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文章を作成する際に「“ください”は漢字で書くべき?それともひらがなで書くべき?」と悩んだ経験はありませんか?

もしかすると「どちらも同じだろう」と、気にしたことがない方もいるかもしれません。

しかし!

この2つの言葉は異なる意味を持つため、知らないと実は失礼な言い回しをしているかも…。

そこで本記事では「下さい」「ください」がどのように違うのか、例文を交えて分かりやすく解説していきます!

「下さい」と「ください」実は意味が違う…?

はじめにお伝えしたように『ください』という言葉は、漢字とひらがなで意味が異なります。

「どちらを使用しても意味は通じるし…」と思う気持ちもとてもよく分かります。
ですが、相手にしっかりと伝わる文章を作成するためには、違いを知っておくことが大切です。

馴染みのある言葉ではありますが、ここで言葉の意味をおさえておきましょう!

『下さい』(漢字)

漢字の「下さい」は、相手に対して何か物を要求したり、行為を促したりする際に使用される動詞です。

例えば【資料を下さい】【見積書を下さい】というように使用すると、相手に提出物を要求することになります。

『ください』(ひらがな)

ひらがなの「ください」は補助動詞にあたり、相手に対して何かを依頼する表現として使われます。

補助動詞とは、もともと動詞である語が本来の意味を失い助動詞的な役割をするものを意味していることから、動詞の後ろに付き、その動詞に意味を添える役割のあるものです。

例えば【ご理解ください。】は、相手に対して理解してもらうようお願いしている、ということになります。

「下さい」と「ください」の使い分け【例文つき】

ここまでお伝えしてきたとおり「下さい」と「ください」は意味が異なります。

意味が異なるということは、場面や状況によって使い分けが必要となることから、本セクションでは使い分けの方法は例文を交えて、解説していきます。

「下さい」を使う場面

漢字の「下さい」は『くれ』という言葉の尊敬語・丁寧語です。

そのため、相手に対して物や行為を求める場面で使用します。
このままだと分かりづらいと思うので…例として、英語に言い換えてイメージしてみましょう。

漢字の「下さい」の場合、英語で表すと『give(与える)』となります。

そのため『give』を使って物を要求する場面を想像していただくと「下さい」の使い方が、より理解しやすいのではないでしょうか。

例)なにか飲み物を下さい:物を要求する場面で使われる

「ください」を使う場面

ひらがなの「ください」は補助動詞で、その言葉自体に意味があるわけではなく、依頼表現を丁寧にしたいときに使います

こちらも英語で言い換えると『please(お願いします)』となり、相手に対してお願いをする場面を想像していただければ分かりやすいかと思います。

例)本日10時までに会場にお越しください:依頼表現を丁寧にしたい場面で使われる

POINT

公用文では、補助動詞として「ください」を使用する際は”ひらがなを使う”というルールがあります。
※公用文:国家や公共団体などが発行する文書や法令などの文章を指す

参考:内閣訓令第一号 公用文における漢字使用等について

ビジネス文書でよくある「下さい・ください」の例文

古くから使用され続けているメールと、ここ数年でビジネスシーンでも使用されることが一般化されたチャットサービス。

本セクションではそんなビジネス文書で使われる頻度が高い「下さい・ください」の使い分けた例文をご紹介していきます!

ビジネスメールで使用する「下さい・ください」の例文

メールはチャットに比べて堅い印象を与えることができるので、長文や重要な連絡に適しています。

「下さい」を使用する際の例文

・現在調査中ですので、今暫くお時間を下さい

・お手数ですが、貴プロジェクトに関する資料を下さい。

・先ほどお電話した案件の見積書を下さい。

POINT

使い方としては間違っていないものの「下さい」と要求すると、少し高圧的にも見られてしまう可能性があるため、後述する言い換え表現も参考にしてください…!

「ください」を使用する際の例文

・ご不明な点などございましたら、お気軽にご連絡ください。

・ご多忙と存じますが、くれぐれもご自愛ください。

・資料を作成いたしましたので、お目通しください。

ビジネスチャットで使用する「下さい・ください」の例文

チャットは、ビジネスメールの代わりに使用している企業・個人が多くなっていますが、先方によってはメールのようにかしこまらず、フランクなやり取りで使用されることも増えています。

また、スピーディーなやり取りが望まれるチャットの場合は、正しい使い分けを身につけ、読みやすい文章の作成を心がけましょう!

「下さい」を使用する際の例文

・いましばらくお時間を下さい。

・前回の会議資料をPDFで下さい。

・後ほどお電話を下さい。

「ください」を使用する際の例文

・資料をお送りしますので、ご確認ください。

・リンク先をご参照ください。

・弊社のツールをご活用ください。

「下さい」と「ください」公用文での表記ルールは?

公用文とは、国や公共団体が作成し、公開している文書や法令などの文章のことを指します。

公的な文書にあたることから、読んだ人の全員が同じように理解してもらう必要があるため、表記の方法に規則が存在しているのです。

  • 常用漢字は原則として漢字で書く
  • 例外として動詞・形容詞などの補助的な用法は平仮名で書く

参考:文化審議会「公用文作成の考え方(建議)」

例外的に平仮名で書かれることが許されている漢字は「ください」以外にも複数存在あるため、一部をご紹介します。

要素漢字✕→ひらがな◎
助詞「位」→「くらい」
「等」→「など」
助動詞「〜の様だ」→「〜のようだ」
補助動詞・補助形容詞「〜して見る」→「〜してみる」
「〜して行く」→「〜していく」
形容名詞「事」→「こと」
「時」→「とき」
「所・処」→「ところ」
接続詞「然し」→「しかし」
「更に」→「さらに」
ひらがなが定着している語句「有難う」→「ありがとう」
当て字「何時」→「いつ」
「流石」→「さすが」
その他「共」→「とも」
「出来る」→「できる」

私たちが普段遣いする文章では「絶対にひらがなで書かなければいけない!」というように厳密な使い分けをする必要はありませんが…笑

ビジネスシーンでは漢字で表記することに対して気にする方もいらっしゃるかもしれないため、知識として蓄えておきましょう!

ちなみに、他の語句の使い分けについても詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。

「下さい」「ください」の言い換え表現

ここまで説明してきたとおり「下さい」と「ください」は異なる意味を持つため、言い換える際にも、それぞれに合った表現をする必要があります。

言い換えができるのは、表現豊かな日本語ならではですね…!

そこで本記事では用途別の言い換え表現をご紹介いたします。

「下さい」の言い換え表現:いただきたい

漢字の「下さい」の場合『もらう』の謙譲語である『いただく』という言葉に言い換えることが可能です。

「ください」を「いただきたい」に変換するだけでは違和感が残る印象もあるため、その場合は『いただけますと・いただきたく思います』と更に変換する必要があります。

・いましばらくお時間を下さい。→いましばらくお時間をいただけますと幸いです。

・PDFで下さい。→PDFでいただきたく思います。

・後ほどお電話を下さい。→後ほどお電話をいただきたいです。

「ください」の言い換え表現:お願いします・いたします

ひらがなの「ください」は依頼表現のため、そのまま『お願いします。』と言い換えることができます。

・リンク先をご参照ください。→リンク先のご参照をお願いします

・ご確認ください。→ご確認のほど、お願いします。

ご活用ください。→ご活用をお願いします

「下さい」と「ください」の表記ルールをもとに正しく使い分けしよう

「下さい・ください」の意味・使い分け方・言い換え表現について、段階を踏んで説明してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

正直、細かいルールを毎回気にするのは、少し疲れてしまいますよね…。

ですが、せっかく相手のことを思い丁寧に作成した文章が、少しの違いで正しく伝わらなければ意味がありません。

そのため、漢字かひらがなのどちらを使用するか迷ってしまったときには、ぜひこちらの記事を参考にして、相手に正しく伝わる文章を作成してください!

それでは最後までお読みくださり、ありがとうございました。

「下さい」と「ください」に関するよくある質問

「下さい・ください」の違いについて解説してきましたが、日本語にはこの他にも、文章作成の際に悩みやすい言葉がたくさん存在しています。

ここではよくある質問として、そのいくつかを解説しておりますので、ぜひ併せてご活用ください。

よくある質問①「いたします」「致します」の使い分けのルールはありますか?

「ください」と同様、“いたします”にも、漢字とひらがなで使い分けのルールが存在します。

まず、ひらがなの「いたします」は、補助動詞で『する』の謙譲語・丁寧語です。

相手に対して敬意を示す言い方となりますので、目上の人に対して使う表現となります。
  

例)ご対応の程、よろしくお願いいたします。



一方、漢字の「致します」は動詞で、原因となる・引き起こすといった意味があります。

例)資料をお送り致します。

もう少し噛み砕いて説明すると、自分の行為に対して使う場合は「致します」で、相手に対して使う場合は「いたします」を使用するということになります。

よくある質問②「いただく」「頂く」の使い分けのルールはありますか?

“いただく”にも、漢字とひらがなで使い分けのルールが存在します。

まず、ひらがなの「いただく」は相手に『なにかをしてもらう』という意味で、補助動詞として用いられます。

例えば【ご利用いただく】【褒めていただく】等には、ひらがなを使用しましょう。

一方、漢字の「頂く」は、もらう・食う・飲むといった動詞の謙譲語です。

ですので、例えば【お土産を頂きました。】【ご飯を頂きましょう。】という場合には、漢字を使用することになります。

よくある質問③「してください」を使用する際の注意点はありますか?

「ください」と同様、ビジネスシーンでもよく目にする言葉ですが、少し冷たい印象を受けたことがある方もいるかもしれません。

実は「してください」は敬語ではあるものの、同時に命令形でもあるのです。

そのため、相手によっては失礼だと捉えられてしまう可能性もないとは言えません。

ですので、柔らかい印象を持たせたい時には、言い換え表現を使用する等の対応をしてみましょう。

例えば、

  • 相手の状況を伺う「してくださいませんか。」という形に言い換える
  • 「恐れ入りますが~」のようなクッション言葉を添える


という風に使用すれば、より丁寧な依頼表現にすることができます。

なお、「してください」も「ください」と同じように

  • 「して下さい」と漢字表記であれば動詞で、物や行為を求める表現
  • 「してください」とひらがな表記であれば補助動詞で、依頼する表現


となりますので、使い分けにも気をつけましょう。

漢字とひらがなで意味が違ったり、様々な言い換え表現がある日本語。
少しの違いで、こちらの意図とは別の意味に捉えられかねません。
そうならないためにも言葉を正しく理解し、より相手に伝わる文章を作成していきましょう!

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すてきな言葉に心動かされる瞬間が好きです。ライターとして、読者のみなさまが読んでいて心地の良い文書を作成するために日々奮闘中!
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