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kaora伝わる伝え方でお伝えします

突然ですが、以下の某パスタチェーン店の「牡蠣フェア」に関するWEB広告文をご覧ください。

ぷりっとパスタに ぷりっぷりの牡蠣! 今だけの満足食感!!
クリーミーな”スープパスタ”、ピリ辛”トマトソースのパスタ”、ガーリック風味の”焦がし醤油パスタ”それぞれ味わいの違うソースで「牡蠣」をお楽しみください。

牡蠣を使った3種類のパスタを売りにしていますが、読んでみてどのように感じられますか?

パスタ

というのも、上記の広告文には「ぷりっと」「ぷりっぷり」といった擬音や「クリーミー」「ピリ辛」といった味覚が伝わるような表現を用いているのですが…

これこそが『シズル』を活用した表現です!

そして、本記事では

  • そもそも「シズル」とはなにか?具体的な表現方法について
  • 「シズル」はどのように使えば効果的なのか?
  • 実際に「シズル」が使われているPR文章の例文

などについて、詳しくお伝えいたします!

1. シズルとは?

シズルとは、人間の五感に訴えかけ、あたかも実物がそこにあるかのような臨場感を演出する表現です。

「シズル」の語源はステーキを焼いた時の“ジュージュ―”という音の英語表現(sizzle)からきており、読み手に「食べてみたい・見てみたい・手に入れたい」と思わせる効果を生むことができます。

シズルの歴史

シズルの歴史

「シズル」は、20世紀後半に活躍した営業講師でありコンサルタントであるエルマー・ホイラー氏が提唱した造語です。

ホイラー氏は
「ステーキは味で売れるのではなく、肉の焼けるときの匂いが食欲を刺激するから売れる」

と言います。

肉が焼けるときの音を聞くと、その人は香ばしい香りや美味しいステーキを食べる幸せな時間を思い起こします。そしてどうしても食べたい、手に入れたいという欲求が強まるのです!

つまり、商品そのものを直接的に売り込むのではなく、手に入れた時のベネフィットをより具体的に読み手に思い起こさせ、思わず買いたくなるように誘導することが重要であり、それこそが「シズル」の効果だといえるでしょう。

また、ホイラー氏は、実に10万5000件のセールスコピーを分析し、10年にも渡り1900万人に対して検証した結果、ある公式にたどり着きました。

それが「ホイラーの5つの公式」です。

ホイラーはこれらについて、1971年に日本でも発刊され大いに話題となったステーキを売るな!シズルを売れ!』という著書に記しています。

そしてホイラー氏は著書の中で…

「どのような商品でも、使うときの状況や感情、思いや言葉を
相手の目線を通して考えることが大切だ」

と伝えています。

商品の本当の良さを伝えたいなら、自分の目線や感情ではなく、読み手が実際にその商品を手に取り経験する時の状況を、読み手側の目線で考えなければなりません。

そうすることで、読み手があたかも体験したかのような瑞々しいシズルが表現できるのです。

『ホイラーの5つの公式』とは

ホイラーが提唱した5つの公式とは、セールスに関する公式と言えます。

それらは、商品を表現するコピーライティングにとって、今も変わらず重要な考え方となっています。

『ホイラーの5つの公式』

1)ステーキを売るな、シズルを売れ!
2)手紙を書くな、電報を打て!
3)花を添えて言え!
4)もしもと聞くな、どちらと聞け!
5)吠え声に気をつけろ!

1)ステーキを売るな、シズルを売れ!

売り込むべきなのは、「構造」「作り」「値段」ではない。それを買うとお客様にとってどのようにすばらしいことが起きるか、「快適」「家がきれいになる」「手間がかからない」ことだ。

2)手紙を書くな、電報を打て!

できるだけ少ない言葉(フレーズ)を使って、10秒で相手の注意をひきつける。しかも、それが好意的な注目ならなおよい。

3)花を添えて言え!

「お誕生日おめでとう」と言う場合でも、花束を添えて言えば、あなたの気持ちがより相手に通じる。

プロポーズする場合も、手に花を持って言えば、言葉だけのときよりも、もっとあなたの意思を相手に伝えることができる。

4)もしもと聞くな、どちらと聞け!

「買うか買わないか」と迫るべきではない。これとあれの「どちらかを選ばせる」のだ。

5)吠え声に気をつけろ!

考えてみてほしい。小犬は、その吠え声としっぽでどれほど多くのことを表現しているだろうか。

ワンという吠え声と、しっぽの振り方ひとつで、驚くほどたくさんの心の中を相手に伝えている。
話すときの「吠え方」に気をつけよう!言葉の「振り方」に注意しよう!

参考文献:『ステーキを売るなシズルを売れ ―ホイラーの公式』 エルマー・ホイラー (著)


ライティングにおけるシズルの使い方

ライティングにおけるシズルの使い方

では、自分が実際にライティングをする際には、どのようにシズルを活用すればよいのでしょうか。

実はこのシズル、故郷のアメリカではすでにあまり使われないキーワードのようですが、我が国では独自の進化を遂げ、今も大いに活用されています。 

「オノマトペ」という表現方法をご存じでしょうか。オノマトペとは、味や音、見た目などを簡単な音で表現したものです。世界中に存在しますが、中でも日本は特に多いと言われており「日本語オノマトペ辞典」にはなんと4500語が掲載されています。

「虫がぶんぶん飛んでいる」「雨がザーザー降っている」

など、皆さんも普段からよく耳にしますよね?

日本人にとって馴染みの深いオノマトペをうまく使い、さらに形容詞などと組み合わせることで、より強く印象に残るシズル表現が可能になります。


シズルは人間の五感に訴えかける表現です。人間はいろいろな経験をする時、頭で考えるだけでなく、五感を働かせて状況を理解し、それが記憶にも繋がります。

シズルを用いることで五感から過去の記憶も呼び起され、追体験することができます。

味覚に対するシズル

味覚

私達の日常生活において出会う機会が多いのは、味や熱さなど食べ物に関するシズルではないでしょうか。

CMやパンフレット、パッケージなどでしょっちゅう目にします。

アツアツ(温度)、ピリピリ(しびれる辛さ)、贅沢な(高級感)、コク(味わい)などの表現によって、実際に口に運んだ時に感じられる味や温度、食べるシーンそのものの雰囲気などを感じ取ることができます。

視覚に対するシズル

視覚

人が五感から得る情報のうち、9割が視覚からの情報だと言われています。つまり良し悪しを判断する上で大きな役割を果たすのは視覚ということです。

写真があればわかりやすいですが、文章で表現するためには、本物を見たときに感じるであろうことをわかりやすい言葉で表現します。

くっきりとした(輪郭)、キラキラと(輝く)、ひらひら(舞い落ちる)などのように、これまでの自分の経験と合わさって、目の前に起きているものを見ているかのように感じます。

聴覚に対するシズル

聴覚

シズルの語源でもありますが、肉が焼けるジュージューという音が聞こえてきたら、どんどん食欲が増して、今すぐにでも食べたい!という気持ちになりませんか?

数の子のプチプチ(粒が弾ける)、天ぷらのパチパチ(油で揚げる)なども、味や食べているところを簡単に想像できますよね。

食べるものに限らず、例えば音そのものにおいてもシズルの効果は発揮できます。

単に「響く」という表現よりも「体の奥底からズンズンと響く」の方が、重厚感のある低音が体の奥底から響き渡ってくることを、イメージできることでしょう。
     

嗅覚に対するシズル

嗅覚

例えばカレー屋さんの前を通った時、カレーのスパイシーな香りを嗅ぐと猛烈にカレーを食べたくなったこと、多くの方が一度は経験しているのではないでしょうか?

それほど嗅覚はダイレクトに脳に作用し、強烈なアピール力を持つと言われています。そんな嗅覚を言葉で表現するのは難しいと言われていますが、

例えば「ツーンと鼻に抜ける爽やかなワサビの香り」のように「鼻に抜ける」「ツーンと」「爽やかな」など複数のシズルを組み合わせることによって、ワサビのフレッシュさや清涼感をより強く感じさせることができます。

触覚に対するシズル

触覚

触覚も嗅覚同様、実物と触れることによる理解は得られやすい分、シズルをうまく表現できれば、読み手を想像させることは可能です。

柔らかいものの手触りをイメージさせるとき、「ふわふわ」という言葉を付けることで、どれぐらいやわらかいのか実際に触った時のイメージをさらに膨らませることができ、抱きしめたときのあたたかみも感じられるような表現になります。

2 . シズルを用いた例文

このように、私達の身の回りには非常に多くのシズルがあります。あまりに日常的に接触しているので気付いていないことも多いのですが、ここで改めてシズルを用いた実例を見てみましょう。

例文1 ハンバーグ

ハンバーグ

画像はイメージです

以下は実際に販売されているハンバーグの商品説明文章です。
シズルの表現がどこに使われているか…意識しながらご確認ください!

▼白格ハンバーグ(黒毛和牛+白金豚)のPR文章

「黒毛和牛」と「白金豚」を使用した合挽きハンバーグです。黒毛和牛と白金豚のハイクオリティブレンドのジューシーなまろみ。黒格ハンバーグに比べ、比較的あっさりとした味わいで、特に女性の方に人気のある商品です。
参考:ONWARD MARCHE 【門崎熟成肉 格之進】ハンバーグ食べ比べセット・黒格ハンバーグ(黒毛和牛100%)

▼黒格ハンバーグ(黒毛和牛100%)のPR文章

格之進の肉職人によって厳選された黒毛和牛を100%贅沢に使用しております。黒毛和牛100%ストレートの爽快な美味さと円熟したコク。お肉をしっかりと感じることが出来る挽肉から溢れだす肉汁は、あっさりとして口どけが良く旨みだけを残して、スゥーと消えていきます。
参考:ONWARD MARCHE 【門崎熟成肉 格之進】ハンバーグ食べ比べセット・黒格ハンバーグ(黒毛和牛100%)

和牛と豚肉を合い挽きにしたことで得られる「ジューシーさ」や「まろやかさ」。

黒毛和牛のみであれば爽快かつコクが感じられるとのことで、シズルを加えることで両者の違いが特徴的に表現されています。

例文2 寿司

画像はイメージです

▼生本ズワイガニ寿司のPR文章

想像を超える旨みと甘み。極寒の海で育った身入りの良いカニのみを厳選。
生ならではの濃厚な甘みと旨みは冬の味覚の代表格
参考:宅配寿司 銀のさら リーフレット

冬が旬のズワイガニですが、極寒の海から水揚げされたということで、より身が引き締まり、濃厚になっていることが感じられます。

また「想像を超える」「濃厚な」旨みという表現で、読み手の食欲を掻き立てます。

例文3 車

車

画像はイメージです

▼自動車のPR文章

それは、乗る人の背中を押す、力強く頼もしい造形。
包み込むような安心感と力強さを表現したダイナミックシールド。
塊から削り出したようなシャープに彫り込まれたキャラクターライン。
参考:三菱自動車 アウトランダー

アウトランダーという車種のスペックについての特徴に加え、車に乗る時には非常に重要な安心感をシズルで演出しているPR文章ですね。

アウトランダーの強みである造形をより体感できるような文章で説明していることで、乗ってみたいという気持ちを引きたてるような表現になっています。

例文4 旅行

旅行

画像はイメージです

▼旅行プラン・ツアーのPR文章

空高く掲げられた白い帆は、湖上からの風を集めてパッと青空に広がります。この美しい風景には、ロマンを感じずにはいられません。
青空と白い帆のコントラストが美しい夏、湖上に沈む夕日を浴びて白い帆がセピア色に輝く晩秋。運が良ければ、湖上に浮かぶ富士山とのコラボレーションに遭遇できることもあります。
参考:トラベルJP. 白い帆いっぱいにロマンと云う風を乗せて湖上を走る霞ヶ浦帆引き船

青空と白い帆の色が好対照となり、帆にいっぱいの風を受け、颯爽と湖上を走る帆船の映像が思い浮かびます。

また「晩秋のセピア」「帆の色」「富士山」といった視覚情報にも言及していることで、ユーザーが実際に見たいという気持ちにさせる表現がされているのも、シズルがうまく使われている例だといえるでしょう。

例文5 シャツ

シャツ

画像はイメージです

▼シャツのPR文章

ユニクロの「スーパーノンアイロンシャツ」はコットンの中でも「超長綿」と呼ばれる世界的にも希少で良質な素材を織り交ぜ、品の良い光沢のある見た目に。さらに袖を通せば分かる、さらりと滑らかな着心地。ユニクロは服で働くあなたを応援します。
参考:ユニクロ スーパーノンアイロンシャツ

希少で良質な「超長綿」を使用しているということを「光沢のある」という表現があることで、さらに実感として伝わります。

また「さらりと滑らかな着心地」という表現から、仕事に向かう朝に、自分が心地よくシャツに袖を通せるようなイメージを抱くことができます。

例文6 ニット

ニット

画像はイメージです

▼ワッフルニットのPR文章

ざっくりとしたワッフル編みのハイネックニットは、そのきれいな発色も特筆すべきポイント。控え目ハイネックで、首元のちくちく感や苦しさを軽減。大人にちょうどいい甘さを託したぽわんと膨らむスリーブも可愛げたっぷり。
参考:ベルメゾン ハイネックワッフル編みニット

ハイネックのニットであることはすぐにわかりますが、発色が美しいということや、スリーブの形が特徴的であり、大人の女性が好む程よい可愛さを備えたデザインであることが想像できます。

多くの人が経験したことがある、首元のちくちく感や苦しさについては軽減されていると明言されており、実用的なベネフィットもしっかり伝わります。

3. シズルがもたらす3つの効果とは?

シズルがもたらす3つの効果とは?

ここまで、シズルが生まれてきた背景や、五感それぞれに対するシズルの特徴などをお伝えしました。

自分の身の周りにこんなにシズルがあったのかと驚かれている方もいるかもしれません。

そこで本セクションでは、文章の中に効果的にシズルを用いることで、得られる具体的な効果についてご説明します。

シズルを使った文章を読むだけで、疑似的に感覚を体験できる

シズルは、誰もが理解や想像をしやすく、五感に訴えかける表現です。シズルを使った文章を読むことで、読み手はその商品が目の前にあって、まるで手に取るように感じることができます。

また、商品やサービスの良さをしっかり体感できるため、実際に手に入れたときに自分にもたらされるベネフィットについてもしっかりと実感できるでしょう。

淡々とした文章が、シズルによって生き生きとしたものになる

商品などの良さを伝えたいと思えば思うほど、とかく説明ばかりが多い淡々とした文章になりがちです。

しかし、商品の特徴を踏まえたシズルを用いて説明することで、読み手は文章を単純に読み進めるだけでなく、本人が意図していなくても、実際にそれを手に入れた自分の姿をリアルに想像することになります。

また、シズルの表現にはオノマトペのような擬音語、擬態語が多く、それを用いることで長い文章の中にもリズムをもたらすことできます。それにより、読んでいて生き生きとしたものになります。

商品やサービスを実際に購入したいという欲求が掻き立てられる

シズルによって疑似的な体験ができた読み手は、その商品やサービスを実際に手に入れた時のベネフィットを強く感じられます。そうなれば「手に入れたい」という気持ちが当然掻き立てられてしまいますよね。

読み手に対し、感情を大きく揺さぶり、行動を起こさせることができるのが、シズルの最大の効果と言えます。

4.シズルを活用するうえでの注意点

シズルを用いることで大きな効果が得られ、読み手の感情や行動をうまく誘導できることはご理解いただけたかと思います。

しかし、シズルを活用することで得られるのはメリットだけではありません。

活用の仕方を間違えるとかえって『デメリットになってしまう』可能性があることも十分念頭に置いて、注意していただければ幸いです。

文章中、過剰にシズルを使ってはいけない

商品やサービスを紹介する中で、ついついその良さを強調したくなります。しかしシズル表現は擬音語や擬態語で表現したものや抽象的なイメージが強いものも多く、その言葉単独ではあまり意味はありません。

文章中に多用し過ぎると、本当に強調したいポイントがどこなのか薄まる可能性があります。また、文章全体が盛り過ぎているように感じられ、かえって不自然になります。

例文のピザ

伝統的で豪華な石窯を使い、真っ赤で高温の炎でしっかり焼き上げたピザは、生地はパリパリクリスピー。チーズは濃厚、とろけるようで、フレッシュな酸味のトマトソースと絶妙なコンビネーションを繰り広げます。

→全体的に少々盛り過ぎで、かつ石窯なのか、生地なのか、チーズなのか、ソースなのか、どれがこのピザの一番の訴求ポイントなのかが不明瞭です。
もし生地のクリスピー感が一番の売りであるなら、石窯やソースの説明はもっと端的にして、生地の良さが強調できるようにすべきです。

例えば、

「伝統的な石窯を使い、高温の炎でしっかりと焼き上げたピザの生地はパリパリクリスピー。濃厚チーズとフレッシュなトマトソースとの相性は抜群です。」

とすることで、石窯で焼いたクリスピーな生地の印象が強くなります。

ビジネス文書・論文・メッセージのやりとりでは向いていない

細かい情報を取引先などに正確に伝える必要がある場合や、研究論文など考察や結果を重視しなければならないような場合には、シズルを使って想像力を掻き立てる必要はありません。

また、長文が適切ではないメッセージのやりとりでも、必要な情報以外は嫌煙されることがあります。

読み手側が事実をそのまま知りたいような場合、シズルはかえってまわりくどい表現と見なされるため、シズルを使うのは避けて、端的に伝えるようにしましょう。

5.シズルについてのまとめ:読み手に感動を与える文章を生み出そう

いかがでしたか?

ここまで読んでくださった方は、シズルを効果的に文章へ取り入れることで、読み手側が自ら想像力を発揮してくれることをご理解いただけたかと思います。

淡々とした文章を紡ぐだけではなく、シズルの効果を存分に活用し、様々な場面で読み手に感動を与え、読み手に体験をさせることが特に効果的な使い方だと言えるでしょう!

きっと、あなたにとっても、読み手にとっても、
シズルを活用することで価値のある文章となり、今までにない効果が得られますよ。

最後までお読みくださりありがとうございました!

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オカメインコをこよなく愛すライター。
普段からnote、X、Instagramで自身の発信も行っています。
テーマに沿った深いリサーチを元に、丁寧にお伝え致します。
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