文章作成の目的とは、読み手にこちらの想いを伝えること。
そのためには、最後まで読んでもらうことが大前提になるため、飽きさせず、かつ理解しやすい文章を構成する必要があります。
上記の目的をかなえるために先人が編み出した「文章法則」というものがあり、後ほど解説する「PREP法」「SDS法」などがそうです。
そして本記事では「ホールパート法」について詳しくご紹介していこうと思うのですが、この手法は文章法則ではありません。
特にビジネスの場において…
- わかりやすく
- あまり時間をかけずに
- 聞き手の頭に残るように
という方針のもと、伝えたいことを複数説明する場合にとても有効な「コミュニケーション手法」であるといわれています。
しかし、この「コミュニケーション手法」は使い方や場合によっては文章作成に活用することもできるのです!
そこで本記事ではホールパート法の概要から例文、使うに当たってのメリット・デメリットなどについてご紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください。
ホールパート法とは?
ホールパート法とは伝えたいことの「全体」と「部分」に着目して話を組み立てる手法です。
”ホールパート”の意味としては「ホール(whole:全体)」と「パート(part:部分)」を合わせた造語であり、この手法は「全体」→「部分」→「全体」と、3つのパートが並びます。
はじめに、伝える内容の概要(全体・結論)を述べます。
このとき、伝えたい内容(部分)が「いくつあるのか」を述べることが大切なポイントです。
個数を示すだけでなく、アジェンダを示すようにそれぞれの部分の名称を伝えるのもよい方法でしょう。
次にAで個数を示した「伝えたい内容」を順にひとつずつ説明します。
最後に再び全体をふり返り、結論をまとめて印象づけをし、説明を終えます。
このように、パートホール法は「結論」と「結論」で、複数個ある「部分に関する説明」をはさむ形をとります。
実際にホールパート法を使いやすいときとは、どういう場面なのか?
例えば…
- 顧客や取引先に”自社製品の特徴・魅力を複数”伝えたいとき
- 上司や取引先への報告事項が複数あるとき
- 読みやすさに配慮したビジネス用のEメールを作成するとき
上記のような場面でホールパート法は活用できます。
本記事の冒頭でも触れましたが、わかりやすく・あまり時間をかけずに・聞き手の頭に残るように『複数の伝えたい内容を説明できるのがホールパート法』です。
ホールパート法の特徴とは?
ここからはもう少し掘り下げて、ホールパート法の特徴をご紹介しましょう!
この手法は上項の例にあったようなビジネスシーンに限らず、文章作成の場面においても有用であるということにも言及します。
ホールパート法の特徴① コミュニケーション手法である
ホールパート法の特徴② 冒頭と末尾に結論を述べる
ホールパート法の特徴③ 大枠を示してから、個々の説明をする
ホールパート法の特徴① コミュニケーション手法である
ホールパート法はあくまでもコミュニケーション手法であり、PASONAの法則やPREP法のような文章法則ではありません。
あくまでも「話しや会話内容の構成方法」を示したものであり、詳しい説明を目的とした技術ではないということをご理解ください。
ホールパート法の特徴② 冒頭と末尾に結論を述べる
ホールパート法の特徴として、冒頭と末尾で計2回結論を述べて印象づけることがあげられます。
最後に念を押すように結論を述べることが大切なのはもちろんですが、冒頭に「全体を見渡すように結論を述べる」ことには、大きな意味があります。
というのも、内容に対して興味・関心がなければすぐに離脱できるWeb(インターネット)メディアでは、コンテンツの冒頭でいかに読み手の興味を惹くことがことができるかが重要だからです。
そのためホールパート法は、特にWeb上で使用される文章の作成に向く手法と言えるでしょう。
また、概要を知ったからには、その詳細(続き)も知りたくなるという、行動心理学の「ザイガニック効果」も働くと考えられます。
ホールパート法の特徴③ 大枠を示してから、個々の説明をする
ホールパート法の独自の特徴として強調すべきなのは「全体像(いくつ、説明したいことがあるのか)」を真っ先に伝えるということです。
読み手は、個々の説明を読むより先に「話の大枠」を知ることができるため、その先にどのくらいの説明が続くかを予想でき、内容をひとつずつ納得しながら読み進められます。
例えば、あなたがもし長距離走をするとして「まず走り出してください! しばらく経ってからゴールが何km先にあるのかを発表します」と言われたなら、どうでしょうか?
この場合は多くの人が「ゴールが見えないのにどこに走ればいいの…」と感じることでしょう。
これは極端な例えですが、終わりが見えないままに何かを行なうのには苦痛がともなうものです。
そのため、ホールパート法を活用して事前に全体を示す(大枠を示す)ことで、読み手は先の見通せないストレスから開放されると言えます。
以上、ホールパート法について解説しました。
話すときに限らず、文章作成時に使う場合の有用性をご理解いただけたでしょうか…!
ホールパート法を使った例文【3選】
それでは次に『ホールパート法』を使った例文をご紹介しましょう。
本セクションではホールパート法を使わずに書いた文章、その次に使って書いた文章を示します。
ホールパート法の特徴である「冒頭と末尾に結論を述べる」「大枠を示してから、個々の説明をする」がどういう効果をもたらすかをご体験ください。
例文① ホールパート法の構成の説明
ホールパート法を使うとき、まず最初に、話す内容の概要(全体・結論)を述べます。
このとき、伝えたい内容(部分)が「いくつあるのか」を述べることが大切なポイントです。
個数を示すだけでなく、アジェンダを示すようにそれぞれの部分の名称を伝えるのもよい方法でしょう。
続いて、個数を示した「話したい内容」を順にひとつずつ説明します。
最後に再び全体をふり返り、結論をまとめて印象づけをし、説明を終えます。
A)ホールパート法を使用するとき、話の構成としては「全体」→「部分」→「全体」と3つのパートが並びます。
B)最初に、伝えたい内容の概要(全体・結論)を述べますが、このときに伝えたい内容(部分)が「いくつあるのか」を述べることが大切なポイントです。
個数を示すだけでなく、アジェンダを示すようにそれぞれの部分の名称を伝えるのもよい方法でしょう。
次に、個数を示した「伝えたい内容」を順にひとつずつ説明します。
そして最後に再び全体をふり返り、結論をまとめて印象づけをし、説明を終えます。
C)このように、ホールパート法は、「結論」と「結論」で、複数個ある「部分に関する説明」をはさむ形をとります。
例文② 新型掃除機の性能説明
新型掃除機の特徴をご説明いたします。
まずは驚きの軽さ。
弊社製品でも過去最軽量の1.3kgのため、女性の方でも軽々とお取り扱いいただけます。
次に、吸引力の強さです。
家庭用掃除機としては過去1番のパワーであり、前モデルと比較して15%アップしております。
次に、充電式であることです。
これは従来の商品にも搭載されていた機能ですが、コードレスであることから自家用車内の掃除もでき、ヘッド部を交換すればハンディタイプにも早変わりいたします。
そして最後にお伝えしたいのは、静粛性です。
従来品よりも騒音が20%減となっており、赤ちゃんが寝ている部屋でも、
目を覚ませることなく掃除をしていただけます。
A)新型掃除機の特徴を「軽さ・吸引力・充電式・静粛性」の4つに分けてご紹介いたします。
B)『軽さ』
弊社製品でも過去最軽量の1.3kgのため、女性の方でも軽々とお取り扱いいただけます。
『吸引力』
家庭用掃除機としては過去1番のパワーであり、前モデルと比較して15%アップしております。
『充電式』
これは従来の商品にも搭載されていた機能ですが、コードレスであることから自家用車内の掃除もでき、ヘッド部を交換すればハンディタイプにも早変わりいたします。
『静粛性』
従来品よりも騒音が20%減となっており、赤ちゃんが寝ている部屋でも、
目を覚ませることなく掃除をしていただけます。
C)以上、新型掃除機の特徴である「軽さ」「吸引力の強さ」「充電式」「静粛性」の4点をご説明いたしました。
本商品が気になる方は公式Webサイトから▶商品ページ
例文③ 上司への報告Eメール
〇〇課長、お疲れ様です。
✕✕商事様から見積書を受領しました。
pdfファイルを添付いたしますので、ご確認をお願いいたします。
また、メモを置いておきましたが、△△コーポレーションの〇〇部長へお電話をお願いいたします。
お伝えしておりましたが、予定どおり来週水曜日の△月△日に有給休暇をいただきたく存じます。
申請いたしましたので、よろしくお願いいたします。
A)〇〇課長、お疲れ様です。共有事項が3件ございます。
B)1件目:PDFファイル確認のお願い
✕✕商事様から見積書を受領しました。
pdfファイルを添付いたしますので、ご確認をお願いいたします。
2件目:〇〇部長へお電話をお願い
メモにも残してあるのですが、△△コーポレーションの〇〇部長へお電話をお願いいたします。
3件目:有給休暇について
お伝えしておりましたが、予定どおり来週水曜日の△月△日に有給休暇をいただきたく存じます。
申請いたしましたので、よろしくお願いいたします。
C)共有事項は以上です。取り急ぎ3件共有させていただきました。
上記ご確認のほど、よろしくお願いします。
伝えたいことの数や名称をあらかじめ示し、最後に結論を置くことで読み手にとっての情報の質が高められるのがホールパート法の強みといえるでしょう。
上記の例文でホールパート法を使っていない文章と使った文章の違いの理解を深めていただけたでしょうか?
ホールパート法とPREP法・SDS法の違いについて
文章を作成するうえで、文章構成のテンプレートとも呼べる「文章法則」なるものが存在します。
文章法則の代表例として「PREP法」と「SDS法」があり、コピーライターにとっては、必修の技法です。
これらの文章法則とホールパート法が似ていると言われることがありますが、実際には別物です。
それではどのような部分が異なるのか…?
本セクションでは、その違いについて知っていきましょう!
PREP法とホールパート法の違い
そもそもPREP法とは「Point(要点)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(要点)」の順で物事を伝える文章法則です。
コピーライター・Webライターとして活動している方では、比較的馴染み深い文章法則なのですが、要点を冒頭と末尾に置き、間に事例などをはさむ点を見るとホールパート法と似ています。
しかし、PREP法は結論から入り、その理由を述べ、続いて具体例を示した上で再度結論で念押しするという流れであり「基本的には、ひとつのことを深く説明する」際に用いることが多いのです。
よって、伝えたいことが複数ある場合にはPREP法よりもホールパート法に準じて文章を作る方がよいでしょう。
ちなみに、応用としてホールパート法の個々の「部分」に対してそれぞれをPREP法で詳しく説明するという連携した使用もよい方法といえます。
PREP法についてより詳しく知りたいという方はこちらの記事をご確認ください!
SDS法とホールパート法の違い
SDS法とは「Summary(要点)」「Details(詳細)」「Summary(要点)」という順番で物事を伝える文章法則です。
こちらも要点を冒頭と末尾に据えているということに加え、間にひとつの要素を置く形態であるため、PREP法以上にホールパート法に似ているといえるでしょう。
しかしSDS法について注目すべきなのは、間に置かれているのが「詳細」であることです。
SDS法もPREP法と同様に、要点について詳しく説明する用法であり、そこであつかう事柄は基本的にはただひとつです。
PREP法と同様に、伝えたいことが複数の場合にはSDS法ではなくホールパート法を活用するのがよいでしょう。
SDS法についてより詳しく知りたいという方はこちらの記事をご確認ください!
ホールパート法を使うメリット・デメリット
さて、ここまで読んでくださった皆さまの中には「今後の文章作成でホールパート法を取り入れて活用してみたい」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その前に、メリットとデメリットについて確認をし、活用にあたっての準備をしていただければと思います。
それではまず、ホールパート法を文章作成に活用するメリットを3つご紹介します。
- ホールパート法のメリット① 整理しながら伝えられる・知ることができる
- ホールパート法のメリット② 重要な箇所を理解しやすい
- ホールパート法のメリット③ 話の内容に説得力をもたせられる
ホールパート法のメリット① 整理しながら伝えられる・知ることができる
ホールパート法のメリット1つ目は『書き手が伝えたい事柄の内容を整理しながら伝えられ、読み手は何についての情報を得られるかを予め知れる』という点です。
書き手は冒頭で全体の概要を書く必要があるため、伝えたいことがどういう構成であるかを考え、情報を整理した上で文章を作成できます。
一方、読み手は冒頭の文章を読むことで、これから始まる文章にはどういう事柄が登場するのか、ゴールを知ることができるため、その先を読み進めるための心構え・準備を整えられることでしょう。
このように、情報があらかじめ整理されることの効果はとても大きく、書き手・読み手ともにメリットとなります。
ホールパート法のメリット② 重要な箇所を理解しやすい
ホールパート法のメリット2つ目は『文章の最初と最後に”結論・要点”を伝える構成であるため、重要な箇所を見逃しにくい』という点です。
この特徴は、先にご紹介したPREP法、SDS法にも共通しますね。
書き手は「結論ファースト」で文章を始めることで無駄な情報を省いて伝えられ、最後に結論を述べることで重要な箇所の念押しができます。
一方、読み手は「結論ファースト」で書かれている文章であれば、主旨を早々に知ることができてストレスを感じずに済みますし、個々の説明のあとに再び結論を読むことで確かな理解に繋がるでしょう。
ホールパート法のメリット③ 話の内容に説得力をもたせられる
ホールパート法のメリット3つ目は『冒頭で全体像(アジェンダ)を示し、続いて各構成部分を順に説明していくため、話が前後することなく一貫した説明ができる』という点です。
なぜ説得力をもたせられるのか、という理由としては、書き手が伝えたい内容をホールパート法に落とし込むにあたって情報を整理する必要があるため、筋のとおった構成を構築しやすいということが理由です。
説得力のある文章は読み手にとっても”読む価値がある”と判断してもらいやすいこともあり、文章を書くうえでは非常に大事な要素とも言えるでしょう。
以上、ホールパート法のメリットを3つ紹介しました。
ホールパート法を活用することで、書き手・読み手の双方にメリットが生まれることをご理解いただけたかと思います。
それでは次にホールパート法を文章作成において使用するうえでのデメリットを3つご紹介しましょう。
- ホールパート法のデメリット① 文章法則ではない
- ホールパート法のデメリット② 心理的な訴求ができない
- ホールパート法のデメリット③ 文章力によってクオリティが変わる
『使用することで損失がともなう…』というほどの内容ではありませんが、注意しながら使用するのがよいということをご理解いただければと思います。
ホールパート法のデメリット① 文章法則ではない
先でもお伝えした通り、あくまでもホールパート法はコミュニケーション手法であり、文章法則ではないということを理解する必要があります。
そのため、文章法則であるPREP法やSDS法とは異なり、ホールパート法の構成に当てはめるだけで文章が書けるわけではない点はデメリットとも言えるでしょう。
ただし、ホールパート法を用いて理解してもらいやすい文章の流れを作ることが有効であることは、いうまでもありません。
ホールパート法のデメリット② 心理的な訴求ができない
ホールパート法は伝えたいことの大枠を先行して伝え、続いて枠の中身を順に伝え、最後にまとめるという「コミュニケーション手法」です。
そのため、ホールパート法を活用したからといって読み手にこちらがねらった行動を取ってもらう「心理的な訴求」につながるというものではないことに注意しましょう。
ホールパート法のデメリット③ 文章力によってクオリティが変わる
ホールパート法の利用によって話の流れがわかりやすくなることはここまでご説明したとおりなのですが、構成に当てはめれば「伝わりやすい文章ができる」ことが保証されるというものではありません。
文章全体のクオリティは、書き手となるライターの腕の見せ所といえるでしょう。
つまり、ホールパート法には「活用すれば大丈夫!といった万能性はない」ということが、デメリットであるといえます。
以上、3つのデメリットについて説明しました。
利用価値の高い手法ではありますが、もともと文章法則として編み出されたものではないことに注意が必要です。
ライターがホールパート法を活用するにあたっては、先にお伝えしたようにPREP法と組み合わせるなどの工夫をしつつ、各部分の説明を中心に「訴求力のある文章」を書く心掛けをもつようにしましょう。
まとめ:ホールパート法を文章作成に活用しよう!
ここまで読んで下さった方の中には気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、本記事で複数にわたって情報をお伝えする際には、そのセクションの冒頭にアジェンダを設けていました。
これらのセクションは、含まれる項目が複数であったり、項目ごとの文章量が多かったりするため、冒頭に全体像を示すことのメリットが大きいのではないかと思ったからです。
多少なりとも…効果はありましたでしょうか?
そもそも文章というものは読んでもらってこそ価値が付きます。
ホールパート法を取り入れることは読み手・書き手のWin-Winの関係をもたらすことに繋がると信じ、筆者は今後も意識的に活用しようと考えています。
そしてあなたにとって本記事が参考になる・価値あるものとなればこれに勝る喜びはありません。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!