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今この記事をご覧になっているあなたは、正しい敬語を使えていますか?

実は、平成17年に文化庁文化部国語課が調査した”国語に関する世論調査1”で「敬語に関して困っている、気になることがある」と回答した人は全体の7割もいることがわかりました。
※1 参考文献:平成 16年度 – 国語に関する世論調査

その中でも気になるのは「二重敬語などの過剰な敬語を用いた表現が多い」と回答した人がいること。

つまり、敬語の正しい使い方を知らずに二重敬語を使う人が数多く存在していると言えるでしょう。

そこで本記事では、多くの方が理解しきれていない”二重敬語”についてわかりやすく解説していきます。

二重敬語とは? 

二重敬語とは1つの語に対して”敬語を2つ以上使っているもの”を指します。

「失礼のないようにしたい」「丁寧に伝えたい」という想いから過剰な敬語を使ってしまい、かえって適切ではない文章になってしまうのです。

例えば、「お手元の資料を拝読させていただきます。」という文章。

この文章は丁寧で間違いはないように感じますが、実は二重敬語が使われています。

拝読させていただきますの間違いの図

「拝読=”読む”の謙譲語」

「させていただく=”する”の謙譲語」

上図のように「謙譲語」+「謙譲語」または「尊敬語」+「尊敬語」など、同じ種類の敬語が使われているため二重敬語となり、敬意を持って伝えたつもりでも不快な思いをさせてしまうことがあるのです。

敬語の種類

二重敬語の概要については、何となく理解できたものの「そもそも敬語について詳しく知らない」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでここからは、敬語の種類とそれぞれの特徴について説明していきます。

そもそも敬語とは、相手への敬意を表現するために使われる言葉で、その敬語の種類は以下の4つに分けることができます。

  • 尊敬語
  • 謙譲語
  • 丁寧語
  • 美化語

では、これら4つの敬語について、1つ1つ詳しく解説していきましょう。

尊敬語

尊敬語は、相手を高めるときに使われる表現方法で、目上の人や自分より立場が上の人に対して使う敬語です。

尊敬語

この尊敬語にはさらに4つのタイプが存在しますので、1つ1つ確認していきましょう。

①動詞が変化

特定の言葉に変換された尊敬語を使って、相手への敬意を表現するタイプです。

基本形尊敬語
来るいらっしゃる
食べる召し上がる
言うおっしゃる
見るご覧になる
知るご存じ
動詞が変化する

課長が会社に来る→課長が会社にいらっしゃる
お客様がお菓子を食べる→お客様がお菓子を召し上がる

②「お(ご)〜になる」

動詞に「お(ご)」と「〜になる」をつけて、相手への敬意を表現するタイプです。

「お(ご)〜になる」

社長が会社から帰る→社長が会社からお帰りになる
お客様が家を見る→お客様が家をご覧になる

③動詞+「〜れる(られる)」

動詞に「れる(られる)」をつけて、相手への敬意を表現するタイプです。

動詞+「〜れる(られる)」

先生も会議に出席する→先生も会議に出席される
斉藤様が車に乗る→斉藤様が車に乗られる

④名詞が変化

人や物の名詞を変化させた尊敬語を使って、相手への敬意を表現するタイプです。

基本形尊敬語
相手あなた・貴君・〇〇様
会社貴社・御社
貴店
上司御上司・お上役
友人御友人・御学友
名詞が変化

会社へ行く→貴社へ行く
友人と一緒に→御友人と一緒に

謙譲語

謙譲語は、自分の立場を低くして相手を敬う表現方法で、自分が主体となり、その動作を受ける人に対して使う敬語です。

謙譲語

そして、この謙譲語には、敬意を表す3つのタイプが存在しますので、1つ1つ確認していきましょう。

①動詞が変化

特定の言葉に変換された謙譲語を使って、相手への敬意を表現するタイプです。

基本形謙譲語
行く参る・伺う
食べるいただく・頂戴する
言う申す
見る拝見する
知る存じる・存じ上げる・承知する
動詞が変化

私が会社まで行く→私が会社まで伺う
シェフの料理を食べる→シェフの料理をいただく

②「お(ご)〜する」

動詞に「お(ご)」と「〜する」をつけて、相手への敬意を表現するタイプです。

「お(ご)〜になる」

荷物を預かる→荷物をお預かりする
商品を紹介する→商品をご紹介する

③名詞が変化

人や物の名詞を変化させた謙譲語を使って、相手への敬意を表現するタイプです。

基本形謙譲語
自分私・私ども・当方
会社弊社
弊店・当店
贈り物粗品・ささやかな品
名詞が変化

私が担当する→当方が担当する
会社で会議をする→弊社で会議をする

丁寧語

丁寧語は、語尾に「〜ます」「〜です」「〜ございます」などの丁寧な言葉をつけて、相手を敬う表現方法を指します。

立場や相手を限定せず、使用できる敬語です。

丁寧語
基本形丁寧語
来る来ます
食べる食べます
言う言います
見る見ます
知る知ってます
丁寧語

私が行く→私が行きます
会議室はこちら→会議室はこちらです
夕食は3階のお部屋→夕食は3階のお部屋でございます

美化語

美化語は、名詞や動詞に「お(ご)」をつけた美しい言葉を使って、相手を敬う表現方法を指します。

丁寧語同様、立場や相手を限定せずに使用できる敬語です。

美化語

そして、この謙譲語には敬意を表す2つのタイプが存在しますので、1つ1つ確認していきましょう。

①「お(ご)」+名詞

名詞に「お(ご)」をつけて、相手への敬意を表現するタイプです。

「お(ご)」+名詞

店で待っています→お店で待っています
商品を紹介する→商品をご紹介する

②尊敬語や謙譲語に変化

動詞に「お(ご)」をつけることで、尊敬語や謙譲語に変化させて相手への敬意を表現するタイプです。

「お(ご)」+動詞

先生が考える→先生がお考えになる(尊敬語)
ノートに書く→ノートにお書きします(謙譲語)

よく使われる敬語一覧

「尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語」4種類の敬語の意味や使い方についてご理解いただけましたでしょうか。

以下の一覧表は、ビジネスシーンや日常でよく使われる敬語を「尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語」ごとにまとめた一覧表ですので、是非ご確認ください。

尊敬語

基本形変換後
するなさる・される
聞くお聞きになる
読むお読みになる
会うお会いになる・会われる
受け取るお受け取りになる
待つお待ちになる
思うお思いになる・おぼし召す
考えるお考えになる・ご考察になる
来るいらっしゃる・おいでになる
持つお持ちになる
座るお掛けになる
あげるくださる

謙譲語

基本形変換後
するいたす
読む拝読する
聞く拝聴する・うかがう
会うお目にかかる
受け取る賜る・頂戴する・拝受する
考える拝察する・検討する・愚考する
待つお待ちする
知る存じる
持ってくる持参する
帰る失礼する・おいとまする
借りる拝借する・お借りする
あげる差し上げる・進呈する

丁寧語

基本形変換後
するします
言う言います
聞く聞きます
読む読みます
会う会います
受け取る受け取ります
考える考えます
待つ待ちます
思う思います
帰る帰ります

美化語

基本形変換後
手紙お手紙
挨拶ご挨拶
料理お料理
心遣いお心遣い
指導ご指導

どうして二重敬語はダメなのか?

どうして二重敬語はダメなのか?

会社の研修等で「二重敬語の使用には注意しましょう」など言われ、二重敬語はダメ!と思っている方は多いのではないでしょうか。

しかし、なぜ二重敬語を使用してはいけないのか…?

そこには3つの理由がありますので、ご説明していきます。

『間違った日本語の使用=NG』の風習 

1つ目の理由は、間違った日本語はNGという風習があるからです。

特に公的な場、ビジネスやWeb文章などで間違った日本語を使用してしまうと、読み手側や聞き手側は違和感を感じて内容が入ってこず…

「間違った日本語を使っている」「〇〇ではなく△△だ」

と気になってしまう方も少なくありません。

勉強不足とみなされる

2つ目の理由は、勉強不足とみなされるからです。

間違った表現を当たり前に使うと「敬語について勉強していない」「マナーがなっていない」とみなされることがあります。

実際に3000人の会社員の方にとったアンケート2では「他人のマナー違反が気になることがある」と思った人の中に「あまりにもひどい二重敬語などはどうしても気になってしまう」と回答した人が多く、ほとんどの人が二重敬語をマナー違反と感じているのです。

※2 参考文献:「ご覧になられましたでしょうか」3000人調査で判明した”他人をイラッとさせる”敬語の代表例|プレジデントオンライン

使ってはいけないイメージが付いているから

3つ目の理由は、使ってはいけないイメージが付いているからです。

そもそも二重敬語を使ってはいけないという法律のようなものはありませんが、時代の流れによって使うことが失礼に値する考えを持つ人は一定数います。

二重敬語を使ってはいけないというイメージがあるため、どんなに誠実に敬意を表現しようと思っても、二重敬語を使うと不快に思う人や本当に伝えたいことが伝わらないなどの問題点が発生してしまうかもしれません。

間違えやすい二重敬語のパターンと例文

使われることで不快に思う人もいる二重敬語ですが、間違えやすい二重敬語のパターンがいくつかありますので、例文と一緒に確認し間違った敬語を使用しないように意識していきましょう。

間違えやすい二重敬語のパターン

「お(ご)〜なる」+「れる(られる)」

「お(ご)」〜なる」と「れる(られる)」はどちらも尊敬語であり、この2つの敬語が1文に重複して使われているパターンで、話す際に間違えている方が多く見られます。

下記の例文は一見丁寧に聞こえますが、二重敬語ですのでしっかりと確認していきましょう。

例「お(ご)〜なる」+「れる(られる)」 

× 社長がお見えになられました
「お見え(「見る」の尊敬語)」+「られる(尊敬語)」

 社長がお見えになりました

このように尊敬語を重ねて伝えても、敬意が高まるわけではないので注意してくださいね。

「謙譲語」+「させていただく」

「謙譲語」と「させていただく」はどちらも謙譲語であり、この2つの敬語が1文に重複して使われているパターンです。

知らずにこの間違いをしている方は多いのではないでしょうか。(筆者も尊敬語を勉強する前までは、なんの違和感もなく使っていました。。。)

間違った日本語を使用しないためにも、下記の例文を見て確認していきましょう。

例「謙譲語」+「させていただく」

× この件については、じっくり検討させていただきます
「検討(「考える」の謙譲語)」+「られる(尊敬語)」

 この件については、じっくり検討します

「こんなにシンプルでいいの?」と思われる方もいるかと思いますが、実はこちらが正しい日本語なのです。

「敬称」+「様などの尊敬語」

敬称は、敬意が込められている尊敬語であるため、ここに「様」などの尊敬語を重複させてしまうと二重敬語になってしまうのです。

例えば、敬称は「社長」「部長」「貴社」「貴店」「各位」などが挙げられ、人名や職に加える尊敬語は「様」「さん」「殿」「御中」「先生」などが挙げられます。

このような敬称と人名や職に加える尊敬語が同時に使われることがないよう、下記の例文を見て確認していきましょう。

例「敬称」+「様などの尊敬語」

× 株式会社⚪︎⚪︎社長様

「社長(敬称)」+「様(尊敬語)」
※「社長・部長・課長」などの敬称は尊敬の意味が込められている

 株式会社⚪︎⚪︎社長

× 関係者各位殿

 関係者各位「各位(敬称)」+「殿(尊敬語)」

このような間違いをビジネスメールや手紙などで当たり前のように使ってしまう方が多いので、気をつけてくださいね。

間違えやすい二重敬語の一覧

ここでは、間違えやすい二重敬語をまとめていますので、是非ご確認ください。

「お(ご)」〜なる」+「れる(られる)」

基本形二重敬語正しい敬語
言うおっしゃられたおっしゃった
聞くお聞きになられるお聞きになる
会うお会いになられるお会いになる
考えるお考えになられるお考えになる
待つお待ちになられるお待ちになる
来るお越しになられるお越しになる
伝えるお伝えになられるお伝えになる
利用するご利用になられるご利用になる
帰るお帰りになられるお帰りになる
見るご覧になられるご覧になる
来るいらっしゃれるいらっしゃる
座るお掛けになられるお掛けになる

「謙譲語」+「させていただく」

基本形二重敬語正しい敬語
行く伺わせていただきます伺います
聞く拝聴させていただきます拝聴します
会うお目にかからせていただきますお目にかかります
食べる・受け取る頂戴させていただきます頂戴します
考える検討させていただきます検討します
待つお待ちさせていただきますお待ちします
言う申させていただきます申します
持っていく持参させていただきます持参します
帰る失礼させていただきます失礼します
読む拝読させていただきます拝読します
借りる拝借させていただきます拝借します
あげる進呈させていただきます進呈します

「敬称」+「様などの尊敬語」

二重敬語正しい表現
社長さん社長
部長様部長
課長殿課長
各位様各位
貴社 御中貴社

慣用的に使われがちな二重敬語とは?

慣用的に使われがちな二重敬語

本セクションでは二重敬語ではあるものの、慣用的に使われることが多くなっている二重敬語を5つ紹介します。

拝見いたします

拝見いたします

「拝見いたします」は「拝見(謙譲語)」と「いたします(”する”の謙譲語)」が重なっている二重敬語のうちの1つ。

正しい言い方は「拝見します」ですが…

「メールの内容を拝見いたします」「資料を拝見いたしました」など、ビジネスシーンで浸透している二重敬語です。

お伺いする

お伺いする

「お伺いする」は「伺う(”行く”の謙譲語)」と「お〜する(謙譲語)」が重なっている二重敬語のうちの1つ。

正しい言い方は「伺う・伺います」ですが…

「私が自宅までお伺いします」「弊社の社員がお伺いしました」というように使われることが多くなっています。

ちなみに「お伺いさせていただきます」は「伺う(”行く”の謙譲語)」+「お〜する(謙譲語)」に加えて「させていただく(”する”の謙譲語)」で三重敬語になっているため、使用は控えましょう。

お見えになる

お見えになる

「お見えになる」は「見える(”来る”の尊敬語)」と「お〜になる(尊敬語)」が重なっている二重敬語のうちの1つ。

正しい言い方は「見える」ですが…

「お客様がお見えになります」「会長がお見えになりました」など、目上の人やお客様に対してよく使われることが多くあります。

また、こちらも「お見えになられる」と表現すると「見える(”来る”の尊敬語)」+「お〜になる(尊敬語)」+「られる(尊敬語)」の3つの敬語を使った三重敬語になってしまうため、使用は控えましょう。

お読みになる

お読みになる

「お読みになる」は「お読みする(”読む”の尊敬語)」と「お〜になる(尊敬語)」が重なっている二重敬語です。

正しい言い方は「お読みする」ですが…

「全ページをお読みになったそうです」「手紙はお読みになりましたか?」など、昨今では違和感なく使っている方が多くなっています。

お召し上がりになる

お召し上がりになる

「お召し上がりになる」は「召し上がる(”食べる”の尊敬語)」と「お〜になる(尊敬語)」が重なっている二重敬語です。

正しい言い方は「召し上がる」ですが…

「〇〇様が料理をお召し上がりになられました」「こちらお召し上がりになりましたか?」など、レストランやビジネスシーンでも使われるようになった二重敬語と言えるでしょう。

まとめ:二重敬語を日常的に意識しよう!

今回は、二重敬語についてお伝えしてきましたが「すべてを覚えるのは難しい!」と感じている方もいることでしょう。

そんな方は本記事でもお伝えした「間違えやすい二重敬語のパターン」を3つだけでも覚えてみてください。

間違えやすいパターンを意識して敬語に気をつければ、相手へ不快な思いをさせることは避けられるはずです。

当記事が正しい日本語を習得するための参考になれば幸いです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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0歳児育児中に「Online ApC Academy」でコピーライティングを習得。フリーランスとして活動開始。『丁寧・迅速・心を込めて』をモットーにライティングスキルに磨きをかけている。
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