
「一般名詞と固有名詞の違いって何だろう?」
「クライアントから固有名詞を使わないようにと言われたけど、具体的にどういうこと?」
といった悩みを抱えたことはありませんか?
特に初心者ライターさんにとって、一般名詞と固有名詞の区別は少しややこしく感じるかもしれません。
かく言う筆者もその一人でしたが、違いを理解できたことで表現の幅が広がり、より伝わりやすい文章が書けるようになりました。
この記事では、固有名詞と一般名詞の違いを分かりやすく解説し、よく間違われる例を挙げながらその使い分けのコツをお伝えします。
また、クライアントから「固有名詞禁止」と指示を受けた際に、どういった名詞を避ければよいのかも具体的に解説していきます。
初心者ライターさんでも簡単に実践できる内容ですので、ぜひ参考にしてみてください!

一般名詞と固有名詞とは?

名詞は大きく分けて、一般名詞と固有名詞に分類されます。
例えば「メロン」と「夕張メロン」はどちらも果物の名前ですが、一般名詞と固有名詞で違うカテゴリーに分類されます。
両者の違いは何でしょう?
それぞれ紹介していきます。
一般名詞

一般名詞とは、物事の一般的な名前を表す品詞です。普通名詞とも呼ばれています。
物事のカテゴリー的な意味合いが強い名詞とも言えるでしょう。
例えば、次の様な名詞が一般名詞です。
A.鳥
B.魚
C.猫
D.米
まず、Aには“カナリア・インコ・文鳥”など沢山の種類がありますが、それは「鳥」というカテゴリーに分類される生き物の名前です。
また、Bには“鯛・ヒラメ・ブリ”などがありますが、これらは総称して「魚」というカテゴリーに分類されます。
同様にCにも“三毛猫・黒猫・シャム猫”などがありますが、総称して「猫」と呼びますし、
Dには“白米・玄米・発芽米”などを総称して「米」と呼びます。
このように、同類の物事の総称が一般名詞と考えれば分かりやすいでしょう。
固有名詞

固有名詞とは書いて字の如くなのですが、固有に付けられた物の名前です。
この世に存在するたった一つのものに付けられた名称であり、他の同類のものと区別するために付けられた名称とも言えるでしょう。
主に国名・人名・建物名などに用いられることが多いようです。
例えば、次のようなものが固有名詞です。
ご理解いただきやすいように、一般名詞と比較しながら紹介したいと思います。
一般名詞 | 固有名詞 | |
A | 国 | 日本、イタリア、フランス |
B | 作家 | 太宰治、夏目漱石、芥川龍之介 |
C | 塔 | エッフェル塔、東京タワー、スカイツリー |
D | りんご | サンふじ、王林、紅玉 |
いかがでしょうか。
カテゴリー的な意味合いがある一般名詞に比べ、固有名詞は唯一無二の名称です。
Aであれば、国は一般名詞ですが「日本」「イタリア」「フランス」という唯一無二の名称になると固有名詞となります。
B、C、D、も同様です。
まとめると、以下二つの条件に該当した名称が固有名詞と言えるでしょう。
- 世の中に存在する唯一無二のものに付けられた名称
- 他の同類と区別するために付けられた名称
一般名詞と固有名詞はどんなときに使い分ける?

ここまで「一般名詞」「固有名詞」の違いについてご理解いただけたと思います。
では、コピーライターとしてこの違いをどのように活用すれば、より伝わりやすい文章が作れるようになるのでしょうか。
ここからは、例文を用いながら紹介したいと思います。
読者のイメージを膨らませたいときは固有名詞を使う

始めに紹介するのは、固有名詞を使用することでイメージが膨らみより伝わりやすい文章が作成できるケースです。
一般名詞よりも固有名詞の方が広く認知されているときに有効な方法です。
突然ですが、以下の例文を読んでみてください。
A.スマホでマトリックス型二次元コードで決済をするとポイントが付与されるため、多くの方に利用されています。
いかがでしょうか。
何のことを言っているかイメージできますか?
では、これを次のように言い換えたらどうでしょう。
B.スマホでQRコード決済をするとポイントが付与されるため、多くの方に利用されています。
もっと具体的に言い換えてみます。
C.PayPayの様なスマホアプリで決済をするとポイントが付与されるため、多くの方に利用されています。
どうでしょうか?Cの文章ならイメージしやすいのではないでしょうか。
Aは固有名詞を一切使わず作成した例文なのですが、皆さんが引っかかったのは恐らく「マトリックス型二次元コード」というワードだと思います。
「ん・・・?何のこと?」と大半の方がなるところですが、これを固有名詞である「QRコード1」に置き換えたのがBです。
※1 QRコード・・・株式会社デンソーウェーブの登録商標であるため固有名詞
すぐにピンときた方は「『マトリックス型二次元コード』って『QRコード』のことだったのね」と、イメージが付くと思います。
それでもイメージが付かない場合は、PayPayなどの具体的な商品名(固有名詞)に置き換えることで、よりイメージが膨らみ伝わりやすくなるでしょう。
このように、一般名詞よりも固有名詞の方が広く認知されている場合は、そのワードに置き換えることで説得力のある文章ができあがります。
対象の特定を避けたいときは一般名詞を使う

続いては、一般名詞を使用した方が良いパターンについて紹介したいと思います。
それは、固有名詞を使用することでプライバシーや著作権の侵害とみなされるリスクがある場合です。
また、固有名詞は実名となるため、相手に不利益や誤解を生じさせる可能性も考慮する必要があります。
このような場合は、対象の特定を避け一般名詞を使用した方が無難です。
例文で説明しましょう。
○○さん(著名人や芸能人)も愛用の△△△(商品名)が、1年間で30万本売れました!
「○○さん」「△△△」という固有名詞を使って表現することで、ご本人や販売会社に不利益が生じる可能性も視野に入れておきましょう。
こういったリスクを回避するために「有名女優も愛用の化粧水が」という一般名詞で表現した方が良いと言えます。
固有名詞で表現した方が訴求力が上がりますので、ここは固有名詞を使用したいところではありますが、訴求力よりもリスク回避を優先すべきでしょう。
ここで注意点が一つ。
一般名詞のつもりで置き換えたワードが、実は固有名詞という場合があるのです。
固有名詞の方があまりにも広く知られ過ぎて、一般名詞と勘違いされているワードは数多くあります。
詳細は後ほど紹介しますが、一般名詞と固有名詞の切り分けには大きな落とし穴があることを覚えておきましょう。

8割の人が知らない!一般名詞と間違われやすい固有名詞

先にお伝えした、固有名詞なのに一般名詞と間違われているワードについてご紹介します。
なんと、8割の人が勘違いしているという衝撃の事実ですが、恥ずかしながら筆者もその一人でした。
一般名詞と固有名詞の切り分けをきちんと行っていないと、
普通名詞と思いなにげなく書いたワードが実は固有名詞で、その対象物に関わる権利をいつの間にか侵害していた・・・
なんてことにもなりかねません。
個人的に用いる文章や、誰にも見せない日記に使用するには全く問題ありませんが、WEB上の記事や広告など不特定多数の目に触れる制作物では注意が必要です。
このセクションでは、一般名詞と間違われやすい固有名詞について代表的なものを紹介していきます。
食品

固有名詞 | 一般名詞 | 解説 |
シーチキン | カツオの油漬け | はごろもフーズ株式会社が販売している商品名。 |
SPAM(スパム) | ランチョンミート | アメリカのホーメルフーズ社が販売している商品名。 |
タバスコ | ペッパーソース | アメリカのマキルヘニー社が販売している商品名。 |
巨峰 | ぶどう | 日本巨峰会の登録商標。 |
日用品

固有名詞 | 一般名詞 | 解説 |
タッパー | プラスチック製密閉容器 | タッパーウェア社が製造・販売している商品名。 |
コロコロ | 粘着クリーナー | 株式会社ニトムズの登録商標。 |
シャチハタ | インキ浸透印 | シヤチハタ株式会社が製造する、インクが本体に内蔵された印鑑の商品名。 |
セロテープ | セロハンテープ | ニチバン株式会社が販売している商品名。 |
デバイス機器

固有名詞 | 一般名詞 | 解説 |
Wi-Fi | 無線LAN | 業界団体であるWi-Fi Allianceが商標権を持っているため、同団体の認定した機器だけがWi-Fi対応のロゴを付けることができる。 |
Windows | OSソフト | Microsoft Corporationが販売するOSソフトの商品名。 |
iPhone | スマートフォン | Apple社が開発・販売しているスマートフォンの商品名です。 |
ファッション・美容

固有名詞 | 一般名詞 | 解説 |
ヒートテック | 機能性インナー | 株式会社ファーストリテイリングで販売している商品名。 |
ウインドブレーカー | 防風用ジャケット | アメリカ、John Rissman company社の登録商標。 |
ビューラー | アイラッシュカーラー | 啓芳堂製薬株式会社が「ビウラ」の商標で、登録したのが始まり。 |
ワセリン | 保湿クリーム | イギリス、ユニリーバ社の商標であるため、商品名。 |
その他

固有名詞 | 一般名詞 | 解説 |
エアロバイク | フィットネスバイク | コナミスポーツの登録商標。 |
エレクトーン | 電子オルガン | ヤマハ株式会社が販売している電子オルガンの商品名。 |
オセロ | リバーシ | メガハウスの登録商標。 |
ガチャ | カプセルトイ | 株式会社タカラトミーアーツが商標を持っているので商品名。 |
固有名詞を使ううえでの3つの注意点

さて、ここまで固有名詞の大きな落とし穴について紹介してきましたが、いかがでしたか?
「一般名詞と固有名詞の違いについては理解できたけど、ライターとして両者を切り分けて使用するのはハードルが高いな」と感じていませんか。
確かに、ハードルは高いです。
ですが、この先プロのライターとして活動していくうえで、避けては通れない壁とも言えるでしょう。
ここからは、実際に固有名詞を使用する時に必要な注意点について紹介していきますので、
執筆の際にぜひお役立てください。
登録商標に気をつける

「登録商標=固有名詞」なのですが、そもそも「登録商標」とは何でしょうか。
政府広報オンラインには次のような説明が掲載されています。
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するネーミングやマーク(識別標識)です。もし、その商標を勝手に他人に使われてしまうと、せっかく築いたブランドイメージが崩れたり、売り上げを奪われたりするなど損害が生じてしまいます。そこで、自社の利益を守るために重要なのが「商標登録」です。
つまり、事業者が他の類似商品やサービスと区別し、ブランドイメージや利益を守るための制度です。
この商標登録された商品名を無断で使用することで、申請元事業者の権利侵害や不利益に繋がる可能性があります。
また、状況によっては申請元事業者から損害賠償を請求される事態に発展する恐れもあるのです。
では、商標登録している商品とそうで無い商品はどのように見分けるのでしょうか。
商品パッケージの商品名に小さな「®」という文字が付いているのを目にしたことはありませんか?

例えば、上記の画像にある小さな「®」が商標登録されている印となります。
しかしながら、執筆時に一つ一つ商品ロゴの「®」の有無を確認していくのは、大変骨の折れる作業です。
そんなときに是非活用したいのが「特許情報プラットフォーム」です。
▼特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
こちらで検索すれば、簡単に商標登録の有無を確認することができます。
では、商標登録された商品名を使用する場合はどうしたらよいのでしょうか。
ここでポイントとなるのが、何を以て“使用する”と定義付けるかです。
商標法第二条第三項に「使用」に関する定義が記載されています。
※少し長文ですが重要なので記載します
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によつては認識することができない方法をいう。以下同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為
引用::e-Gov法令検索|商標法
簡単に言うと「使用」とは「商標登録されている商品を、あたかも自身が作り上げた商品かのように使用すること」を指しています。
例えば、広告や包装紙にその商品のロゴを載せたりするような行為です。
そのような使い方をしなければ、商標権侵害に繋がる可能性は低いと考えられています。
表記を絶対に間違えない

続いては実際に使用する際の注意点です。
それは、絶対に表記を間違えないことです。
商品名や会社名には、企業の並々ならぬ思いや消費者に向けたメッセージが込められています。
それをライターが安易に使用し、表記を間違えるようなことは絶対あってはいけません。
間違えやすい表記をご紹介します。
ローマ字の大文字小文字・濁点・半角スペースなど、重々注意のうえ使用しましょう。
誤 | 正 |
キューピー | キユーピー |
ビッグカメラ | ビックカメラ |
WOWWOW | WOWOW |
wikipedia | Wikipedia |
Tiktok | TikTok |
Yahoo!JAPAN | Yahoo! JAPAN |
このような細かいところまで意識できるかできないかが、プロとしての質の問われるところだと思います。
私たちは物書きを生業とするプロなのですから、このような細かいことにも細心の注意を払いましょう。
クライアントの指示に従う

ここまでお伝えしたように、固有名詞を使用することにはリスクが伴います。
このような理由から、固有名詞の使用を禁止するクライアントもいることを頭の片隅に入れておきましょう。
このため、レギュレーションはしっかり確認しておく必要があります。
特に、先にもお伝えした一般名詞化している固有名詞をうっかり使用することの無いよう、常に意識して注意しましょう。
まとめ:一般名詞と固有名詞を適切に使い分けてライティングに活かそう

今回は、一般名詞と固有名詞の違いや使い分け方についてご紹介しました。
一般名詞と固有名詞の違いを正しく理解し適切に使い分けることは、文章の表現力を高めるうえで重要です。
一般名詞は特定の対象を限定しない表現が必要な場合に効果的なのに対し、固有名詞は対象を特定したり物事を具体的に明示したい場合に使用できます。
しかし、固有名詞を使う際には、登録商標や表記の正確さやクライアントの指示に従うことも忘れてはいけません。
これらのポイントを押さえて、固有名詞と一般名詞を使い分け正確で読者に伝わりやすいライティングを心がけましょう。
また「もっとライターの専門的な勉強をしたい!」という方は以下の記事を参考にしていただければ幸いです!
詳細はこちらの記事からご確認ください!

「一般名詞 固有名詞」に関するよくある質問

ここからは、質問コーナーです。
よくある質問を幾つか紹介したいと思います。
よくある質問①一般名詞と固有名詞の切り分け方の注意点を教えてください
固有名詞は「唯一無二の存在に対する名称」と定義づけされていますが、この世にたった一つしか存在していなくても「一般名詞」に分類されるものもあります。
例えば「太陽」はこの世に一つしか無く唯一無二の存在なのですが、実は「一般名詞」なのです。
「太陽」は他と区別する必要が無いため「一般名詞」となります。
言い換えれば「他の同類のものと区別するために付けられた名称」という固有名詞の定義に当てはまらないため、とも言えます。
ですが、筆者が調査したところ、太陽は「唯一無二の存在だから固有名詞」と解釈している文献も一部ありました。
固有名詞ではない名詞は一般名詞とされていますが、その区別の仕方は主観的で境界は曖昧のようです。
切り分けの定義はあるものの、ワードによってはその時々で一般名詞にも固有名詞にも成り変わる可能性があることも意識しておいた方が良さそうです。
よくある質問②商標登録された商品名を使用しても問題ないですか?
商標法に抵触する可能性が低いからといって、固有名詞を際限なく使用して良い訳ではありません。
もし、ある商品を引き合いに出し、その商品だけが競合商品より劣っている(もしくは優れている)という印象を与えるような記事を作成したら、当然関係者の不利益となります。
その商品の持つブランドイメージに傷を付けることになりかねません。
このようなリスクが潜んでいることは常に意識しておきましょう。
よくある質問③固有名詞の使用を禁止しているクライアントがいるのはなぜですか?
次のような理由が考えられます。
1)商標権や著作権の問題
固有名詞を使用することで、商標や著作権に関わるリスクが発生する可能性があります。
特に、ブランド名や製品名などが含まれる場合、許可を得ていない使用は法的な問題を引き起こすリスクがあるため、それを回避するねらいがあると思われます。
2)特定の企業や製品に対する依存回避
特定の企業や製品を名指しすることで、他の競合製品やサービスに対して不公平な印象を与えるリスクがあります。
クライアントは特定のブランドや企業に偏らず幅広い読者層にアピールしたいと考えるため、固有名詞を避けたいと考えるかもしれません。
3)汎用的なメッセージの強化
特定の固有名詞を使わないことで、汎用的な内容にすることができます。
これによりターゲット層を広げ、より多くの読者に刺さる記事を作成できると考えるクライアントもいます。
4)SEO1や広告掲載への影響
SEO的な理由や広告掲載の観点からも、固有名詞を避ける場合があります。
特定のブランド名や商品名が含まれると、広告掲載が制限される場合や検索エンジンのアルゴリズム2に影響を与える場合があるためです。
※1 SEO:検索エンジンの検索結果ページの上位に自身のサイトが表示されるための施策。
※2 アルゴリズム:やり方、手法。
