『アンカリング効果』と聞いて、コピーライティングを始めたばかりの方は「アンカリングとは」「アンカリング効果って何」と疑問に思う方が多いのではないでしょうか?
恥ずかしながら、筆者もライターとして活動を始めるまで「イカリングはわかるけど、アンカリングって何?」という状態でした。
そこで本記事では…
- アンカリング効果の基本情報
- アンカリング効果の実例
- アンカリング効果をコピーライティングに活用する方法
- アンカリング効果を活用する上での注意点
について、解説します。
心理学に興味がある方はもちろん、コピーライティングに心理学を活かしたいと考える方に役立つ内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
- プロ講師によるマンツーマンの相談サポートつき!
- 読むだけで技術が身につく『テキストブック(全8巻)』
- ライターの実情を紐解く『講義動画(全4本)』
- 約14日間の完全無料トライアル
- 参加人数6万人超え ※2024年8月23日現在〜
アンカリング効果とは?
アンカリング効果とは心理効果の一つです。
最初に目にした数字が基準となって、その後の判断に影響を与えてしまう、意思決定を左右してしまう現象をアンカリング効果といいます。
アンカリング効果の語源
「そもそも、なぜアンカリング効果という名前なのか?」
気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、アンカリング効果のアンカーとは、船の『いかり』のことを指しています。
そして、船の『いかり』を下ろすことを意味する『アンカリング』。
つまり、最初に目にした数字をずっと引きずり、意思決定や判断材料に加えてしまう様子が『いかり』にとどまる船の様子に似ていることから、アンカリング効果という名前が付けられました。
アンカリング効果が作用している実例【5選】
「アンカリング効果とは何か?」
簡単な説明ではありましたが、ご理解いただけたでしょうか。
実は、このアンカリング効果、普段気にしていないだけで身の回りのさまざまな場面にて利用されています。
そのため、ここからはアンカリング効果がどのようなところで使われているのか実例をご紹介します。
本セクションを読むことでアンカリング効果をよりイメージできると思いますので、早速見ていきましょう!
アンカリング効果が作用している例① セール
お店でよく見かけるセールは、アンカリング効果の典型例です。
気になるアウターを手に取ってみたら、値段は3万円。
あきらめて、元あった場所に戻そうと思ったそのとき…
よーく見てみると「3万円」にはバツが付けられていて「50%OFF」と書いてある。
『半額で安くなっている!今買い逃すとなくなってしまうかもしれないし…買っちゃおうかな?』
誰でも一度は、こんな経験があると思います。
ただ、同じアウターの値段に「¥15,000」としか書かれていなかったら、価格に魅力を感じることはないでしょう。
しかし、最初に見た「3万円」という数字がアンカーとなり、そこから「50%OFF」と書かれていた場合、安くて魅力的だと思い込んでしまいますよね。
これが、身近なアンカリング効果の影響のうちの1つです…!
アンカリング効果が作用している例② 通販番組
テレビやラジオの通販番組を見たことがある方は、特に以下の例の想像が付きやすいのではないでしょうか?
『メーカー小売価格10万円のところ、本日に限り8万円!』
『そして、今から1時間以内の注文で、さらに1万円の値引き!』
『今だけの価格、7万円!』
最初に「10万円」と伝えたことで、お客さんの頭の中に「10万円」がアンカーとして埋め込まれます。
そして、10万円→8万円→7万円と価格がどんどん下がっていくことで、購買意欲が刺激されるため
「こんなにも安くなるのか!これは大変お得だから、買っちゃおう!」
…とついつい買ってしまうのです。
アンカリング効果が作用している例③ 飲食店のメニュー
飲食店に入ってメニューを見ると、価格が高い料理から順に並んでいることがあると思います。
これも立派なアンカリング効果です。
一番上に記載されている高額な料理がアンカーとなり、メニュー下にいくほど価格を安く感じることができます。
価格が下がっていくメニューの下の料理に魅力を感じ、注文してしまうのです。
さらに言えば、セットメニューの欄に価格が安い単品を載せているのも、アンカリング効果がうまく使われています。
もしかしたらあなたも、自分では気づかないうちに、お店側の思惑に誘導されてしまっているかもしれません…。
アンカリング効果が作用している例④ ネットショッピング
ネットショッピングでは、検索をかけて出てきた最初の商品価格に、次の行動が影響される傾向があります。
A:最初に見た価格が800円
B:最初に見た価格が1,500円
Aは「800円」がアンカーになっているので、次に見る価格が1,000円の場合、高いと感じるでしょう。
一方で、Bは「1,500円」がアンカーになっているので、次に見る価格が1,000円であっても安く感じてしまいます。
さらに、Bの場合だと『探せばまだ安い価格がでてくるかもしれない』と淡い期待をして、長々と商品ページで回遊してしまうことがあるかもしれません…笑
「もしかして…私のこと?」とドキッとした方もいらっしゃるのではないでしょうか…?
アンカリング効果が作用している例⑤ 遅刻の連絡
あなたが待ち合わせに遅刻しそうになったとき、または相手の方が遅刻しそうなとき…
次のような経験はありませんか?
A:『45分遅れます』といって45分で到着
B:『1時間遅れます』といって45分で到着
Aの連絡をした場合は「45分」がアンカーとなってしまい、連絡通り「45分」で到着したとしても、相手からは『45分も遅刻してきた』と評価されてしまいます。
一方でBの連絡をした場合は「1時間」がアンカーになります。
そのため、アンカーとなった「1時間」よりも15分早い「45分」で到着したので、遅刻したにもかかわらず「思ったよりはやく来てくれた、急いで来てくれたのだな」と印象が良くなる傾向があります。
かといって「遅刻しても余裕を持って到着時間を伝えればいい」というわけでもありませんのでご注意ください!
待ち合わせで『1時間遅れます』なんてことになれば、信頼を失うことになり愛想をつかされます。
特にデートの約束だった場合、フラれることは確実でしょう…。
アンカリング効果をコピーライティングに活用する方法
5つの実例から、身の回りにはたくさんのアンカリング効果があふれていることをご理解いただけたと思います。
さて、ここからはアンカリング効果をコピーライティングに活用する方法を3つご紹介します。
コピーライティング、とくにセールスコピーライティングにおいてはアンカリング効果が密接に関連しています。
そして、アンカリング効果をうまく活用できれば、コピーライティングの目的である「文章を使って読み手の心を動かし、行動させる」ことができます。
■値下げ前の価格を表示する
読み手の購買意欲を刺激したいのであれば、値下げ前の価格と値下げ後の価格はセットで表示しましょう。
A:今なら30%OFFで【¥2,800-】
B:通常価格【¥4,000-】のところ、今なら30%OFFで【¥2,800-】
書いてある内容は全く同じですが、Bの方がよりお得に感じる方は多いのではないでしょうか。
Aは「30%OFF」と記載があるので、もともとの販売価格より安くなっている情報は読み取れます。
しかし、パッと見てどのくらい安くなったのかはわかりにくいですよね。
一方でBは値下げ前の価格が提示されているので、一目でいくら安くなったのか簡単にわかります。
このように、実際に購入できる価格よりも大きな価格を提示しておくことで、大きい価格がアンカーとなるため、読み手に安さを印象づけることができ「安いから買おう」と思わせることができるのです。
値下げ前の価格を強調、かつ否定しつつ、値下げ後の価格を表示する
■実績は小さい数字から表示する
数値化した実績が読み手に与える影響は非常に大きいです。
もし、伝えたい数字がある場合はそれよりも小さい数字を表示することで、小さい数字がアンカーとなり、後の数字を大きく感じさせることができます。
A:〇〇大学合格率 10.0%
B:〇〇大学合格率 前年5.5%→今年10.0%
合格率10.0%がスゴイことなのかどうかはさておき…笑
Bは合格実績が前年よりも4.5%向上していることがわかりますよね。
すると、読み手によっては、合格率の伸びから〇〇大学の合格に強い進学塾と感じるのではないでしょうか。
〇〇大学への進学を志望している学生とその保護者に『合格率がいいから入塾したい(させたい)』と思わせることができるのです。
もちろん、実績が前年より下がっているのに、この方法を取るのは逆効果です。
〇〇大学合格率 前年10.0%→今年7.8%
この場合、読み手が『この進学塾大丈夫かな?』と不安になりますので、その場合は見せない方がマシです。
強調したい数字の前に、それよりも小さい数字を表示してアンカーとすること
■価格が高い他の商品ジャンルと比較する
競合となる商品やサービスと直接比較するのではなく、他のものを比較対象にする方法です。
例えば、高価な筋力トレーニング機器を売る場合、価格の比較対象をトレーニング機器にするのではなく、トレーニングジムと比較するのです。
例としては…
毎日トレーニングジムに通うと年間20万円以上の費用がかかります…。 しかし、この筋力トレーニング機器なら半額の10万円でご利用いただけるのです! わざわざジムに通わずとも、ご自宅で手軽に本格的なトレーニングが体験できます。 |
この場合「20万円」という価格がアンカーとなって「10万円」という価格がお得に感じるアンカリング効果が働きます。
競合となる商品よりも価格が高い時や、その商品ジャンルでの適正価格がわからない時に非常に有効な方法です。
しかし、この方法には重要な点があります。
それは、比較対象は必ず関連する商品ジャンルであるという点です。
例えば、洗濯機を売るのであれば「洗濯」に関連するコインランドリーやクリーニング専門店などの価格と比較して、洗濯機の価格がどうお得なのかを伝えるのがいいかもしれません。
洗濯機と関連しないテレビやパソコンなどの価格と比較しても、読み手の心は動きませんので注意してください。
他の商品ジャンルで比較する際は、売りたい商品やサービスに関連するジャンルであること
アンカリング効果を活用する上での注意点
アンカリング効果は特に価格表示の点で効果を発揮することがわかっていただけたのではないでしょうか。
この記事を読んで、さっそく
「アンカリング効果を活用した文章(セールスコピー)を書くぞ!」と意気込んでいる方。
ちょっと待ってください!
アンカリング効果は非常に効果的な手法ですが、特に注意しなければならないことが3点あります。
これを知っているか知らないかで、コピーライティングを大きく左右しますので、ぜひご覧ください。
不当な二重価格表示
アンカリング効果を活用する上で最も注意するべきことは「不当な二重価格表示」にならないようにすることです。不当な二重価格表示は絶対に許されません。
実際の販売価格と通常価格(比較対照)を一緒に表示して販売すること。
例)
販売価格:980円
通常価格:1,280円
二重価格表示は、内容が正しければ表示することに問題はありませんが、内容に不正があると法律違反になりますので細心の注意をはらう必要があります。
上記の例の場合、過去に同じ商品を通常価格1,280円で販売していたのであれば問題はありません。
しかし、実際は980円で販売しているのにもかかわらず、通常価格を1,280円と表示して、あたかも安くなっているかのように表示すると、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号、「景品表示法」「景表法」と略す)の違反となります。
二重価格表示をする際、販売価格の比較対照として利用できる価格は主に次の3つです。
◆過去の販売実績
過去の販売価格(例の場合1,280円)を表示する際は、次のルールがあります。
- セール開始時点からさかのぼる8週間において4週間以上、過去の販売価格で商品が販売されていたこと
- 過去の販売価格で通算2週間以上販売していたこと
- 過去の販売価格で販売された最後の日から期間から2週間未満であること
1は必須で、2と3はどちらか一方をクリアしていれば適切な二重価格表示となります。
◆メーカーの希望小売価格
メーカーが設定した希望小売価格は比較対照として利用できます。
ただし、メーカーが希望小売価格を設定していない場合や希望小売価格よりも高い価格を表示した場合は違法となります。
◆競合他社の販売価格
競合他社の名称と最新の販売価格を明示すれば利用できます。
しかし、競合他社の価格も日々変化する可能性があるので、常にリサーチは必須。
競合他社の最新の販売価格よりも高い価格を比較対照とした場合は違法になります。
また、消費者が購入する機会のない商圏の店舗価格を比較対照にするのも違法です。
さらに詳しいルールにつきましては「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)をご参照ください。
過度な価格表示
過度な割引価格の表示は、かえって不信感を与えてしまい逆効果です。
過度な価格表示とは例えば…
『定価10万円のノートパソコンが大特価8,000円です!』
…といったもの。
ここまで値下げされていると、安さの魅力よりも不安の方が勝ってしまうと感じる方が多いのではないでしょうか。
アンカリング効果を最大限に活用しようとして、過剰な割引価格を表示すると製品の品質に問題があるのではないかと消費者は感じます。
消費者を引き込むどころか、かえって離れてしまう可能性が大きいです。
そのため、適切な価格設定で消費者がお得だと感じる情報を表示することが非常に大切です。
期間と頻度
アンカリング効果を活用する際は、いつ使うのかを考えておく必要があります。
適切な期間や頻度でなければ、アンカリング効果を活用することは難しくなってしまうため、こちらも注意が必要な要素であると言えるでしょう。
◆長期間の実施
長期間のアンカリング効果は、消費者が慣れてしまい、効果が薄れてしまいます。
身近な例として配送料が挙げられるでしょう。
今ではネットショッピングの「配送料無料(〇〇円以上の購入で無料)」は珍しくなく、消費者も配送料無料は当たり前と感じている方が多いと思います。
しかし、このような状況で配送料が有料になると、消費者は急に割高になったと感じてしまいます。
2012年には『ZOZOTOWNの送料が高い』と一部の消費者がSNSで発信したことに対し、当時の社長がSNSで一喝した内容が物議をかもし、その後配送料を一時無料にするという対応が取られました。
2016年アマゾンジャパンが税込み2,000円未満の注文を有料化にした際は、消費者からの激しい反発と大きなため息が漏れました。
もともとはキャンペーンのひとつとしてスタートした配送料無料。
しかし、長期間続けてしまった結果、今となっては配送料無料が当たり前の基準になってしまったのです。
◆高頻度の実施
アンカリング効果の活用を多用してしまうのも消費者が慣れてしまう原因です。
セールを例に考えてみましょう。
よく目にするのは「サマーセル・年末セール・決算セール」で、7〜8月、12〜1月、3月と大体1クールごとに実施しているものだと思います。
これだけ見ても1年の約半分はセールをしていることになります。
さらに上記のセール頻度に加え、単月のセールがあったときはどうでしょうか?
セールをしていない月の方が少ないですよね。
値下げによるお買い得のアンカリング効果が薄れるだけでなく、消費者からは「いつもセールをしているお店」というイメージを持たれてしまい、かえって悪い影響をうけてしまうのです…。
- プロ講師によるマンツーマンの相談サポートつき!
- 読むだけで技術が身につく『テキストブック(全8巻)』
- ライターの実情を紐解く『講義動画(全4本)』
- 約14日間の完全無料トライアル
- 参加人数6万人超え ※2024年8月23日現在〜
まとめ:たかが数字、されど数字
本記事ではアンカリング効果の基礎知識についてお伝えしてきました。
ここまで読んでみて、身の回りにあふれている何気ない数字の数々が、これほどまでにわたしたちの判断に影響を与えていることがわかっていただけたのではないでしょうか。
まさに「たかが数字、されど数字」ですね。
記事を見る前と見た後で、アンカリング効果への理解が深まっていただけていれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。