覚える)とアウトプット(書く・話す)を繰り返しましょう。
インプットには文章(本、新聞など)を読むことがオススメです。
特に本や新聞は「正しくてわかりやすい文章」にするために「校正」と「校閲」が行われています。
誤字脱字、文章の誤り、文法の使い方などを確認して修正する作業を指します。
(例文)
誤:誕生日プレゼントを送ると、彼女は満面の笑顔を浮かべた。
正:誕生日プレゼントを贈ると、彼女は満面の笑みを浮かべた。
送る→物を相手に届ける意味を持つ贈る→感謝や祝福などの気持ちを込めて、物を与える意味を持つこの場合は、プレゼントなので「贈る」が正しい表現です。
満面の笑顔→満面の笑み面=『顔』と同じ意味を持つため二重表現です。
文章の内容に誤りがないかを確認して修正する作業を指します。
(例文)
誤:あべのハルカスの高さは303.0mで日本で一番高いビルである。
正:あべのハルカスの高さは300.0mで日本で二番目に高いビルである。
あべのハルカスの高さは300.0mが正しく、2023年6月までは日本で一番高いビルでした。2023年6月に麻布台ヒルズ森JPタワー(高さ330.0m)が竣工して、こちらが日本一高いビルになりましたので、あべのハルカスが日本で一番高いビルという内容は誤りとなります。
誤植や間違った内容を書いていないか厳しいチェックが入って読者の手に届きます。
特に新聞は字数の制約があるので、冗長な文章にならないようムダな文章や表現は削除されているため、語彙力だけでなく文章力も鍛えることができます。
しかし、正しい日本語を覚えても日常的に使用しないと、自分の血肉にはなりません。
インプットした知識は、必ずアウトプットしてください!
会話の中で常に意識する、文章(メモ・メール・LINEなど)に書き出して日頃から身につける訓練をしていきましょう。
インプットとアウトプットを継続していけば、始めた頃との違いに驚くはずです。焦らずコツコツと習慣化するのが大切です。
声に出して読み直す
書き終わった文章を目で読み直す方は多いと思います。
ここで満足せず、ぜひ声に出して読み直してください。
目で追うよりも声に出して読み直したほうが、リズム感や言葉の間違いに気づきやすいです。また、声に出して読むことで頭の中が整理されます。
例えば、商品の取扱説明書も、目で読むより声に出して読むことで、内容が理解できたという経験をした方もいるのではないでしょうか。
自分の書いた文章を声に出して読んでみて、スラスラと読めないところがあれば、何かしら問題がひそんでいる可能性があります。
二重表現の確認はもちろん、接続詞の使い方が間違っていたり、同じ表現が連続していたり、誤字脱字していたりなどのミスに気づけます。
声に出して読むという簡単なことで対策になりますので、面倒くさがらずに取り組んでみてください。
言葉の意味を正しく理解しましょう!
本記事では、二重表現についての基礎知識や、その種類、使わないための対策についてお伝えしてきました。
二重表現は、会話で知らないうちに使っていることが多く、自分自身だと中々気づきにくい表現です。
もしかすると、使っている言葉が二重表現だと知らない場合があります。
そのため、指摘されないといつまでも誤った表現だと気づかないため、二重表現は非常に厄介です。
さらに厄介なのが、本来は二重表現にもかかわらず、容認されてて一般的な使い方として定着した表現があることです。
容認されたものとしては「故障中」「遺産を遺す」「上を見上げる」などが代表例として挙げられます。
「話し言葉」で違和感がない二重表現は、指摘する人も少ない(そもそも誤った表現と気づいていない)ために、容認されやすくなるのです。
二重表現は文法として明確に「誤用」と設定されている訳ではありません。
そのため気になる方もいれば、気にしない方もいます。
とはいえ、文章を書くからには、相手がわかりやすいように正しい日本語で、ストレスなく読めるように書くことが大切です。
二重表現を気にする方に「間違っている文章だ!」と思われないためにも、使用しないことが賢明です。
使用しないためには、言葉が持つ「正しい意味」を理解して書けるようになっていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。