
「時」と「とき」は、漢字表記とひらがな表記では意味が異なります。
しかし「使い分け方がいまいち分からない…」という方も少なくはないはず。
実際に本記事を読んでいる方の中には…
- 失礼があってはならないビジネスシーンでのメール作成を任された
- LINEで間違えた文章を送りたくない
- 漢字とひらがなのどちらが正しいのか分からない
…というような状況が起きて悩まされているのではないかなと思います。
そこで本記事では、漢字の「時」とひらがなの「とき」の違いを分かりやすく解説していきます。
正しい日本語の使い方を習得するためにも、しっかりと学んでいきましょう。

「時(漢字)」と「とき(ひらがな)」の意味と使い分け
- 何かあったときは、連絡してください。
- 何かあった時は、連絡してください。
上記の例文の場合、日本語文法においてはひらがな表記の「あったとき」が正解です。
ただ、せっかくなら『なぜひらがなが正解なのか?』理由まで答えられるようにしておきませんか?
本セクションでは「時」と「とき」の使い方、表記ごとの意味などを例文付きで解説していきます。
「時」の使い方【例文付き】
漢字表記の「時」は、特定の時間・時代・年代・時期・時刻…を表す言葉です。
- 「時」は名詞である
- 時間や時代、時期を示す言葉
- 漢字表記の「時」は英語で【time】のこと
以上を踏まえて、例文を見てみましょう。
表記 | 例文 |
---|---|
時(名詞) | ・時が経つのは早い ・あの日、あの時、あの場所で ・安くなっている今が買い時だろう ・夕暮れ時、たそがれていると… ・あの時に流行った彼は時の人になった |
例文のように、時間の流れや時刻そのもの、時間の流れのなかの”ある一点”を指し示す場合は、漢字の「時」を使います。
「とき(ひらがな)」の使い方【例文付き】
ひらがな表記の「とき」は、動作や状況を表す『形容名詞』です。
文章の中で「この場合〜…」と、前節の文章を説明をする際に用いられる語句がありますが、ひらがなの「とき」には同様の意味をもつ性質があります。
そのため、この場合と言い換えられる際には、ひらがなの「とき」を使うようにしましょう!
- 「とき」は形容名詞である
- 不特定の時や状況、場面を示す言葉
- ひらがな表記の「とき」は英語で【when】のこと
- 〜の場合…に言い換えられる「とき」はひらがなを使う
以上を踏まえて、例文を見てみましょう。
表記 | 例文 |
---|---|
とき(形容名詞) | ・何かあったときは相談してください。 ・雨天のときは中止にします。 ・分からないときだけ答えを見る。 ・彼は自分の都合が良いときに電話してくる。 ・いざというときは助けるよ。 |
公用文では「時」と「とき」を使い分ける

声に出せば同音の「時」と「とき」ですが、公用文においての使い分け方は以下のように定められています。
【 公用文とは? 】
- 国や公共団体が出す文書や法令などに用いる文章のこと。
- 告示や通知、統計資料、報道発表資料などを指す。
- 一般の企業で書く文章や、学校教育で習う文章、新聞などの出版物とは表記が異なる。
名詞:時
過去から現在、現在から未来へと、一方的また連続的に流れていくと考えられているもの。
物事の変化・運動によって認識される。時間。「—が流れる」「—がたつ」「—を刻む」
引用:goo辞書:とき【時】の解説
形容名詞:とき
事→こと 時→とき 所・処△→ところ 物・者→もの
(ただし、「事は重大である」「法律の定める年齢に達した時」「家を建てる所」「所持する物」「裁判所の指定した者」のように、具体的に特定できる対象がある場合には漢字で書く。)中△・内→うち(「…のうち」等。「内に秘める」などは漢字で書く。)
為△→ため
通り→とおり(「通知のとおり」「思ったとおり」等。「大通り」などは漢字で書く。)
故→ゆえ(「それゆえ…」等。「故あって」などは漢字で書く。)
様→よう(「このような…」等)
訳→わけ(「そうするわけにはいかない」等。「訳あって」などは漢字で書く。)引用:文化審議会国語分科会:新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)13P
要するに『時間や時期などの物理的な”時”以外は、ひらがなで表記してください』という認識で問題ありません。
「時」と「とき」使い分けのポイント

「時」と「とき」を使い分けるポイントのひとつに【~の場合】に言い換えられるか?があげられます。
言い換えられるのであれば「とき」を、不自然な日本語となってしまうのであれば「時」を使うのが最も簡単な方法です。
例文を見てみましょう。
陽射しが強いときは、日傘を差す。
↓「とき」を場合に言い換えると…
陽射しが強い場合は、日傘を差す。
上記のように【場合】と言い換えても日本語として意味がとおるのであれば、ひらがなで表記します。
漢字表記の「時」を言い換えるとどうなるか、こちらも例文で確認してみましょう。
どんな困難も、時が解決してくれる。
↓「時」を『~の場合』に置き換えると日本語として不自然になる…
どんな困難も、場合が解決してくれる。
時間や時の流れを【場合】に言い換えると、ぎこちなく意味の分かりづらい文章となってしまうため、漢字表記の「時」を使って指し示すのが正解となるのです。
使い分ける際の判断材料として、ぜひ活用してください。
「時」「とき」の理解度チェック問題
「時」と「とき」の意味や使い分け方はイメージできたでしょうか…?
正しい理解ができているか、以下の問題で確認しておきましょう!
Q. 次の【?】に当てはまる語句は「時・とき」のどちらでしょう?
①【?】と場合による。
②3代将軍、徳川家光の【?】に起こった事件。
③テレビを見る【?】は、画面から離れて見ましょう。
④【?】は金なり。
⑤後戻りした【?】、得るものはない。
⑥夕食の【?】に、友達が来た。
⑦ピンチの【?】には、すぐに駆け付ける。
⑧母が若かった【?】の写真。
⑨車に乗る【?】は、事故に十分注意してください。
⑩いざという【?】。
どちらか迷ったら【?】内に『場合』を当てはめてみてください。
正解は…
・
・
・
①【時】と場合による。
②3代将軍、徳川家光の【時】に起こった事件。
③テレビを見る【とき】は、画面から離れて見ましょう。
→テレビを見る「場合は」でも成り立つため”形容名詞”
④【時】は金なり。
⑤後戻りした【とき】、得るものはない。
→後戻りした「場合」
⑥夕食の【時】に、友達が来た。
⑦ピンチの【とき】には、すぐに駆け付ける。
→ピンチの「場合」には
⑧母が若かった【時】の写真。
⑨車に乗る【とき】は、事故に十分注意してください。
→車に乗る「場合」は
⑩いざという【とき】。
→いざという「場合」
全問正解だった方、漢字とひらがなの使い分けはバッチリですね!
「その時」と「そのとき」の使い分け

ここまでお読みくださっている方は、単体での「時」と「とき」の使い分けはマスターしたと言っても過言ではありません!
しかし「その時・そのとき」や「あの時・あのとき」など、こそあど言葉1が加わった使い分けとなるといかがでしょう…。
少し難しく感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
※1 こそあど言葉:「これ・それ・あれ・どれ」などの指示語の頭文字を取った言葉
本セクションでは、こそあど言葉が加わった「時・とき」の違いを詳しく見ていきます…!
「時・とき」+「こそあど言葉」の使い分け
結論からお伝えすると、こそあど言葉が含まれていても原則としてこれまでと同じです!
「その時」と、漢字の場合は時間を指し示すときに使い、【~の場合】で言い換えられるのであれば「そのとき」と、ひらがなで表記します。
そのようなときには、どうしたらいいですか?
「そのようなとき」を、その場合に言い換えると…
そのような”場合”には、どうしたらいいですか?
と、ここまでお伝えしてきた使い分けの方法と変わらないので安心してください!
ちなみに「その時」と漢字で表記するのは以下のような場面です。
家を出ようとしたその時、彼は言った。
「その時」を、その場合に言い換えると…
誤:家を出ようとしたその場合、彼は言った。
やはり日本語として不自然になってしまいました。笑
そのため、漢字の「時」が正しいということになるのです。
例文のように【~の場合】に言い換えて自然か、はたまた不自然か…
確認しながら使い分けていくことをオススメします!
こそあど言葉の加わった「時」と「とき」の例文【一覧表】
使い分けの難しい「そんな時」や「そんなとき」を筆頭に、こそあど言葉を含んだ例文を一覧表にしました。
表記の判断に迷った際は、ぜひ参考にしてください。
表記 | 例文 |
---|---|
この・こんな | ・この時は、まだ学生でした。 ・以前会ったのも雪が降るこんな時だった。 ・このときの、計算方式は分かりますか? ・こんなとき、君ならどうする? |
その・そんな | ・その時の様子。 ・僕にもそんな時があったな。 ・そのときは、相談してください。 ・寝ても疲れがとれない!そんなときは…! |
あの・あんな | ・あの時、二人は出会った。 ・あんな時を、よく生き抜いてきたな。 ・あのときは、逃げるしかなかった。 ・悩むのはいつも、あんなときだ。 |
どの・どんな | ・次の4つのうち、どのときか? ・どんなときも、自分らしく。 |
「時」と「とき」迷ったときは・・・?

使い分け方や意味は分かっていても、どちらで表記すべきか迷ってしまう場面もあるでしょう。
そのような場合には、ひらがなの「とき」を使うことが推奨されています。
例:学校に行く時。→学校に行くとき。
例文では「学校に行く時間」とも「学校に行く場合」とも解釈できますが、どちらもれっきとした日本語であることには間違いありません。
また、以下のように漢字の「時」をひらがなで表記することで、読者は分かりやすい文章だと感じるでしょう。
「時」を「とき」にすると…
- 振り向いたその時。 → 振り向いたそのとき。
- 時に厳しく、時に優しく。 → ときに厳しく、ときに優しく。
- 気付いた時にはもう遅い。 → 気付いたときにはもう遅い。
- 中学生の時に流行った曲。 → 中学生のときに流行った曲。
- この時を待っていた。 → このときを待っていた。
漢字の「時」をひらがなで表記しても、日本語的にも見た目的にも違和感のない文章になっています。
迷ったり悩んだりしたら『ひらがなで表記する』と覚えておきましょう。

まとめ:「時」と「とき」の意味を理解して正しく使い分けしよう!

どちらを使っても同じに思える「時」と「とき」ですが、それぞれの意味を知ると「いままで間違えていた!」と思った方も多かったのではないでしょうか?
スマホやPCの便利な自動変換機能や予測入力に頼ってしまい、ついつい無意識のまま書き進めてしまうことは筆者も経験があります…笑
ただ、こういった小さな言葉の使い方1つひとつが、相手に齟齬なく伝える文章を書くためには欠かせない要素です。
そして本記事が、あなたの文章を作成するうえでの悩みの1つでも解消できていれば嬉しいなと思います…。
本メディアサイトでは他にもこういった文章作成をするうえでのノウハウを公開しておりますので、他の記事もぜひ読んでいただければ幸いです…!
それでは、最後まで読んでくださりありがとうございました!
よくある質問
ここでは「時」と「とき」の違いや文字表記について、よく見かける質問をまとめてみました。
使い分けに迷ったときや正しく表記できているか不安なとき、そのほか似たようなお悩みがある方はぜひ参考にしてください。
「とき」と「際(さい)」の違いってなんですか?
「とき」と「際」は、基本的には同じ意味をもった言葉です。
”「とき」を丁寧語に言い換えたのが「際」である”といった認識で問題ありませんが、もう少し詳しく解説していきます。
- 「とき」と比較し、よりかしこまった場面で用いられる。
- 「とき」より、相手に丁寧な印象を与える。
- 「お越しになられた際は」など、これから起こる未来のことを仮定した表現方法。
- 「実践する際は」→「実践する機会があれば」のように【機会】に置き換えることができる。
以上が「とき」と「際」の大きな違いです。
普段使いしやすい「とき」に対して、目上の方やお客様、不特定多数の読者に向けた記事などでも「際」は広く活用されます。
とはいえ、ビジネスマナーにおいて「時」を使うのは”絶対にNG”ということはありません。
大切なのはどちらで表記したほうが分かりやすく、相手に伝わりやすいか?です。
自分が伝えたいことが、より相手に伝わる表記で使い分けていきましょう。
「時」を「頃」と言い換えても大丈夫ですか?
結論、時と場合によります…。
というのも「時」と「頃」はどちらも時間を指し示しますが、「時」と比較して「頃」は、常に修飾語を伴う必要がある点です。
また、過去や現在を表す「時」と比較すると「頃」は過去を表現する場面で使われる傾向にあるのです。
表記 | 例文 |
---|---|
頃 | 子どもの頃。 あの頃から、どれだけ経っただろう。 出会って間もない頃。 今頃気付いても遅い。 夏が終わる頃の思い出。 |
例文のように、過去を指し示す場合は「頃」で表現するのも問題ありませんが、無理に言い換えて不自然な日本語とならないように注意しましょう。
「時」「とき」のほかに使い分けを間違えやすい言葉はありますか?
表記の使い分けが難しい言葉には、以下のようなものがあります。
表記 | 例文 |
---|---|
事(名詞) | ・深く考え事をする。 ・上手に物事を進める。 ・事細かく書かれた記事。 |
表記 | 例文 |
---|---|
こと(形容名詞) | ・漢字を読むことができる。 ・余計なことは言わないでおこう。 ・こんなことになるとは思わなかった。 |
表記 | 例文 |
---|---|
所(位置・場所) | ・至る所にゴミが落ちている。 ・むかしむかし、ある所に…。 ・所々に傷がついている。 |
表記 | 例文 |
---|---|
ところ(名詞・接続助詞) | ・よく見たところ、何もなかった ・今のところ、異常ありません。 ・いくら考えたところで状況は変わらない |
表記 | 例文 |
---|---|
上(物理的) | ・エレベーターで上の階へ行く。 ・机の上に石がある。 ・雲の上の存在。 |
表記 | 例文 |
---|---|
うえ(補助動詞) | ・ご確認のうえ、お越しください。 ・危険は承知のうえだ。 ・実際に体験したうえで伝えます。 |
ちなみにPC作業の場合は、画面上で「CtrlとF」を同時に押すと、いままで入力した文字を抽出することが出来ます。
「とき」が「時」になっていないか?など、最終チェックの効率化も図れますので、ぜひ活用してください。
クライアントの指示どおりに「その時」と表記しましたが使い方が違うと思います。
こちらの質問はWebライター、コピーライターの仕事で、制作物を執筆する際によく見かける質問です。
ライター業に従事している方に向けた内容になりますが、基本的に漢字とひらがなの使い分けはクライアントの指示に従いましょう。
具体的な指示がなければ従来どおりの使い分けで表記します。
どうしても日本語として不自然と感じる場合はクライアントにその旨を伝え、指示を仰いでみてもいいかもしれません。
表記を気にしすぎて漢字ばかりの文章になってしまいました…。
読みやすさや分かりやすさを優先するあまり、漢字とひらがなのバランスがとれていない文章になってしまうこともあるでしょう。
理想的な表記のバランスは【ひらがな7:漢字2:カナ英数1】といわれています。
- その時起きた事件の詳細を、事細かく話した。
→そのとき起きた事件の詳細を、こと細かく話した。
- 訳あって、時を忘れる程、考え事をした。
→訳あって、時を忘れるほど、考えごとをした。
上記の例文のように「時」や「事」などの漢字がどうしても多くなってしまう場合は、一部をひらがな表記にしてバランスの良い文章に書き換えておきましょう。
「その時に」や「そのときに」など、メールや文章を作成する際に迷ってしまうのが漢字表記の「時」とひらがな表記の「とき」の使い分けです。
口にすると同音で、日常会話では気にかけることの少ない「時」と「とき」ですが、漢字とひらがなで使い分けのポイントやルールなどは存在するのでしょうか?
本記事では「時」と「とき」の違いを分かりやすく解説していきます。
正しい日本語の使い方を習得するためにも、しっかりと学んでいきましょう。
