あなたは人間が瞬間的に記憶できる情報の数が7個程度しかないということを知っていますか?
認知心理学では、この数のことを『マジカルナンバー』と呼んでいます。
「30代が読むべき3冊」「一度は行きたいパワースポット5選」
…など、このようなタイトルをSNSで見かけたことがあると思います。
これらはまさしく『マジカルナンバー』をコピーライティングに活用している例です。
マジカルナンバーを使った具体的な数字を盛り込むことで、相手が思わずクリックしてしまうタイトルや文章を作成することができるのです。
この他にも、私たちの身の回りではマジカルナンバーの心理効果を活用している場面が多くあります。
本記事では、マジカルナンバーの実例やコピーライティングに活用する方法などをお伝えします。
「マジカルナンバーがどんな効果があるか知りたい」
「マジカルナンバーをコピーライティングに活かしたい」
と考えている方はぜひ参考にしてみてください。
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マジカルナンバーとは?
マジカルナンバーとは、アメリカの心理学者ジョージ・ミラー氏が発表した心理学で、人間が瞬時に覚えることができる情報の数をのことを指します。
ミラー氏の論文で「日常的な事柄を一度聞いた直後に再生する場合、短期記憶に保持できるキャパシティーは”7±2”個である」と発表されました。
これを「マジカルナンバー7±2」と言います。
短期記憶とは『10秒~15秒』長くても”数時間程度の比較的短い時間の記憶”のことを指します。
例えば、会社で取引先から電話がかかってきた時、相手の名前や要件を記憶して担当者に取りつぐといった場面。
このような場合には、意識していないうちに短期記憶を使っているのです。
では、”7±2”個とはどういうものを表しているのでしょうか。
”7±2”個は、「チャンク」と言われるグループ分けした情報の数のことを言います。
「password」という言葉で例えると「p」「a」「s」「s」「w」「o」「r」「d」の場合は8つのチャンク。「pass」「word」の場合は2つのチャンク「password」の場合は1つのチャンクとなります。
「pass」と「word」のような形に分けた時に7個前後のチャンクなら覚えることができるというのが、マジカルナンバーの考え方です。
数字の”7”と言えば、七味唐辛子、ラッキーセブン、曜日、七草がゆなど、私たちの周りを少し見渡しただけでも”7”に関係しているものが多くあります。
このように、数字の”7”は我々の日常生活で馴染み深いため、7つのかたまりが覚えやすいといった理論は納得できるのではないでしょうか。
また、2001年にはネルソン・コーワン氏が新たに、短期記憶に保持できるキャパシティは”4±1”であると発表しました。
『人間が瞬間的に記憶できる数は4チャンク前後』という新しい考え方です。
これを“マジカルナンバー4±1”と言います。
マジカルナンバーが7から4に変化した理由は、7についての論文が発表された頃より我々が接する情報量が格段に増えたことが挙げられます。
そのため、近年は”4”を使用する方が妥当だとする考えが主流のようです。
さらに、スマートフォンなどの発達により情報を手軽に記録できるようになったため、マジカルナンバーの最小の数にあたる”3”が最も有効的だという意見もあります。
ただ、ここまで読んだ人の中には「マジカルナンバーは結局何の数字を使えばいいのだろう」と悩んでしまう人もいるかもしれません。
そこで次のセクションでは、どの数字がどんな時に使われているのか紹介していますので見ていきましょう。
マジカルナンバーが作用している実例5選
あなたが普段何気なく触れている事柄でも、マジカルナンバーの心理効果はいろいろなシーンで作用しています。
実際に効果が見える実例を知ると、とても身近な存在なのだということに驚くかもしれません。
では、どんな場面で効果を発揮しているのでしょうか。
この項では、マジカルナンバーが実際の場面で効果的に作用している例を5つ紹介します。
【誰もが目にするマジカルナンバー】電話番号・郵便番号
マジカルナンバーの実用例で誰もが目にしたことがあるものと言えば、電話番号や郵便番号です。
電話番号は10桁または11桁、郵便番号は7桁のランダムな数字から成り立っています。
例えば、携帯電話番号「090〇〇〇〇〇〇〇〇」という11桁の数字を見ても、瞬時に記憶することは難しく感じると思います。
では、「090-〇〇〇〇-〇〇〇〇」と間にハイフンが入っていたらどう感じますか?
先ほどの「090〇〇〇〇〇〇〇〇」に比べ、格段に見やすく感じるのではないでしょうか。
郵便番号も同様で、「100〇〇〇〇」という7桁の数字の羅列より「100‐〇〇〇〇」とハイフンが入ることによって覚えやすくなります。
これはハイフンを使うことで、3つまたは2つのチャンク(グループ)で記憶することができるため、覚えやすく感じるのです。
マジカルナンバーを意識してチャンクを分ければ、相手に電話番号を伝える時にも伝わりやすくなります。
【いつも見ているマジカルナンバー】スマートフォンアプリのメニュー数
マジカルナンバーは、スマートフォンのアプリ画面でも使われています。
あなたがよく使っているスマートフォンのアプリ画面を見ると、画面の下部分にあるメニューの数は、ほとんどが4つか5つの表示になっていることに気づくでしょう。
例えば、QRコード決済サービス『PayPay』の場合、左から「ホーム」「近くのお店」「支払う」「ウォレット」「アカウント」というように5つのメニューが並んでいます。
InstagramやLINE、YouTubeなども同様に、メニュー数は4つから5つで表示されています。
これらは単なる偶然ではなく、選択肢をあらかじめ4〜5つにしぼり、アプリを使用するユーザーが操作しやすいように作られているのです。
このように初めて利用するユーザーにストレスを感じさせない要素のひとつとして、マジカルナンバーが意識して取り入れられているといえるでしょう。
【マジカルナンバーでアクセスも簡単に】WEBページのメインメニュー
マジカルナンバーは、WEBページのメインメニューでも活用されています。
ちなみにここで言う『メインメニュー』とは、一般的にWEBページの上部に表示されているリンクのことです。
気になるホームページをいくつか閲覧してみてください。
ページの上部には「ホーム」「会社概要」「商品紹介」「採用情報」「お知らせ」などと表示されていると思います。
メインメニューが5つ~7つで表示されているWEBページが多いことにも気づくことでしょう。
マジカルナンバーを使ってメインメニューに表示する数をしぼり、ユーザーが求めている情報が一目でわかるようになってるのです。
【無意識に記憶に残るマジカルナンバー】店の看板
店舗の看板などもマジカルナンバーが使われていることがあります。
例えば、花屋の看板に「アレンジ」「仏花」「宅配」と書かれている場合、このお店は花束の他にアレンジも作ってもらえて、宅配も可能なのだとわかります。
あなたが誰かに花を届けようと思った時、この看板を目にしていれば、たとえそのお店に行ったことがなくても、花の配達をしてくれるお店だと思い出すのではないでしょうか。
このように、店舗の看板も店のサービスをすべて提示するのではなく、3つに絞って提示することで、目にした人の記憶に残るように工夫されているのです。
今まで何気なく見ていたお店の看板も、マジカルナンバーの視点から見てみると見え方が変わってくるかもしれません。
【心をつかむマジカルナンバー】プレゼンテーション
マジカルナンバーはプレゼンテーション場面でも多く活用されています。
特に有名な例としては、Appleの共同創業者『スティーブ・ジョブズ』氏が初めてiPhoneを公開した際のプレゼンテーション。
ジョブズ氏は、iPhoneの特徴について「タッチ操作iPad・革命的携帯電話・画期的ネット操作」と説明しました。
そして、この3つが1つになったデバイスだと発表したのです。
もしこの時、iPhoneについて「電話ができて、メールもできて、インターネットにも接続できて、音楽も聴けて、さらに、タッチパネル操作で使いやすい」と、すべての特徴を挙げられていたとしたら、聞いている側はどんな機能があるのか理解できなかったでしょう。
マジカルナンバーを使ったプレゼンテーションによって、多くの人にiPhoneがどういうものであるかを理解させることに成功したのです。
このようにマジカルナンバーを活用することで、相手がこちらの意図を理解しやすく、記憶にも残るプレゼンテーションを行うことが可能となります。
マジカルナンバーをコピーライティングに活用する3つの方法
ここまでは、マジカルナンバーの効果が作用している実例をお伝えしました。
マジカルナンバーの心理効果は、文章を取り扱う仕事『コピーライター』の現場でも活用されています。
ただ、コピーライターとして活動を始めたばかりの人にとっては
「数字はどれを使えばいいのか」
「どう使えば効果が出るのか」
ということが気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本セクションでは、マジカルナンバーをコピーライターが使うスキル”コピーライティング”に活用する具体的な方法を3つ紹介していきます。
コピーライターの方だけでなく「マジカルナンバーを自分の文章に取り入れてみたい!」と考えている人はぜひ参考にしてみてください。
コピーライティングに活用する方法① 情報をチャンク化する
マジカルナンバーを効果的に活用するためには、情報をチャンク化することが大切になります。
チャンク化とは、情報をかたまりごとのグループに分けることです。
前述したとおり、マジカルナンバー7±2や4±1はチャンクの数を表しています。
チャンク化を行うのは、マジカルナンバーの効果を活かす上で非常に重要です。
例えば、あなたが買い物のメモを渡された時、どちらのほうが見やすいでしょうか。
キャベツ、じゃがいも、レタス、人参、玉ねぎ、トマト、カレールー、トイレットペーパー
洗剤、ゴミ袋
◆カレーの材料
・じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、カレールー
◆サラダの材料
・キャベツ、レタス、トマト
◆日用品
・トイレットペーパー、洗剤、ゴミ袋
『メモA』の場合は、必要な物が羅列してあるだけなので読みにくく感じると思います。
一方『メモB』の場合、「カレーの材料」「サラダの材料」「雑貨」と似たもの同士のかたまりに分けたことによって、瞬間的に何の材料を買う必要があるのか分かりやすくなっていると感じませんか?
こういったメモ1つ取っても、3つのグループに分ける(チャンク化)ことで、情報が整理されて読みやすく記憶に残る文章になります。
例で挙げたメモの場合は『自分用の文章』ではありますが、普段からマジカルナンバーを意識して文章を作成することにより『読み手に伝えるための文章』を書く際にも活用することが可能です。
コピーライティングに活用する方法② マジカルナンバーを“あえて”外す
商品やサービスの印象をより良く表現したい場合、あえてマジカルナンバー”7±2、4±1を外し、より多くの魅力を提示することでメリットが多くあると感じさせる応用テクニック。
というのも、人はマジカルナンバー“7±2”よりも多い数の情報を得ると、瞬間的に記憶することができなくなり、盲目的に多くの情報があると感じるため、
この商品を買えば、たくさんの良いことがある」という印象を与えることができます。
身近な例だと『野菜ジュース』や『マルチサプリメント』といった健康商品の説明欄。
実際に、これら商品の有効成分を理解しないまま購入に至った経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
(筆者も健康食品を購入する場面では『多くの成分が入っている=良い商品』と感じて購入した経験が結構あります…笑)
ただ、あまりこのテクニックを乱用すると魅力が伝わりきらないため、注意が必要ですが…
健康食品のみならず、様々な商品やサービスで活用できるテクニックとして押さえておきましょう。
コピーライティングに活用する方法③ 情報を限定する
マジカルナンバーの数に合わせて情報を限定すると、相手に伝わりやすい文章を作成することができます。
前セクションでは『マジカルナンバーの数をあえて外す』ことについて述べていますが、それはあくまで多くのメリットがあると見せるためのテクニックに過ぎません。
文章で何かを伝える場面やコピーライティングが必要となる場面で実際に求められるのは、
「相手が文章を読みたい」と思わせることです。
そのうえで、特に相手にとって初めての事柄を提示する場合は、マジカルナンバー”4±1”にまとめると伝わりやすくなります。
例えば
- 「痩せたいあなた必見、普段のダイエットをより効果的にする10の秘訣」
- 「痩せたいあなた必見、普段のダイエットをより効果的にする3つの秘訣」
このようなタイトルのWeb記事があった時、どちらを読みたいと感じるでしょうか?
たしかに「10の秘訣」の記事は、多くの情報を得ることができるかも知れませんが、全てのノウハウを一度に吸収することは難しいと思う方がいらっしゃいます。
一方「3つの秘訣」の記事は「一度読んだだけでも覚えられそう」「3つだけなら実践してみよう」と感じる人が多くいらっしゃいます。
このように、提供する情報をあえて限定することによって、読み手の興味を惹きつけることができるのがマジカルナンバーの揺るぎない効果。
相手に興味を持たせることができれば、記事を読んでもらえる可能性も高くなるでしょう。
以上の3点がマジカルナンバーをコピーライティングに活用する具体的な方法です。
お気づきの方ももういらっしゃるかもしれませんが、実は本記事もマジカルナンバーを意識した構成となっています。
読み手がストレスを感じないテクニックを理解し、文章に落とし込むことができれば、
- 文章作成のスキル
- コピーライティングスキル
- 文章上の表現力
…といった力がグッと飛躍することは間違いありません!
マジカルナンバーを活用するうえでの注意点
ここまで、マジカルナンバーを活用すれば人の興味を惹く文章を作成できるのはご理解いただけたと思います。
しかし、マジカルナンバーは闇雲に使用しても効果を得ることはできません。
そこで、本セクションではマジカルナンバーを活用するうえでの注意点についてお伝えいたします!
マジカルナンバーにこだわり過ぎない
マジカルナンバーが人の記憶に残る数字だからといって、単純に「±7」や「±4」の数字を文中に組み込めば良いわけではありません。
マジカルナンバーは、商品やサービスの価値を相手の印象に強く残すために活用するものであることから、相手に有益な情報が伝わらなければ本末転倒になってしまいます。
そのため、マジカルナンバーを活用する前に、伝えたい情報はマジカルナンバーを使うことで伝わりやすくなるかという点を考える必要があるのです。
ただ「マジカルナンバーを使いたい」という安直な動機で文中に用いることは避けたほうが良いでしょう。
マジカルナンバーは万能ではない
短期記憶に対して有利に働く心理効果であるマジカルナンバーですが、適さない場面もあります。
それが『50音順』や『アルファベット順』で提示する情報。
マジカルナンバーは前述した通り、チャンクと呼ばれる“グループ分けした情報”を使用しますが『50音順』で紹介するべき内容を無理にチャンク化してしまうとかえって読みづらくなってしまいます。
特に、多くの情報を得たいユーザーにとっては、そもそも情報量が多くなることを理解して身構えている状態と言っても過言ではありません。
このような場合、マジカルナンバーを用いて読みやすく伝えるよりも『有益な情報を網羅的に伝える』方がより価値を感じてもらえることでしょう。
そのため、マジカルナンバーはどんな文章にも使える万能なテクニックではないことを理解しておいてください!
偶数は使用しない
マジカルナンバーを活用するうえで、提示する情報は偶数ではなく奇数を使用した方が効果的だといえるでしょう。
というのも、人は奇数を好む傾向にあると言われており『奇数の法則』と呼ばれる心理効果も存在します。
『奇数の法則』は「割り切れない数字=手が加えられていない自然な状態」と感じる人の潜在的な意識から提唱された法則なのですが、マジカルナンバーとの相性が良いのです。
ここまでお伝えしてきた通り、マジカルナンバー7±2、4±1のどちらも奇数で刻んでいるのは分かると思います。
そのため、活用する際は後に続く数字も重要であることを押さえておきましょう。
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- ライターの実情を紐解く『講義動画(全4本)』
- 約14日間の完全無料トライアル
- 参加人数6万人超え ※2024年8月23日現在〜
まとめ:人の印象に残るマジカルナンバーを活用しよう
本記事ではマジカルナンバーの実例やコピーライティングに活用する方法や注意点などをお伝えしました。
マジカルナンバーは、身近にある事柄からライティングまで幅広く利用されていることがご理解いただけたと思います。
実際に「マジカルナンバーを活用したい!」という方は、この記事でお伝えしたものの他に、どのような場面で利用されているのかを探してみるのもおすすめです。
今まで何気なく目にしていたものでも、気づかないうちにマジカルナンバーが使われているかもしれません…!
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
コピーライティングの世界へ飛び込んだ主婦ライター。