コピーライティングについて勉強し始めると、誰しも一度は耳にするであろう『3NOT』という言葉。
「よく耳にするけれど、何のことだろう?」と疑問を感じたことはありませんか?
「ライターとして活躍できるようになりたい!」と考えるなら、この『3NOT』は必ず越えていかなければならない壁のようなもの。
なぜなら『3NOT』を知らずにひたすら長文を書き続けても、ほとんど結果にはつながらないからです。
今回の記事では、コピーライティングにおける『3NOT』とは何か、またこれを解消するための具体的なポイントや、突破する秘訣についても詳しくお伝えしていきます。
私自身がライターとして『3NOT』の壁を痛感する中で、これを乗り越えるために気をつけているポイントについても、記事の後半で解説しています。
最後までお読みいただき、これからのライティングに活かしていただければ幸いです。
3NOTとは?
結論からお伝えすると、3NOTとは消費者の心理・行動をわかりやすく表した3つの『やらない』のこと。
Not Read(読まない)
Not Believe(信じない)
Not Act(行動しない)
この3つがコピーライティング業界の『3NOT』であり、提唱した人物の名前をとって『マクスウェル・サックハイムの3原則』とも言われています。
ライターが必ず乗り越えるべきこの3つの壁について、以下で詳しく見ていきましょう。
読まない
まず大前提として、消費者は広告文など1文字たりとも読みたいとは思っていないと頭に入れておきましょう。
誰であろうと、何かを売りつけられるなんてまっぴらごめんなのです。
さらに言えば、広告など読むのは時間のムダだとすら感じていることでしょう。
・テレビを見ていても、CMになったタイミングでトイレに行く ・録画する番組はCMをカットする ・You Tubeを見ている途中「広告をスキップ」の表示が出たら即座にタップする
あなたにもこうした経験があるのではないでしょうか?
ポスターやチラシであっても同じで、よほど手持ち無沙汰なときか、よほど惹きつけられる文言でも書かれていないかぎり「読もう」とすら思ってもらえないことがほとんどなのです。
読もうとすら思っていない人を捕まえて、なんとか読んでもらえる文章を書くのがコピーライターの仕事だと肝に銘じておきましょう。
「じゃあ、どうすれば読んでもらえるの?」という疑問もわいてくると思いますが、これについては後のセクションでお伝えします。
信じない
コピーライターが気合をいれて書いた文章を、なんとか読んでもらえたと仮定しましょう。
「読まない」の壁を突破できたわけですね。
ところが、次にやってくるのは「信じない」の壁です。
・「いいことを言っているみたいだけど、どうせ誇張だよね?」 ・「売りつけるためのうたい文句だよね?」 ・「証拠はあるの?」
CMやポスターを見て、このように感じた経験がある人も多いかと思います。
「失敗したくない」「だまされたくない」という自己防衛本能がはたらくので、消費者が簡単に信じようとしないのは、当たり前なのかもしれません。
ともかく、たとえ読んでもらえたとしても、簡単には信じてもらえないのだということを頭に入れて対策を練る必要があります。
具体的な方法については、これも後のセクションでお伝えします。
行動しない
お客様がキャッチコピーを読んで、商品の存在に気づいてくれたとします。
さらに本文も読んで、書かれている内容にも納得し「良さそうな商品だな。欲しいな」と感じてくれたとします。
では、もう商品について納得してもらえたのだから買ってくれるでしょうか?
答えは「いいえ」です。
誰でも身に覚えがあるでしょう。
・「今じゃなくても、いいか」 ・「今月はお金がないから、来月にしよう」 ・「周りで使っている人がいないか、聞いてみてから決めよう」
こうして決断を先のばしにし、そのうちに忘れてしまって、けっきょく買わない。
はっきり言って、こうしたことはあるあるなのです。(もちろん私もよくあります・・・)
『納得してくれても、行動しない』これも、コピーライターが越えなければならない大きな壁だと認識しておきましょう。
壁の越え方については、後ほどくわしくお伝えします。
3NOTに加えて・・・
ここまでご紹介してきた『3NOT』を提唱したのは、マクスウェル・サックハイム。
実は、彼が広告業界で活躍したのは、1900年代のことです。
それから100年以上の年月が過ぎ、今はスマホひとつで誰でもかんたんに情報を得られる時代になりました。
そうした情報過多の時代だからこそ、さらなる『NOT』が生まれています。
◯開かない(ひらかない)
たとえばメールマガジンやLINE公式アカウントに登録してくれた人(見込み客)に対してお知らせを送っても、そもそも開封されないという問題があります。
これはWebに限らず、ポスティングされたダイレクトメールも、封を開ける前に捨てられていると考えるべきでしょう。
◯理解しない
情報が溢れすぎている現代において、それを1つ1つ取り出して理解しようとする時間はありません。
『情報が送られてきたから、とりあえず目は通した』という状態で終わってしまい、真に理解しようとしないのです。
いわゆる『スルー』と言えば分かりやすいでしょうか?
情報が目の前を通り過ぎていっただけ。深く理解しないうちに次の情報がやってくる。そして忘れる。
こういったことが当たり前になってきているように思います。AIが台頭してきて、人々の生活にはさらなる変化が訪れるでしょう。
これからのコピーライターは『3NOTだけではすまなくなってきている』という現状を頭にいれつつ、それでも壁を乗り越えていく必要があるのです。
3NOTを解消するための7つのポイント
ここまで読んでいただいた方なら、乗り越えるべき『3NOT』の壁があることはご理解いただけたのではないでしょうか?
しかし、大切なのはここからです。
『どのようにしてその壁を乗り越えるのか』という難題に立ち向かうポイントを具体的に7つ、お伝えしていきます。
3NOTを解消するポイント①読者に共感する
まずは『読まない』の壁を突破するポイントについて。
読者は「自分には関係のない内容だ」と判断した文章は一切読みません。
しかし、逆を言えば「まさに私のことだ!」「これを書いている人は、私の悩みを分かってくれる!」と感じてもらえさえすれば、読まれる確率がぐんとアップするということになります。
例文で見てみましょう。
万年ダイエッターのあなたは、ぜひこのサプリを試してみてください!
ダイエットに効果があると言われる方法をいくつも試したのに、まったくやせる気配がない・・・。
こんなことが何度も続くと「もしかして自分はやせられない体質なのかも・・・」と不安になってきますよね。
実をいうと、3年前までは私もそうでした。
いかがでしょうか?
パターン②のほうが文章は長いですが「もしかして自分は何をやってもやせられないのかも・・・」と悩んでいる人には刺さるはずです。
読者の悩みを代弁し、寄り添い、自分もそうだった、と共感することで「この人なら私の悩みを解決してくれるかも!」という期待感が高まり、その後の文章も読みすすめてもらえるようになるのです。
3NOTを解消するポイント②読者の悩みに対する解決策を提示する
読者の悩みに共感し、読者が「この人の言うことなら・・・。」と期待感をもって読みすすめてくれたときに、ようやく次のステップへ進めます。
「実は、その悩みを解決するいい方法がありますよ。」というように、解決策を提示するのです。
あくまでも読者への共感を忘れず、そっと解決策を差し出すのがポイント。
売り込みや押し付けがましさを感じると、とたんに読者の心が離れてしまうからです。
3NOTを解消するポイント③エビデンスを提示する
ようやく解決策を提示して内容に興味をもってもらえたとしても、次は『信じない』の壁が立ちふさがります。
これを突破するポイントは、広告文を読んで「どうせ誇張でしょ?」「証拠は?」と思っている読者に、納得のいく証拠(エビデンス)を提示することです。
商品を使用したお客様にアンケートを取り、そのうちの何人が満足しているかなど具体的なデータを数字で示すことができれば、説得力も高まりますよね。
実際にあなたも「医師の〇〇%がオススメしています」などの文言を目にしたことがあるのではないでしょうか?
・これだけのお医者様がすすめているのだから・・・
・使った人の満足度がこれだけ高いのだから・・・
エビデンスを提示することで、こうした安心感を読者に与え『信じない』の壁を突破していきましょう。
3NOTを解消するポイント④文章法則に当てはめて伝える
『読まない』『信じない』の壁を突破するための方法として、文章法則に当てはめて伝えることは有効です。
やみくもに売り手の言いたいことを伝えるだけでは途中で読者が離脱してしまい、けっきょく商品を購入してもらうところまで行き着かないからです。
・読者の共感を得られる ・長文でもスムーズに読んでもらえる ・納得して購入してもらえる ・すでに高い効果が出ている
そんな文章構成を知っていて書くのと、知らずに書くのとでは結果に差が出るのは明らかでしょう。
有名な文章の型として、マーケターの神田昌典さんが提唱した『PASONA(パソナ)の法則』があります。
・Problem(問題提起)
・Affinity〈親近感)
・Solution(解決策)
・Offer(提案)
・Narrow down(絞り込み)
・Action(行動)
これらの頭文字をとったものが『PASONAの法則』で、まさに『3NOT』を解消するための文章法則と言えるもの。
ライターズ.com内にも詳しく解説した記事がありますので、この法則についてもっと知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
3NOTを解消するポイント⑤売り込まない文章を心がける
売り込まない文章を心がけることも重要です。
経験のある人も多いと思いますが、自分がアパレルショップや自動車販売店などへ商品を見に行ったときのことを思い出してください。
店員さんや営業マンがグイグイ売り込んでくるお店だと「本当はもっとゆっくり見たかった」と思いつつ、店を離れてしまうこと、ありませんか?
実は文章も同じなのです。
興味をもって読んでくれていたにも関わらず、売り込み感が強くなってくると読者は引いてしまいます。
しかも文章の場合は相手の顔が見えないため、相手の反応を見ながらとっさに軌道修正することもできませんよね。
文章だけで勝負する以上、途中で読者が引いてしまったらそこで”離脱される”と考えて文章を書く必要があります。
読者が自然と欲しくなるように「解決策を提示する」ことが大切で、あくまでも買うか買わないかの選択権は読者にゆだねるような文章を心がけましょう。
3NOTを解消するポイント⑥難しい内容を難しく書かない
当たり前のようですが、難しい内容を難しく書いてしまうと読者は読みません。
専門用語や知らない言葉ばかりが並んでいる文章を目にして「何を言いたいのか分からないな」と感じたとき、読者はそれを理解しようと努力するよりも『読まない』のほうを選択してしまうのです。
したがってライター業界では「中学生にも分かる文章で書け」などとよく言われます。
難しい内容であっても、難しくない言葉に置きかえて書くのがライターの仕事。
誰かがライターの仕事について「日本語から日本語への翻訳者」と言っていたことがありましたが、これを目にしたときは、まさにそのとおりだなと感じました。
売り手側の立場で言うと、お客様(読者)に伝えたいことは山ほどあるでしょう。
新しく開発した商品のスペックや機能、最新の技術などなど・・・。
それら全てを読者に伝える必要があるのか、何を伝えて何を伝えないのか、情報を取捨選択しつつ、分かりやすくまとめることも『3NOT』の壁を突破するための大切なポイントになります。
3NOTを解消するポイント⑦読者の不安要素を排除する
読者が広告や記事に興味を持ってくれた。そこに書かれている内容も信じてくれた。
しかしそれが『購入する』『登録する』などの行動につながらないのは、なぜでしょうか。
先のセクションでも少し触れましたが「今じゃなくてもいいか」「誰か使っている人に聞いてから決めよう」と考えてしまうからです。
これは、読者の不安な気持ちをぬぐいきれていないからこそ起こる現象だとも言えるでしょう。
『行動しない』の壁を突破するためには、読者の不安を取り除く必要があるのです。
具体的な対策を3つ、お伝えします。
「よくある質問」のコーナーを充実させる
『よくある質問』のコーナーがあることで、購入する前の不安を解消します。
自分以外の人は購入前にどのような疑問を持ったのか、今は気づかないけれど何か見落としている点がないかなどを確認できるので、安心につながります。
お客様の声を載せる
お客様の声を載せることも、購入する前の不安を解消するのに役立ちます。
実際に商品を購入した人の声を聞くことで、自分が商品を手に入れた後の未来が見えやすくなるからです。
たとえレビューに商品のデメリットが書かれたとしても、大した問題ではありません。
デメリットや悪い評価が何もない商品だと、それはそれで嘘っぽく映ることもあります。
また、お客様はデメリットを知った上で、それを受け入れられるかどうかの判断材料にしたいと考える側面もあるのです。
返金・返品保証をつける
それでもまだ購入をためらうお客様に対して『返金・返品保証をつける』という方法もあります。
これは「失敗したらどうしよう」という不安を解消するためです。
「最悪、失敗しても返金してもらえる」とお客様が思えることで『行動しない』の壁を突破しやすくなります。
3NOTを突破するために筆者が意識していること
ここまで、コピーライティングにおける『3NOT』の壁と、それを突破するための具体的なポイントについてお伝えしてきました。
ここからは、私自身がライターになってから「書き方ひとつでこんなに結果が変わるのか!」と驚いた経験に基づき、筆者が『3NOT』を突破するために心がけていることをご紹介します。
来場者ゼロのウォーキングイベント
私がライターになってから1年ほど経過した頃、地域のウォーキングイベントにボランティアスタッフとして参加したことがありました。
徒歩で来場した参加者にはかんたんなクイズを解いてもらいます。
正答数に関わらず参加賞がもらえ、さらに抽選で豪華景品があたるという、はっきり言って「お得しかない」イベントでした。
ところが、開催時刻をすぎても誰も来ないのです。
「子ども会の人たちだけでも来られないかどうか、LINEして!」
主催者に頼まれた私が、以下でご紹介する3つのポイントに気をつけてグループLINEで呼びかけたところ、30分以内に10人以上が来場したのです。
田舎の子ども会ですから、これは会員の約3分の1にあたる人数。
しかもウォーキングしてきたのですから「お知らせを見て、すぐ家を出た」と言えます。
来場した人から言われたセリフに、まさに『3NOT』が含まれていました。
「告知もせずにこんなお得なイベントやってるの?!」
実は、イベントの開催は回覧板でもプリントが回り、学校を通じて子どもたちにも配布されていました。
誰でも2回は目にしていたはずなのに、自分に関係があるイベントだと認識していなかったのです。
つまり『読まない』の壁を突破できなかったばかりに、お得なイベントが伝わっていなかったということですね。
このときの経験から、私が『3NOT』を突破するために心がけている3つのポイントを、以下でご紹介します。
読者のメリットになることは目立つように書く
まずは内容に興味を持ってもらうため、読者のメリットになることを伝えます。
ポイントは、3つ。
・短く ・見やすく ・目立つように
強調するためタイトルには目立つ色やフォントを使ったり【お得情報!】のようにカッコを使ったりします。
場合によっては「とりあえず読んでおかないと損するかもしれない」という印象を与える言葉を使ってもいいと思います。
読者が取るべき行動が簡単であることを伝える
取るべき行動が難しいと、誰でも動くのがおっくうになってしまいます。
『行動しない』の壁は高いです。
「面倒くさいから、いいや」と思われないために、読者が取るべき行動は「たったこれだけでいいよ」という”カンタン”さをアピールした書き方にします。
実際にはそこそこ面倒な作業がともなうとしたら、1歩目のハードルをできるだけ下げるのです。
「やり始めればたいしたことないんだけど、やり始めるのが面倒なんだよね」と思うこと、ありませんか?
1歩目のハードルが下がれば、少しずつ高いハードルを越えていくのは、案外できるもの。
「たったそれだけなら、挑戦してみるか」と思わせることが大切です。
行動した先の未来を想像させる
『行動しない』の壁を乗り越えた先にどのような未来が待っているのか、それが分かれば行動しやすくなります。
例えば、取り扱いが難しいイメージもある一眼レフカメラを売るとしたら。
カメラの操作性や画素数の高さといった具体的な性能について解説するよりも、カメラを購入して使えるようになった後の自分を想像させる文章にします。
「夜空に打ち上がる美しい花火までキレイに撮影できますよ。彼女とのひと夏の思い出をいつまでも写真で残しませんか?」
このようなイメージですね。
先にある未来が「それ、いいなぁ」と思えるようなことであれば『行動しない』の壁も突破しやすくなるでしょう。
『3NOT』を解消して”読まれる”コピーライターになろう
今回はコピーライターが必ず乗り越えるべき『3NOT』の存在と、それを解消する具体的な方法についてご説明してきました。
『読まない』『信じない』『行動しない』の他にも、情報過多の時代だからこそ増えてきている『開かない』『理解しない』といった新たな『NOT』。
しかし、この壁を乗り越えた先にしかクライアントとコピーライターの目指すゴールはありません。
今回お伝えした『3NOT』を解消するための7つのポイント。
・読者に共感する ・読者の悩みに対する解決策を提示する ・エビデンスを提示する ・文章法則に当てはめて伝える ・売り込まない文章を心がける ・難しい内容を難しく書かない ・読者の不安要素を排除する
これらを頭に置きながら、『読まれる』『信じてもらえる』『行動してもらえる』文章を書けるコピーライターを目指していきましょう!